鳩の縛め〜森の中から家に帰れという課題を与えられて彷徨っていたけど、可愛い男の子を拾ったのでおねしょたハッピーライフを送りたい~

ベンゼン環P

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第二章 雛

第二十六話 乗換 26 2-13-5/5 80

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 ユミはソラとギンの一連のやり取りを隠れて見ていた。
 ギンがソラに不埒を働かないか監視するためだ。
 
 ソラは自身の母親について勘づいていたらしい。
 アイにも気の毒な面があるのかもしれないが、ソラが拒絶を見せた時には安堵を覚えてしまった。

 しかし流れるようにギンがソラに触れた際には、何をやっているんだと飛び出して行きそうになった。
 それでも恍惚な表情を浮かべる彼女を見て冷静になる。ギンがソラに向ける下心が使のではないか、そう思った。
 
 キリに会うためにはギンからも承諾を得る必要がある。
 それを妨げるものはギンのユミへの未練だった。ソラという新たな拠り所を見つけた今、ギンはキリに会いに言って来ればと言い出しかねない。
 とは言え、現時点ではソラを生贄に捧げるような気分だ。ギンの言葉など到底受け入れられるものではない。

 トキは七班の縛めという言葉を使った。
 対して今ユミに渦巻いているのは、彼女自身の意地に由来する縛めだ。

 この世界は森と鳩の縛めに行動を制限されているが、時に人は不合理な考えによって自らの行動を妨げる。
 ユミの場合、その根源はキリと交わした2つの約束にある。
 
 立派な鳩になり、素敵な鴦になる。

 立派な鳩になること。
 それは仲間とともに支え合えるようになることだ。雛を通してそんな結論を導き出した。
 1人で身勝手な行動の多かったユミにとって、その答えに辿り着いただけ大きな進歩と言えるのだが、まだ足りない。
 助け合う相手を選んでしまう。今後多くの鳩とともに務めを果たすことになるにも関わらず、身近なギンですら受け入れられないのだ。

 そして素敵な鴦になること。
 少なくとも大人になるまで鴦など名乗るべきではなかったのだろう。
 また他の鴛鴦達の契りを素直に祝福できない様では、素敵な鴦だとは言い難い。

 ギンを信頼し、ソラを安心して任せられるようになった暁には、キリに会いに行くことも許されるのではないだろうか。
「待っててね、キリ。私頑張るから……」
 新たな決意を胸にそう呟いた。

 母の文を読み上げるソラの声が聞こえてくる。
 
「空へ。元気ですか。お母さんは元気です。
 山先生が言っていた通り、トミサの医術院に通うことが出来ています。
 
 ごめんね空。弓と比べるようなことをしてたかもしれないね。
 あの日、空が駆け出して行った時は驚いちゃったけど、ちゃんと戻って来てくれた時は安心しました。

 どんな雲にも銀の裏地がついている。
 これはトミサで知った言葉です。
 
 どんなに雲が暗くても、その上の空からは銀色の光が照らされている。
 悲しいことがあっても、必ず希望はあるのだという意味だそうです。
 空のことを信じて良かった。
 
 空が大人になっていく姿も見たかったけど、何かあったら文で伝えてね。
 これからも弓が空とお母さんを繋いでくれます。
 
 ウラヤを発つ朝、空がお母さんと呼んでくれてお母さんうれしかった。
 
 でもね、空。空は自分の幸せを見つけてね。
 いつか大空へ羽ばたけますように。
 
 愛しています。お母さんより」


――――
鳩の縛め 第二章 雛 完
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