ボクんちの先生。もとい、先生んちのボク。

紫 李鳥

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 あれは、雨の日でした。

 お母ちゃんが、落ちてた肉団子を、〈ねずみコロリ〉入りの毒団子だと知らず食べて死んじゃって、ボクはどうしていいか分からず、雨の街をさまよっていました。

 溢れ出るボクの涙は雨に流されていました。

 どのぐらい歩いたでしょうか。気がつくと、明かりが漏れる家の縁側の下で雨宿りしていました。――




「ったくよ。なんで、クレオパトラは、もうちっと鼻が低くなかったんでぇ。したら、歴史は変わってたかも知んねぇのによ」

 って、女の人の、愚痴っぽい独り言が聞こえたんです。

 それが、オカメさんでした。

 なんだか知らないけど、この人は、お母ちゃんを殺した人とは違って、優しい人だと直感しました。

「したら、その分、私の鼻がもうちっと高くなってたかも。なーんちゃって」

 独り言は続いていました。

 ボクは勇気を振り絞って、姿を見せることにしました。

 驚いて、悲鳴を上げるかも知れないけど、それでも、この人と一緒にいたいって思ったんです。

 ボクは縁側の障子を鼻先で少し開けて、部屋を覗いてみました。

 ボサボサ頭の、少し鼻の低いチャーミングなオカメさんが、タバコの煙を鼻の穴から出して、何やら書いていました。

 いつ、声をかけたらいいか、タイミングが分からずモタモタしていたボクは、思わず、

「チュー」

 って、口走ってしまったんです。

 キャー!って、騒がれるかと思ったら、オカメさんはボクを見て、

「……かぅぇー!(可愛い)Come on.」

 って言って、人差し指を前後に曲げて、おいで、のジェスチャーをしたんです。

 ボクは嬉しくて、すぐにでも駆け寄りたかったけど、あんまりでしゃばって嫌われたくなかったので、高ぶる気持ちを抑えて、抜き足差し足で近寄りました。そしたら、

「遠慮すんなって。腹減ってるだろ?なんか持ってきてやるよ」

 オカメさんはそう言って、台所に行ったんです。




 オカメさんは、チーズとバスタオルを持ってきて、

「タオルを敷いてやっから、チーズを食べたら、ここで寝な」

 そう言って、バスタオルの上にチーズを置いてくれたんです。

「チュー!がぶっ」

 ボクは嬉しくて、チーズにかぶりつきながら泣きました。

「うめぇか?」

 そう言って、ボクを見るオカメさんの目は、お母ちゃんの目みたいに優しかった。

「チュー!」

 ボクは涙が溢れました。

「よかったら、うちで暮らしな。なーに、ひとりもんだ。なんも遠慮はいらねぇよ」

 オカメさんはそう言って、また、机に向かいました。

「……チュ……」

 ボクは溢れ出る嬉し涙をバスタオルで拭いながら、クリーミーチーズをご馳走になりました。

 とてもクリーミーでした。




 その時のバスタオルが、ボクのベッドになってるってわけです。

 ちなみに、これも猫の絵柄です。




 ボクは1つ決めてることがあります。

 それは、絶対に赤ちゃんを産まないってことです。

 子沢山家系のDNAを受け継ぐ身の上。先生ん家のエンゲル係数を高くさせるわけにはいきません。

 え?赤ちゃんを産むって、お前、オスだろって?

 先入観は捨ててくださいって、冒頭でも言ったじゃないですか。

 ボク、女の子でちゅ。エヘヘ。




「ったくよ。歴史は夜作られるってぇが、夜、書こうが、昼、書こうが、チッとも変化ねぇじゃねぇか。私の歴史は、一生独身か?……トホホ」

 ボクも付き合います、一生独身に。




 おしまい(姉妹)でチュ!
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