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第2部
続編:エドガーの迷い
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午後の学術院庭園。
柔らかな日差しの下、クラリッサはベンチに腰かけ、手の上に小鳥を留まらせていた。
「まあ……かわいらしいですわね」
小さな声に笑みをこぼす彼女。その横顔を見つめるエドガーの胸がじんわり熱を帯びる。
(……どうして、こんなにも愛らしいのだろう)
偶然を装って迫ってきていた頃から可愛いと思っていた。
だが、今は違う。
ただ隣にいるだけで、どうしようもなく愛しい。
その時、近くで談笑していた令嬢たちの声が耳に入った。
「女の子にとって……“愛している”って言葉はやっぱり特別よね」
「そうそう。だって一生の宝物になるもの」
エドガーの心臓が、不意に強く跳ねた。
(……言葉、か)
彼は眉を寄せた。
自分はクラリッサに告げた。“好きだ”と。
けれど、それだけで足りていたのだろうか?
男は、愛する者をリードするもの。
楽しませ、安心させ、そして――大切にすることを証明するもの。
無意識に刻まれたその信念が、今さら胸の奥でざわめき出す。
(俺は……彼女をちゃんと、幸せにできているのだろうか)
視線を向けると、クラリッサは小鳥にそっと指先を差し出し、幸せそうに笑っていた。
「エドガー様」
「……何だ」
「こうして、ご一緒にいられるだけで……わたくし、本当に幸せですの」
にっこり笑うその顔には、不安の欠片もない。
それなのに――エドガーの胸のざわめきは消えなかった。
(……俺はまだ、彼女に足りていないのではないか)
愛しいからこそ、考えてしまう。
彼女の笑顔を守るためなら、もっと与えなければならないのではないか。
もっと、ちゃんと愛を形にしなければならないのではないか。
彼はそっとクラリッサの手を握った。
「……クラリッサ」
「はい?」
「……いや、今はまだ言えない」
「まあ?」
不思議そうに小首を傾げる彼女を見て、エドガーは苦笑する。
(彼女はこれで十分幸せそうだ。だが、俺は……まだ足りないと思ってしまう)
その思いは、彼の胸の奥で静かに芽吹き、これからのふたりの関係をより深くしていく予感となって残った。
柔らかな日差しの下、クラリッサはベンチに腰かけ、手の上に小鳥を留まらせていた。
「まあ……かわいらしいですわね」
小さな声に笑みをこぼす彼女。その横顔を見つめるエドガーの胸がじんわり熱を帯びる。
(……どうして、こんなにも愛らしいのだろう)
偶然を装って迫ってきていた頃から可愛いと思っていた。
だが、今は違う。
ただ隣にいるだけで、どうしようもなく愛しい。
その時、近くで談笑していた令嬢たちの声が耳に入った。
「女の子にとって……“愛している”って言葉はやっぱり特別よね」
「そうそう。だって一生の宝物になるもの」
エドガーの心臓が、不意に強く跳ねた。
(……言葉、か)
彼は眉を寄せた。
自分はクラリッサに告げた。“好きだ”と。
けれど、それだけで足りていたのだろうか?
男は、愛する者をリードするもの。
楽しませ、安心させ、そして――大切にすることを証明するもの。
無意識に刻まれたその信念が、今さら胸の奥でざわめき出す。
(俺は……彼女をちゃんと、幸せにできているのだろうか)
視線を向けると、クラリッサは小鳥にそっと指先を差し出し、幸せそうに笑っていた。
「エドガー様」
「……何だ」
「こうして、ご一緒にいられるだけで……わたくし、本当に幸せですの」
にっこり笑うその顔には、不安の欠片もない。
それなのに――エドガーの胸のざわめきは消えなかった。
(……俺はまだ、彼女に足りていないのではないか)
愛しいからこそ、考えてしまう。
彼女の笑顔を守るためなら、もっと与えなければならないのではないか。
もっと、ちゃんと愛を形にしなければならないのではないか。
彼はそっとクラリッサの手を握った。
「……クラリッサ」
「はい?」
「……いや、今はまだ言えない」
「まあ?」
不思議そうに小首を傾げる彼女を見て、エドガーは苦笑する。
(彼女はこれで十分幸せそうだ。だが、俺は……まだ足りないと思ってしまう)
その思いは、彼の胸の奥で静かに芽吹き、これからのふたりの関係をより深くしていく予感となって残った。
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