鳩の縛め〜森の中から家に帰れという課題を与えられて彷徨っていたけど、可愛い男の子を拾ったのでおねしょたハッピーライフを送りたい~

ベンゼン環P

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第四章 巣立ち

第四十四話 能力 44 4-5-4/4 138

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「前置きが長くなってごめんね、ヤミさん。実はさっき、もうキリに会ってきたの」
「そうなの!?」
「でも、やっぱりアイの存在がキリを縛り付けてる。アイは私を監禁しようとしたことがあったけど、あれって本当は私に父親であるケンの影を見出してたから、のはず。そしてアイはソラの母親でもあるの。アイが私をソラって呼んでたのはそのせい」
「え、えっと……」
 情報量の多さにヤミは混乱しているようだ。

「結論として、アイはケンのことを求めてる。だからケンをアイの元へ連れて行けばキリも開放されると思ってるの」
「……真偽はともかくとして、言いたいことは分かったわ」
 自らを落ち着ける様にヤミは茶をすすった。釣られてユミらも湯のみへ手を伸ばす。
 茶はすっかり冷めていた。ユミは一気に飲み干す。
 興奮のあまり気づいていたなかったが、相当喉が渇いていたようだ。

「これから私はサイとナガレに行くつもり。ケンを連れ出すためにね」
「えっと……。色々大丈夫かしら? 鳩の縛めのこともそうだけど、ミズの件ではアサ達を騙したことになるのよね?」
「うん、だから事前にヤミさんのお話を聞いてアサとケンの人となりを確かめたいと思ってた。だけど、ケンが私をソラだと思ってるなら話は早いね」
 ケンはソラを愛している。ならばきっと悪いようにしないはずだ、という確信を得ることが出来た。

「そう……、腹は決まってるのね。あのユミだもの。私が引き止めることも出来ないんだろうね……」
 ヤミは語尾に余韻を残しつつ、庭を見やる。そこには四つん這いになったクイに跨るハリの姿があった。一体どういう経緯でそうなったか、室内の一同には皆目見当もつかない。
 
 突然、思い立ったようにヤミがユミに向かって顔をぐいと近づける。
「ねえユミ。クイのこともナガレに連れて行ってあげてくれない?」
「え? なんで?」
 咄嗟の提案はユミに緊張を走らせる。
 
「えっとね。やっぱり女の子達だけでナガレに行くのは危険よ。せっかくクイがこの場にいるんだから頼ったらいいのよ?」
「い、要らないよ! サイの方がクイよりよっぽど戦力になるし!」
 確かにヤミの提案はありがたい。戦闘力においてクイは足手まといにしかならないだろうが、舌戦においては頼りになるはずだ。
 ナガレに行く目的はケンを連れ出すことだ。アサがそれを良しとするかどうかが課題となる。
 その論争の場にクイが居れば心強いことは間違いない。
 一方で、やはり先日のクイの発言が気がかりだ。忘れてやるとは言ったが忘れられる訳が無い。
 クイにとってナガレは自由な世界を作るための足がかりなのだ。
 ナガレという不法地帯を利用することによる代償は想像に難くない。ここでヤミの善意を鵜呑みにする訳にはいかないのだ。
「あらそう。まあユミがいいならいいわ」
 ユミの懸念に反して、ヤミはあっさりと引き下がる。

「おかーさーん! のどかわいたー!」
 とてとてという音とともに、ハリの声が近づいてくる。
「あらハリ。いっぱい遊んで疲れちゃったかしら。お茶淹れてくるからちょっと待ってて。ユミ達のも新しく注いで来るわね」
 ヤミは立ち上がり、盆を取るとちゃぶ台に置かれた湯のみと鉢を回収した。

 ――――
 
「お父さん、私が会いに言ったら喜んでくれるかな?」
 ソラは何の気なしに放った言葉だったのだろうが、ユミとサイはぎょっとして彼女の方を見る。
「えっと……。ソラ? もしかしてナガレに行くつもり?」
「当たり前でしょ! お父さんは私を愛してくれてるんだから、私が行ったらきっと話を聞いてくれるよ!」
 いつに無く強い口調だ。
「それにアイさんにも一言ひとことってやらないと。キリくんいじめるのやめてって!」
「どうしたのソラ? この前はアイが怖いって言ってよね?」
 ソラはその場に立ち上がる。

「確かにあの時は怖いと思った。でももう、キリくんのこと考えたら黙ってられない!」
「ねえ、話聞いてたソラ? ケンは私のことをソラと思ってるからそれで十分なんだよ。それよりナガレはソラみたいな可愛い子が行っちゃダメなところなの。……サイでさえ何されるか分からないんだよ?」
「こら」
 ユミの頭に手刀が下ろされた。

「まあまあ、頼もしいわね、ソラ」
 盆を抱えたヤミが戻ってくる。今度は6つの湯のみが乗っている。湯気は立っていないようだ。
「はいハリ」
「ありがとう!」
 ハリは茶を受け取ると、おずおずと湯のみの縁へ口元を近づけた。

「はいソラ。気持ちは分かるけど落ち着かないとダメよ?」
 ソラは差し出されたそれを乱暴にぶん取った。
 そして礼も言わず、腰に手を当てぐぐっと飲み干す。
 が、熱かったのかすぐに舌を出して顔をしかめた。

 対するユミとサイは、受け取った茶をゆっくりとすする。意外なほど熱くは無いようだ。
「飲んじゃダメ……」
 ソラの声が聞こえると同時に、彼女は足元から崩れ落ちていく。
 ユミは口の中にほのかな甘さを感じていた。
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