「理想の明日は、君とともに」――お伽話風に綴る、静かな恋と理想の明日

だって、これも愛なの。

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2-4 沈黙は何よりも雄弁で

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 夜の帳が降りると、リラはいつものように店先にランプを掲げた。
 小さな炎が揺れて、暗い通りにやわらかな輪を描く。

 エリアスは隣に立ち、その灯りを見つめていた。
 「……やっぱり、この光が好きだ」
 呟く声は、どこか安堵に満ちていた。

 「変わらない光ですよ」
 リラがそう答えると、エリアスは首を横に振った。
 「いや、違う。君と一緒に見るからこそ、変わって見えるんだ」

 リラの胸が温かく震えた。
 言葉を返そうとしたが、喉の奥で声がほどけてしまう。

 風がひとすじ吹き、炎が揺らぐ。
 リラが両手で覆おうとすると、エリアスも自然に反対側から手を添えた。
 指先が触れ合い、ふたりの影がひとつに重なる。

 「……リラ」
 彼の低い声に、リラは顔を上げる。
 灯火に映る瞳が、自分をまっすぐに見ていた。

 「ここにいると、もう旅立ちを急がなくてもいいと思える」
 その言葉に、リラの目がわずかに潤む。
 「私も……あなたがいてくれると、変わらない日々がいっそう愛しくなるんです」

 ふたりの言葉は夜に溶け、炎に溶け、静かに重なっていった。
 はっきりと恋だとはまだ言わない。
 けれど、その沈黙は何よりも雄弁で、確かな想いを灯していた。



 炎を覆っていた手をそっと離すと、ふたりの間にまた静けさが落ちた。
 しかしその沈黙は重さではなく、やわらかな余白となって広がっていく。

 リラは胸の奥で、自分の鼓動が少し早いことに気づいた。
 けれど、不思議と落ち着いてもいた。
 隣にいる青年の気配が、風よりも確かにそこにあるから。

 エリアスは言葉を探すように唇を開きかけ、そして閉じた。
 彼もまた、沈黙を選んだのだろう。
 その沈黙がふたりを隔てるのではなく、ひとつの温もりで包んでいた。

 小さな羽虫が光に惹かれて舞い、炎の周りをかすかに揺らす。
 リラはその軌跡を追いながら、ふと心の中で思う。
 ──言葉にしなくても伝わる瞬間がある。
 それは、旅のどんな景色よりも、日常のどんな繰り返しよりも、確かなものかもしれない。

 「……きれいですね」
 ようやくリラが絞り出した言葉は、灯火でも星でもなく、目の前にいる彼へと向けられていた。

 エリアスは短くうなずき、静かに笑んだ。
 その笑みを見た瞬間、リラはもう言葉はいらないと感じた。
 夜は深まり、沈黙の中でふたりの想いは静かに寄り添い続けていた。
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