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数学の基本ー1

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「このの公式は二次方程式の解を求める公式です。必ず覚えましょう。」
ありきたりな授業風景である。クラスの半分の人間が夢の国に行ってしまっている。俺、中島薫は眠い目を擦りながら窓の外を眺めていた。
「数学なんて何の役に立つんだよ。」
そんなぼやきが口をついて出る。実際数学のありがたさを感じたことなんてこれっぽちもない。それどころか数学なんて教科があるせいで補修授業を受けさせられる。
「数学なんて無くなってしまえよ。みんなそう思ってるだろ。数学のない国にでも転生できないかな。」
流行りの転生物だろうか?自分で言って、その厨二病度合いにゾクゾクっとした。
「中島君、聞いてますか。そんなんだと次のテストもまた補修になりますよ。」
教師のうるさい声が耳を刺す。
(わかってるよ。お前がそんなんだから授業受ける気なくなるんだろ。)
そんなことは言えない俺は適当に返事をしてまた窓の外を眺め始めた。

家に帰る。
「数学が必要なやつなんてこの世にいるのかよ。」
電車に乗ってたチャラチャラした大学生だって、駅で電話していた会社員だって、母親だって、父親だって数学なんか使ってるやつは一人もいない。
「ああもう誰が数学なんて作ったんだよ。」
俺の記憶はそこで途絶えた。



真っ白い世界で俺は目を覚ました。
「どこだここは…?」
(まさか本当に転生?いやいやまさかそんなことは…)
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