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サバゲーの頂点に立ちたいでしょう?
12
しおりを挟む「いきなり熱いお湯が出ることがあるからな。気をつけろ」
隣から手を伸ばして来たフー。熱いお湯よりも、大理石のように白い肌のフーの腕の方が、音羽には危険な気がした。
シャワーヘッドを掴んで、お湯を出して確かめるフー。前かがみになって覗き込まれれば、薄い肩や細い首筋がどうしても目に付く。
「ん……。ちょうどいいか? どうだ?」
ぱっちりと大きな瞳が、上目遣いに音羽を見つめながら、シャワーのお湯をつま先にかけた。
「うひゃあ!?」
「すまない! 熱かったか?」
ぱっと離して、温度調節を始めるフー。彼女の体を見ていたせいで、シャワーに気付かなかった、とは言えない。
「これでどうだ?」
何度か確かめて、それからまた音羽のつま先にかけた。
「あ、その。はい、だいじょうぶです」
「そうか」
そしてシャワーヘッドを音羽に渡し、自分のシャワーの調節を始める。
「ありがとう、ございます」
「アウトは、バディだ」
シャワーで軽く体を流しながら、本当に小さな声でつぶやいた。音羽以外は、誰も聞こえなかっただろう。
一瞬小首を傾げた音羽。それから嬉しさがこみ上げてきた。
――仲間、なんだ……――
どこか孤独な雰囲気を漂わせるフー。
元より友達がいない、人付き合いの苦手な音羽。
じんと胸が熱くなって、自分に友達がいるという事が、嬉しくなった。
「えへへ……」
顔が自然とにやけてしまう。慌ててシャワーで体を流す。
「あ、背中、洗います」
隣りでスポンジで泡を立てているフーが気になり、音羽は近づいた。一瞬断られるかと思ったが、フーは横目で一瞬だけ見て、ふっと背中を向けてきた。
「たのむ」
「はい!」
急いでシャワーを止め、彼女の後ろに移動して、膝立ちになる。
そうするとフーは半身をひねって、泡立てたスポンジを渡してきた。
「あまり力は入れないでくれ」
「わかりました!」
意気揚々と手を伸ばして、はたと気づいた。今フーの左肩を触ろうとしている。
お湯が水滴になっている白い肌。見るからにハリがあって、キメの細かい素肌だ。それに触れていいのか。そんな事が頭をよぎり、そして今自分もほぼ全裸という事実に、急に頭が沸騰しかけた。
「どうした?」
「あ、や、今やります!」
意を決して、フーの肩に手を置き、細心の注意を払って背中を撫でるようにスポンジを当てる。
「ん……」
吐息が漏れた。驚いて手が止まる。
「どうした?」
「あ、いえ、その……。すみません……」
もう一度、背中の筋をなぞるように、スポンジを動かす。
「ふ……、ん」
なぜか怪しく聞こえるフーの吐息。頬が熱くなっている気がするが、とりあえず続ける。
背中の上半分。首筋から肋骨の下まで。念入りになぞって行くと、洗うところがなくなった。
数瞬手を止めてみたが、もういいというフーの言葉はない。音羽は早鐘になった心臓が壊れないか不安になりながら、震える手でその下へ少しずつおろしていった。
きゅうと細くなったウエストから、少しずつ広がり、腰のくぼみ。それから柔らかい脂肪の付いた、臀部へ。
尾てい骨から、左右に分かれる谷間。そこへ触れると、ぴくっと少しだけ震えた。
「そうだな、背中だけじゃなくて、腕も、頼む」
ふっと右腕を水平に上げた。
「は、はい」
背中から、肩へ。あんなにも長くて重いライフルを、軽々と構えている腕だとはとても思えないほど細い。
痩せぎすではなく、細い骨に筋肉が張り、そこへ脂肪がちゃんと付いた、理想的に引き締まった腕。スポンジで肩、脇と撫で、二の腕、肘と先へと移動していく。
先に行くにつれてやりづらくなる。肩に添えていた左手を、彼女の肘に添えて、その先へ。
――スポンジだと、やりにくいや――
そこへスポンジを置いて、自分の手にボディーソープをつける。よく泡立てて、フーの指に泡のついた自分の指を絡ませた。
両手でしっかりもみ洗いして、左腕へ移動。スポンジを使おうかと思ったが、なめらかで触り心地がいいフーの肌を、もう少しだけ触っていたくて、手で左腕を洗うことした。
素手で触ると、よくわかるフーの身体。しっかりとした弾力の下に、水袋のように柔らかいしなやかな筋肉。その下の細さの割にしっかりとした骨。人工物でもここまで完璧な人体は再現できないだろう。
順番に撫で、そしてまた手。指を絡ませて、一本一本丹念に洗っていく。
「フーせんぱい……」
見上げてみると、彼女の顔はほんのりと上気して、白い肌と相まって桜のような薄ピンクになっていた。 そして大きな瞳はわずかに潤み、いつものけだるい雰囲気はなく、奥に迷うような、あやしい疼きのような色が混じっていた。
「そうだな、じゃあ……」
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