『#今日の可愛いは、私のもの』― 理想の“かわいい”を脱ぎ捨てて、あなたに恋をした ―

だって、これも愛なの。

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❁ 第7話②『誰のものでもない“かわいいわたし”の揺らぎ』

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投稿を開いては、閉じて。
また、開いて――
それを何度繰り返しただろう。

 

(こんな自分、知られたくない)
(でも、隠してるのも嘘みたい)

 

鏡の前で笑っていたわたしは、
SNSの中で「かわいい」「女神」「あこがれ」と言われて、
たくさんの“光”をもらってきた。

 

いいね、の数。
コメントの言葉。
スクショして保存したメッセージの数々。

 

(……救われてたんだよ)

 

誰かの一言で、
ひとりきりの夜がちょっとだけ明るくなった。

 

(でもそれって、全部、“完璧なわたし”だからだよね)

 

髪がサラサラで、
肌が綺麗で、
加工されたフィルターの中のわたし。

 

――そんな自分を好きになってくれた人たちを、
もしわたしが“誰かひとりを選ぶ”ことで傷つけてしまうなら。

それって裏切りなんじゃないかって。
ちょっとだけ、思ってしまうのだ。

 

(ほんとうに好きなの? わたし……)

 

スマホの画面に、蓮くんのアカウントを開く。
久しぶりに投稿されていた。

旅先で撮ったのか、静かな湖の写真。
空の色と、水面がまるで鏡みたいに溶け合っている。

 

“ただ、静かで、きれいなものを見たくなった。”

 

そんな、ぽつりと添えられた言葉。

 

(……あ)

 

ひまりの胸の奥で、
なにかがやわらかく音を立てて、ほどけた。

 

彼のまなざしが映し出す世界に、
もっと触れていたいと思った。

 

彼の言葉を、もっと知りたいと思った。

 

彼の隣に立つ“わたし”を、
見てみたいと思った――。

 

(……すき)

 

その一言が、まるで水の底から浮かび上がるみたいに、
心の中にぽつんと灯った。

 

気づいてしまったその瞬間、
スマホの画面が少しだけにじんで見えたのは、
どうしてだったんだろう。



つづく
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