1 / 10
第1話 再会と約束
しおりを挟む
クラリッサは、大きな鏡の前でドレスの裾をつまみ上げた。
淡いクリーム色に薔薇の刺繍が散らされたドレス。胸元には、母から譲られた真珠のネックレス。
(……これなら、少しは大人っぽく見えるかしら)
今夜は年に一度の「薔薇の夜会」。
王都中の令嬢と騎士、貴族たちが集う社交の場。
クラリッサにとっては初めての舞踏会だった。
「……クラリッサ?」
低く落ち着いた声が背後から聞こえた。
振り返れば、そこに立っていたのは幼馴染のユリウス。
漆黒の礼服に身を包み、背はすらりと高い。
幼い頃は一緒に木登りをしてくれたお兄さんのような存在。
けれど今は──どこか遠く、大人びて見える。
「ユリウス!」
思わず駆け寄ったクラリッサに、彼は少しだけ目を細めて微笑んだ。
「久しぶりだな。……ずいぶん、背も伸びたじゃないか」
「わたし、もう子どもじゃないのよ?」
クラリッサは胸を張り、ネックレスを指でそっと押さえた。
「今夜は舞踏会。大人の女性として、ちゃんと見てちょうだい」
ユリウスは少し困ったように眉を下げ、視線を逸らした。
「……子どもの頃から変わらないな。
無理に背伸びしなくても、クラリッサはクラリッサのままでいい」
その言葉に、クラリッサの胸がちくりと痛む。
(やっぱり、まだ“妹”にしか見えてないのね……)
それでも、笑顔を崩さず言い切った。
「いいえ。今夜のわたしは“妹”じゃなくて──令嬢ですわ。
約束して。舞踏会で一番に、わたしを見てくれるって」
ユリウスの瞳がわずかに揺れる。
やがて小さく息を吐き、微笑んだ。
「……約束しよう。君が一番に輝いていたら、俺の目は必ず君を追っている」
クラリッサの心臓は、高鳴りを隠せなかった。
(絶対に……大人の女性として見せてみせる!)
薔薇の香りが漂う夜会の幕は、静かに上がろうとしていた。
淡いクリーム色に薔薇の刺繍が散らされたドレス。胸元には、母から譲られた真珠のネックレス。
(……これなら、少しは大人っぽく見えるかしら)
今夜は年に一度の「薔薇の夜会」。
王都中の令嬢と騎士、貴族たちが集う社交の場。
クラリッサにとっては初めての舞踏会だった。
「……クラリッサ?」
低く落ち着いた声が背後から聞こえた。
振り返れば、そこに立っていたのは幼馴染のユリウス。
漆黒の礼服に身を包み、背はすらりと高い。
幼い頃は一緒に木登りをしてくれたお兄さんのような存在。
けれど今は──どこか遠く、大人びて見える。
「ユリウス!」
思わず駆け寄ったクラリッサに、彼は少しだけ目を細めて微笑んだ。
「久しぶりだな。……ずいぶん、背も伸びたじゃないか」
「わたし、もう子どもじゃないのよ?」
クラリッサは胸を張り、ネックレスを指でそっと押さえた。
「今夜は舞踏会。大人の女性として、ちゃんと見てちょうだい」
ユリウスは少し困ったように眉を下げ、視線を逸らした。
「……子どもの頃から変わらないな。
無理に背伸びしなくても、クラリッサはクラリッサのままでいい」
その言葉に、クラリッサの胸がちくりと痛む。
(やっぱり、まだ“妹”にしか見えてないのね……)
それでも、笑顔を崩さず言い切った。
「いいえ。今夜のわたしは“妹”じゃなくて──令嬢ですわ。
約束して。舞踏会で一番に、わたしを見てくれるって」
ユリウスの瞳がわずかに揺れる。
やがて小さく息を吐き、微笑んだ。
「……約束しよう。君が一番に輝いていたら、俺の目は必ず君を追っている」
クラリッサの心臓は、高鳴りを隠せなかった。
(絶対に……大人の女性として見せてみせる!)
薔薇の香りが漂う夜会の幕は、静かに上がろうとしていた。
1
あなたにおすすめの小説
慈悲深い天使のテーゼ~侯爵令嬢は我が道を征くつもりだ
あとさん♪
恋愛
王太子の婚約者候補に名を連ねながら、政権争いに敗れ、正式任命されなかった侯爵令嬢パトリシア。
彼女には辺境伯家との縁組が命じられた。辺境伯は毛むくじゃらの天をつくような大男で、粗野で野蛮人だと王都では噂されている。さらに独立して敵国に寝返るかもしれないと噂される辺境伯家に嫁いだら、いったいどうなるの?
いいえ、今まで被り慣れた巨大な猫を、この際、盛大に開放させましょう。
わたくしは過去の自分を捨て、本来のわたくしに戻り、思うまま生きてやります!
設定はゆるんゆるん。なんちゃって異世界。
令嬢視点と辺境伯視点の2話構成。
『小話』は、2人のその後。主に新婚さんの甘々な日常。
小説家になろうにも掲載しております。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
エリザは恋について考えていた
通木遼平
恋愛
「シューディルくんのこと好きじゃないなら、彼に付きまとうのはやめてほしいの」――名前も知らない可愛らしい女子生徒にそう告げられ、エリザは困惑した。シューディルはエリザの幼馴染で、そういう意味ではちゃんと彼のことが好きだ。しかしそうではないと言われてしまう。目の前の可愛らしい人が先日シューディルに告白したのは知っていたが、その「好き」の違いは何なのだろう? エリザはずっと考えていた。
※他のサイトにも掲載しています
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
『冗談じゃない恋』 ― お調子者王子とおっとり令嬢のすれ違いロマンス ―
だって、これも愛なの。
恋愛
冗談ばかりで真面目に見えない――そんな殿下と、
冗談を本気に受け止めてしまうおっとり令嬢。
舞踏会での「婚約しようか?」という軽口から始まった二人の関係は、
からかいとすれ違いの連続。
けれど、冗談の裏に隠された本当の気持ちに気づいたとき、
令嬢は胸を震わせ、王子は初めて仮面を脱ぎ捨てる。
ポップでコミカルな日常の先に待っていたのは――
“冗談じゃない恋”でした。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる