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サバゲー大会決勝戦!

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 試合ではほぼ圧勝。とんとんと驚くような順調さで勝ち進んだ。

「このゲーム勝てたら、全国一位……」

 ごくっと生唾を飲む音が、どこかから聞こえた。

 まさか、本当にここまで上れるなんて思ってもいなかったのであろう、一年生たち。緊張で顔が強ばっている。それは音羽も同じで、手が震えてしまう。

 音羽の索敵力と尋と珠希の制圧力。そして強力なレーダーである音羽には、絶対に自分を守ってくれるフーがいた。彼女がいたから、索敵に専念できた。ただの素人が最後まで生き残れたのだ。

「だいじょーブデース。いつも通りいければ、ちゃんと勝てマスヨー。問題ないデース」

 そんな緊張なんて、微塵もないと云うように、尋は軽く柔軟体操をしていた。

「で、でも」

 いつも通りが思い出せない。普段何をしていたのか、頭が真っ白で思い出せない。

「Oh! そうデスヨー。決勝戦は国内最大規模の、アウトドアフィールドデシター!」

 なんの前触れもなく、尋が声を上げた。

「ユニですか?」

「Oh yes! ユニデース。しかもデザートの方ネー」

「おおー」

「せんぱーい。まだ6チームいるのに、もう決勝戦なんですか?」

 やまの質問に、珠希が答えた。

「毎回、大会の決勝戦は総当たりのデスマッチなのよ。前回は残りの全チームが総当たりしていたわ」

「総当たりって……」

「普通の総当たりじゃなくて、ひとつのフィールドで全チームがぶつかり合うっていう意味だから」

 愕然となる事実に、一年生たちは余計に顔を青くした。

「今年はどうなりマスかネー? またデスマッチだったら、芸がないヨー!」

「じゃあ、メディックとか?」

「泥沼試合ネー?」

「んー、じゃあプリンシパル防衛?」

「Oh! 可能性高いデスネー!」

 そんな予想をそれぞれ立て合う。他愛のない会話。そんな会話を続けていると、バスはフィールドのすぐ近くまで来た。

 そこでバスを停車させ、ドアが開いた。

「ここからは歩きになる。それぞれ荷物を持っていってくれ」

 そこから先は、道が細くバスでは入れない。なるほどと察してそれぞれバスを降りて荷物を持って歩き出した。

「あ、やっぱりこの前の子だ!」

 突然降って湧いた声に驚くメンバー。驚かないのは尋など。

 颯爽と音羽たちを追い越して前に立つ声の正体は、微笑と共に氷細工のように繊細な手を振った。

「あ、えっと?」

「この前の定例以来だよね?」

 黒髪を高い位置で団子にまとめた女性。一応学生の部での参加者だろうか。長身でモデルのように均整のとれた肢体と、精悍な顔は一見美青年にも思える。

「あ、あ」

 思い出した音羽は、なんて言っていいのか分からず、口をぱくぱく動かす。以前定例会で出会った女性だ。
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