「お兄さまは護衛騎士さま ──幼い日の約束から始まる恋」

だって、これも愛なの。

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番外編:名前で呼んで

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──甘くてくすぐったい、二人だけの秘密

 夕暮れの庭園。茜色の光に染まる小径を、リリアナとアレクシスは並んで歩いていた。
 頬を赤くしたリリアナは、ちらちらと隣を見上げては、また前に向き直る。

 (……本当は、“お兄さま”じゃなくて名前で呼びたいのに)
 (でも、声に出すと胸がどきどきして……!)

 そんな様子に気づかぬアレクシスではない。
 「……リリアナ」
 「な、なんですか?」
 「私のこと……“お兄さま”ではなく、名前で呼んでみませんか」

 「なっ……!」
 リリアナの顔は一瞬で真っ赤に染まった。



 「む、無理ですっ! 恥ずかしいですから!」
 両手をばたばたさせるリリアナに、アレクシスは少し照れたように笑う。
 「……実はずっと、君に名前で呼ばれたいと思っていました」

 「……え?」
 「“リリアナだけのアレクシス”になれた気がするから」

 その一言に、リリアナの鼓動は跳ね上がる。
 「~~っ! いじわるです!」
 思わず顔を覆ったが、アレクシスが優しく手を取ると、逃げ場がなくなった。



 沈黙のあと、小さな声が漏れる。
 「……アレクシス」
 「……!」
 彼の瞳が驚きに揺れ、すぐに幸福そうに細められる。

 「……もう一度、呼んでいただけますか?」
 「な、ななな……! いじわるです!」
 リリアナは涙目になりながらも、頬を真っ赤にしてもう一度。
 「……アレクシス」

 その度に、彼は心底嬉しそうに笑うのだった。



 遠くの植え込みで、庭師ハロルドがひげを揺らしてため息をつく。
 「やれやれ……花も星も真っ赤に染まっちまいそうですな」
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