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サバゲー大会決勝戦!

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 跳ねそうになる心臓を必死に抑え込んで、相手の呼吸を聞き取る。

 突入の瞬間、必ず一瞬だけ呼吸を止めて力むはずだ。その瞬間を狙う。

「ほらほら! 降参しな!」

 外では猛烈な乱射が始まった。これが止んだとき、敵は来るはずだ。

 ストックを伸ばして、腕の中に短機関銃MP5K/PDWを抱き込む。

 ――大丈夫。この子いるから。フー先輩が創ってくれた、すごいのなんだから――

 安全装置を外し、グリップを軽く握り込む。

 そして、呼吸を止めた。

 まさにその瞬間、外の乱射が止んだ。

 ――きた!――

 壁向こうの敵も、息を止め、飛び出した。

 すでに薄暗くなったジャックの中、音羽は耳だけをた寄りに、短機関銃を構えた。

 何十、否、尋やフーの指導の下、何百回と繰り返した構え。即応できるように、何度も練習したのだ。

 トリガーを、二回絞っていた。

 ストックも、グリップも、全てが、ごく自然にいつも通り、中てられる位置にあった。

 訓練通り二回撃った弾は、一発が相手の短機関銃に、一発はボディアーマーに中って、かつん、パツンと音を立てていた。

「え……?」

 まだ状況を把握仕切れていないと、顔に書いた敵は、茫然としたまま立ち尽くす。

「おーい! どうした? 取ったか?」

 外の機関銃使いが、待ちかねた様子で大声を出す。

「あ、ああ。ごめん。ヒットしちゃったわ」

 その味方の声で、ようやく現状を把握した敵だった少女は、両手を上げた。その腕にはプリンシパルの腕章があった。

「はぁあああ!?」

 外で、また叫びが上がった。

 だが現実を把握仕切れていなかったのは、音羽も同じだった。その叫び声に驚いて、初めて姿勢を崩してぺたりとその場に座り込んだ。

「なんで? 気配、全然しなかったし。幽霊?」

 どうしてという疑問が、彼女の顔一杯に貼り付いていたが、それよりも、

「かった……」

 その事実に、まだ現実味が薄く感じられた。

「あー、悔しい! 今年で二連覇になるはずだったのに!」

 敵チームだった少女が、悔しそうに、呻いて、音羽に手を差し出した。

「優勝おめでとうッ! 悔しいけど、今年はゆずる!」

「ふぇ?」

 一瞬怒られたのかと首をすくめた音羽だったか、言葉の内容が頭にじんわりと染み込んできて、恐る恐る手をとった。

「あ、ありがとう、ございます……」

「くっそー! 君、一年生?」

 顔に悔しさをにじませながらも、ぎゅうと掴んだ音羽の手を引いて、立たせてくれた。

「はい」

「じゃあ、来年は勝からね!」

 そのまま強く握手して、ゴーグルの下で目を細めたのが見えた。

「はい!」
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