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しおりを挟む「考えても仕方ないこと。私はここで人質として静かに暮らすだけだ」
祖国への想いを捨てることはできないがせめて隠すことはできるだろうか…
リリスは自分が人質であると正しく理解していた。
三人の子供の中でも、一番王にふさわしい人物になるであろうといわれてきていた。
狩りも勉強も人一倍頑張ってきた。それほど祖国を愛していた。
だから蹂躙されるくらいなら、自分の身一つで事足りるのであれば喜んで差し出そうと思った。
残念ながら、自分が培ってきたものは最早無用のものになってしまった。
この場所にきて思ったのは、帝国側からしたら必要のない人物と思われていることだけだった。
いくら祖国を同じような環境…といえども普通の女性では生活していくのに困難だったからだ。
「かえってとりあえず何があるか確認してからにしよう」
自分が今や人質としての価値しかないならそれに見合った生き方をしてやろうとリリスは考えた。
イスマルの人間は、元は狩猟民族である。
自分の中での戦いが始まったとリリスは少し好戦的になった。
ほどなくして、屋敷に戻ったら人影あった。
多分侍女は来ないだろうと思っていたのだが、二人分の人影がそこあった。
「リリス様でいらっしゃいますか?」
低く落ち着いた声
女性にしては長身の人物が声をかけてきた。
「そうですが、そういうあなたはどなたですか?名も名乗らずに無礼ではありませんか?」
「ああ!こら!!セス!無礼でしょ
大変申し訳ありません。本日付けでリリス様付きになりました、私ヘイリーと申します。そしてこちらの無礼者が…」
こちらは女性の特徴がそのままの人物だった。
平均的な身長、高めの声。
「…セスと申します。無礼な態度をとって申し訳ありません。罰があるなら受け入れます」
「いいえ、罰はありません。そうですか…本日付でということですが、私の見張りにですか?」
セスとヘイリーは一瞬だけ顔を歪ませた。
「いえいえ!見張とは?私共はリリス様の侍女として…」
しかしリリスはその動揺を見逃さなかった。
「隠さなくてもいいですよ。おおよそ侍女としての身のこなしではありません。私も人相手に戦ったことはありませんが狩人の端くれです。身のこなしとあと…」
リリスは言いよどんだ。いってもいいのかわからなかった。
ここは自分の安全な場所ではないし、武器はない。
「…あと?」
セスといった長身のほうがあとを促すように言ってきた。
ここで自分は終わるかもしれないが、こんな見張がつくくらいなら、いつの時期かわからないが用がなくなれば
いつでも殺されるだろう。
それも仕方なしと促された先を言った。
「血の匂いがする」
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