1 / 1
江戸・Oh!掃除(落語風)
しおりを挟むえー?ちっとめぇに、もう秋でぃって話したばっかなのに、もう冬でぃ。
はえーなぁ。“光陰矢の如し”か?行きなり寒くなっちまったなぁ。
しもやけがかい~、なんてガキは今時いねぇだろうが、おいらのガキん頃はこの時期になると、しもやけやら、鼻水やらに悩まされたもんだ。
それでも、“子供は風の子”なんて言ってな、どんなに寒かろが、鼻水を拭いた袖をテカテカにして、ついでに、まっかっかのしもやけをカキカキしながら、元気いっぺぇに外で遊んだもんだが。
今時のガキはどうでぃ。えー?冷暖房完備のポカポカお部屋でゲームにいそしみ、外には一歩も出ねぇでぬくぬく状態だ。おまけに、電気毛布だの、電気カーペットだので至れり尽くせりだ。
だが、その分、風邪も引きやすくなるわけだ。つまり、過保護ってぇのは人間に限らず、冷暖房もしかりってぇこった。
なー?寒かったら重ね着すりゃいい。暑かったら脱ぎゃいいのよ。冷暖房に頼り過ぎてっと、ひ弱になっちまうぜ。
教訓でぃ、覚えときな。
【冷暖房、なければないで工夫しよう!】
どうでぃ、いい文句だろ?“創意工夫”ってぇ奴だ。
何ぃ?工夫すんのは面倒だ?ッ。めんどくさがってっと、ひ弱のうえに光熱費が嵩むぜ。
なんだ?貧乏じゃねぇから、そのぐれぇ払えるって?
ったく、かわいくねぇな。払ってんのはおめぇじゃねぇ。親だろが。
えー?なんだって?電気代ケチって、それが原因で風邪引いたら、親が悲しむじゃねぇかって?
……ああ、そうかいそうかい、分かったよ。おめぇさんの言うとおりだ。余計なお節介焼いて、すまなかったよ。
アッ!しまった。今回のテーマは【大掃除】じゃねぇか。【風邪】と間違っちまったぜ。まじぃまじぃ。掃除に縁がねぇもんだから、うっかりしちまった。
ペラペラしゃべって損したぜ。ったく。ってか、制限時間が迫ってら。本題のほうが短くなっちまったぜ。やべぇやべぇ。
えー、大掃除ってぇのは、江戸時代にもあったわけでして。
〈煤払い〉は、十二月十三日と決まってましてね。江戸城から長屋まで一斉にだ。
一般家庭での煤払いは、朝七ツ時(午前4時ごろ)に息子夫婦が起き出しましてね、夜が明けるやいなや煤払いに取り掛かったわけですな。
嫁いだ娘が手伝いにやってきて家族総出で大掃除だ。日暮れめぇには終えて煤払い祝儀として、一汁三菜を家族みんなで食べるわけですが。
一日だけでは終わらず掃除は何日か続き、手伝いにやってきた仕事仲間には蕎麦切りや酒を出すわけだ。
一般家庭でも家族が集まり掃除をして、その後に飲み食いするという暮れの楽しい一幕だったようですな。
じゃ、一人もんはどうしたかってぇと、お察しのとおり、自分でやるわけだが、“隅のちり取り、団扇ですます”ってぇ具合だ。だが、恋人がいる奴ぁ、彼女に頼むわけだ。
長屋住まいの伊吉は一人もんだ。
「な、およねちゃん。そろそろ年の瀬だろ?……掃除、頼めねぇかなぁ」
「ええ、いいわよ、やったげる。その代わり、ご褒美頂戴ね」
「えっ!褒美?」
大して給料も貰ってねぇ、大工見習いの伊吉は困っちまった。
「野暮だね、……もう」
およねが色っぽい目で見やがった。
「……ああ、そっちのご褒美ね」
およねの言うご褒美が何か分かった伊吉は、金のかからねぇもんだったんで、ホッと一安心でぃ。
ところが、仕事から帰った伊吉はびっくらこいた。部屋がちっとも片付いてねぇ。頭にきた伊吉はおよねんちに文句言いに行った。
「なんだよ、ちっとも綺麗になってねぇじゃねぇか」
「あら、ちゃんと綺麗にしといたわよ、布団」
「……くうう」
ま、必要なもんしか綺麗にしなかったってぇ、小話なんですがね。大人の話だから、いまいちピンと来なかったか?
えー?子供でもそのぐれぇ分かるってか?だぁな。おいらより大人かもしんねぇな。“恐れ入谷の鬼子母神”でぃ。
えっ?落語風なら、最後にオチがあるだろって?だよな……。ッ、考えてなかった。どうすっか。……アッ!そうだ。こりゃ、どうだ?
オチは言わねぇでも、テーマが【掃除】だけに、ヨゴレと一緒に落ちてるよ。
えー?まあまあってか?ふう~……。そろそろ、幕も落ちるぜ。
※語り:秋風亭流暢(架空の落語家)
■
■ ■
■ ■ ■
■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
____幕____
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる