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森の中を走る。
心臓がドクドクと胸を打っていてもかまわない。
枝が自分の腕を叩いても構わずリリスは走る。
鬱蒼とした森は、自国にあった森に似ていた。
祖国に帰ってしまいたい衝動と、それをすれば愛する家族はどうなるのだろうと考えながらリリスは
ひたすら走った。
湿気が濃くなってきた。
多分、水が近くにある。
そういえば、到着早々森に入ったので、汗を流していなかった。
そう思って水があると思われる方へ走った。
ガサガサと音を立てながら開けた場所に出た。
そこは湖になっていた。
静謐を思わせる湖畔はリリスの心を落ち着かせた。
湖の水に反射する日差しが幻想的だった。
木々の隙間から木漏れ日が落ち、湖を照らしていた。
少しの時間佇んでいると
チチチ…と音がした。
湖のすぐそばの木の枝にリスらしき小動物がみえた。
重みで枝がしなり、その枝からリスは湖の中を覗き込んでいた。
「危ない!」
そうリリスが声を上げたことによって、リスが慌てて、葉の陰に隠れてしまった。
常ならしないことを自分がしてしまっている。
思ったより自分は動揺しているのだなとリリスは感じた。
でも、警戒心が少なくない小動物が寄ってくるということは危険が少ない場所なのかもしれない。
リリスはここを自分のお気に入りの場所にしようと思った。
祖国は深い森と農地しかない国だった。
その中でも、命に感謝し、恵みに感謝し、細々と生きてきた。
突如、ワスラーン帝国の使者がやってきて、同盟を組まないか打診してきた。
力加減は調べるまでもない、小国であるイスマルは事実上属国になるしかなかった。
どうして体裁として同盟という体裁を整えているのかわからないが、それでも無駄な血を流すくらいなら
組んだ方がいいという国王の判断だった。
国民全体がどうかは分からないが、概ねそれは受け入れられた。
それは、リリスが愛する家族と離れ離れになることと同義だった。
祖国を去る前に王である父に言われたことは
「すまない…帝国の使者はお前を指名してきた…」
沈痛な面持ちで話す父がやけに小さく見えた。
「そうですか…きっと私が健康体だからでしょうか…」
姉は体が弱く、弟は幼い。
イスマルは男女ともに公平に王位継承権をもつ。
それで一番近い私を外に出すことで国として体裁を保たせつつ弱体させる気なのか…
黙り込む娘をそっと見ていた国王は一つ息を吐いた。
「しかし、こんな回りくどいことをしなくても侵攻すれば早かった」
そんな父にリリスは曖昧に笑った。
心臓がドクドクと胸を打っていてもかまわない。
枝が自分の腕を叩いても構わずリリスは走る。
鬱蒼とした森は、自国にあった森に似ていた。
祖国に帰ってしまいたい衝動と、それをすれば愛する家族はどうなるのだろうと考えながらリリスは
ひたすら走った。
湿気が濃くなってきた。
多分、水が近くにある。
そういえば、到着早々森に入ったので、汗を流していなかった。
そう思って水があると思われる方へ走った。
ガサガサと音を立てながら開けた場所に出た。
そこは湖になっていた。
静謐を思わせる湖畔はリリスの心を落ち着かせた。
湖の水に反射する日差しが幻想的だった。
木々の隙間から木漏れ日が落ち、湖を照らしていた。
少しの時間佇んでいると
チチチ…と音がした。
湖のすぐそばの木の枝にリスらしき小動物がみえた。
重みで枝がしなり、その枝からリスは湖の中を覗き込んでいた。
「危ない!」
そうリリスが声を上げたことによって、リスが慌てて、葉の陰に隠れてしまった。
常ならしないことを自分がしてしまっている。
思ったより自分は動揺しているのだなとリリスは感じた。
でも、警戒心が少なくない小動物が寄ってくるということは危険が少ない場所なのかもしれない。
リリスはここを自分のお気に入りの場所にしようと思った。
祖国は深い森と農地しかない国だった。
その中でも、命に感謝し、恵みに感謝し、細々と生きてきた。
突如、ワスラーン帝国の使者がやってきて、同盟を組まないか打診してきた。
力加減は調べるまでもない、小国であるイスマルは事実上属国になるしかなかった。
どうして体裁として同盟という体裁を整えているのかわからないが、それでも無駄な血を流すくらいなら
組んだ方がいいという国王の判断だった。
国民全体がどうかは分からないが、概ねそれは受け入れられた。
それは、リリスが愛する家族と離れ離れになることと同義だった。
祖国を去る前に王である父に言われたことは
「すまない…帝国の使者はお前を指名してきた…」
沈痛な面持ちで話す父がやけに小さく見えた。
「そうですか…きっと私が健康体だからでしょうか…」
姉は体が弱く、弟は幼い。
イスマルは男女ともに公平に王位継承権をもつ。
それで一番近い私を外に出すことで国として体裁を保たせつつ弱体させる気なのか…
黙り込む娘をそっと見ていた国王は一つ息を吐いた。
「しかし、こんな回りくどいことをしなくても侵攻すれば早かった」
そんな父にリリスは曖昧に笑った。
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