「隣に立つと誓ったから」 ─ 年下王子と年上姫の令嬢ロマンス ─

だって、これも愛なの。

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続編第4話 学院祭ふたたび──婚約者としてのダンス

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学院祭の夜。
大広間は無数の燭台と花々で飾られ、きらめく光が床に揺れていた。
去年と同じ、華やかな舞踏会──けれど今年は違う。

「婚約者同士ですって」「まあ素敵!」
噂はすでに広まっていて、視線のすべてがわたしたちに注がれていた。

「イリス姫」

隣に立つジュリアン様の手が、そっと差し出される。
その瞳は去年よりもずっと真っすぐで、可愛いだけではない強さが宿っていた。

「今夜も、ぼくと踊っていただけますか」

「……ええ。もちろんですわ」

微笑み返してその手を取る。
指先に伝わる体温が、胸の奥をやさしく熱くする。



音楽が始まり、ステップを踏む。
去年は頼りなげだった足取りも、今は堂々としている。
ぎこちなさよりも、彼の自信がこちらに伝わってくる。

「ジュリアン様……」

「はい?」

「あなた、とても……頼もしくなられましたのね」

思わずこぼれた言葉に、彼は頬を赤らめながらも小さく笑った。

「……じゃあ、今度は姫に伝えたいことがあります」

舞踏の途中、彼は真っすぐに見つめて言った。

「姫は“可愛い”だけじゃなくて。ぼくにとって、姫は“美しい”んです」

心臓が跳ねて、息を呑む。
胸の奥がじんわり熱くなって、視線を逸らすことさえできなかった。

「……ジュリアン様」

「はい」

「あなたこそ……もう立派な、わたくしの婚約者ですわ」

音楽が高まり、二人の影が大広間の中央で重なる。
視線が交わり、微笑みが返される。
その瞬間、周囲のざわめきも光もすべて溶けて、世界には彼とわたしだけが残ったようだった。



曲が終わり、拍手が響く。
けれど胸に刻まれたのは、観客のざわめきではなく、彼の真剣な瞳だった。

──去年は憧れ。
今年は、婚約者として。

そしてきっと、来年は……もっと強い絆で隣に並んでいるのだろう。
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