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第69話 ターゲット
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『絶好のカモを見つけた』その発言に皆の注目がディルク一人に集中し、ディーノとマルクも若干前傾姿勢に成る。
「俺が町の中を金持ちを探しながら歩いていると、何と車が走ってきたんです!! しかもボロボロのジャンク品みたいな奴じゃない、真っ黒でピカピカの高級車です!!」
その発言が皆の耳に届いた瞬間、周囲にどよめきが起きる。
しかし皆が驚くのも無理はない、車を持てる人間というのは上流階級の更に一握りだ。
しかも大抵の場合は何人もの人間にボロボロに成るまで乗り回された中古車であり、新車に乗れるのはその一握りの更に一握り。
つまりディルクが見つけた車の持ち主は、超絶金持ちという訳である。
「でかしたぞディルクッ!! 何処で見つけた? なあッ、何処だ??」
「車で、しかも新車だと? どんな奴が乗ってた? 今どこに居るのか把握しているのか??」
ディーノもどうやら何を発見したのかまでは聞いていなかった様で、ディーノとマルクの二人がディルクの胸倉を掴んで質問攻めにした。
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着てくださいッ! 胸倉掴まれながらだと苦しくて上手く喋れませんよ!!」
ディルクが苦しそうに顔を歪めに叫び、二人は慌てて手を放す。
二人はここの仲間達の命を年長者として預かる立場にも関わらず、去年三人も死者を出してしまった事がトラウマに成っていたのだ。
今年こそは何としてでも全員無事に冬を超えさせるという気持ちが先走ってしまっている。
「悪いディルク……少し熱く成り過ぎた」
「ああ、俺もだ。済まなかったッ」
咽て咳込むディルクを心配そうに見つめ、二人は頭を下げて謝罪した。
「別に良いですよ、あなた達が去年の冬以来一年間ずっと悩んでた事は知ってますからね。其れに大丈夫ですよ、持ち主の居場所と顔も把握済みです。きっと今頃中心部の高級ホテルに泊まってますよ」
咳が収まって呼吸が元に戻ったディルクはニヤニヤしながらそう言った。
憧れのディーノとマルクが驚いてくれた事と、自分が活躍して仲間たちの助けに成れている事が嬉しいのだろう。
「本当かッ!? でかしたぞディルク!!」
どの話を聞いたディーノが飛び掛かり、ディルクと肩を組んで喜びを表す。
その他の年長者達も既に金が手に入ったかのように大盛り上がりし、ディーノとディルクの上に覆いかぶさっていく。
一瞬でお祭りムードだ。
皆が完全に浮かれあがっている。
しかしそんな時に釘を刺し一歩下がった目線で見渡すのがマルクの役目だった。
「お前ら、盛り上がるのは金が手に入ってからにしろ。高級車を乗り回してこんな場所に来る奴だ、確実に唯者じゃない」
その声が薄暗い地下空間に響いた瞬間、辺りに木霊していた歓声がピタリと止む。
この126区は観光地と呼べるような場所は何処にも無く、マフィアの支配地域とも隣接していて目的もなく来る事は有り得ない地域であった。
確実に普通の目的でやって来た人間では無いだろう。
「ディルク……相手の人相は見たのか?」
そう聞かれたディルクは一瞬で顔色を変え、鉛でも吐き出すかのような思い口調で言葉を発した。
「ああ、中々、ショッキングな見た目をした奴だった。スキンヘッドで右目が潰れていて、見ただけで心臓が止まりそうな程威圧感の有る目をしていました……」
一瞬で空間が静まり返った。
全員の脳内では一つの可能性がデカデカと張り出されたが、恐ろし過ぎて誰もその可能性を声に変えて吐き出そうとはしない。
唯二人を覗いては。
「マフィアだな」
「ああ、十中八九なッ」
ディーノとマルクは覚悟が決まった様で、もしも実行する場合の手順まで考え始める。
他のメンバーが恐怖に恐れ慄き声も発せなかったにも関わらず、やる前提でどうすれば成功するのかを考え始めた二人をディルクは心からカッコイイと思った。
「底辺の口だけ野郎ならどうとでも出来るが……偶にいる本物だったら正直厳しいぞ」
「ああ、その時は即撤退だ。俺がこの目で見て判断する、神様が与えてくれた負け犬の呪いなんだから使い尽さないとなッ」
ディーノとマルクは一瞬で瞳に冷たい光が灯り、体が臨戦態勢に入った。
二人は腕っぷしと逃げ足だけで8年間ストリートチルドレンとして生きてきただけあって、戦闘能力だけなら並みの大人など相手に成らない。
銃程度使われても頭の回転とバトルセンスで難無く制圧できる、本物の戦いの天才なのだ。
加えて二人とも異常なほど地頭が良く、毎回天才的な作戦を思いついてくれる。
ディーノとマルクの二人が作戦を考え、実際に実行まで行ってくれるというだけで絶大な安心感が少年たちを包むのだった。
加えてディーノには不思議な力が……
「よしッ、お前たちはもう寝ろ!! 明日はターゲットが宿泊先から出るのを貼り込むため、朝4時には起きて貰うぞ。作戦は俺とディーノが一夜漬けで完璧に仕上げておく、急いで就寝だ!!」
マルクが叫んで、年長者達は一斉に行動を開始した。
皆一日中動き回り疲れ果てていて、自分の寝床へ向かい急ぎ足で向かっていく。
普通の人間は良く寝ておかなければ翌日充分なパフォーマンスを発揮する事は出来ない。
しかしディーノとマルクは普通の人間では無く、三日間は一切の睡眠無しで最高のパフォーマンスを発揮できるので夜通し作戦を考え続けた。
何とか一夜で作戦を纏め、日が昇る前に年長者達を揺すり起こす。
そしてディーノ達ストリートチルドレンが冬を超えられるかどうかを賭けた誘拐作戦が、実行の時を迎えたのだった。
「俺が町の中を金持ちを探しながら歩いていると、何と車が走ってきたんです!! しかもボロボロのジャンク品みたいな奴じゃない、真っ黒でピカピカの高級車です!!」
その発言が皆の耳に届いた瞬間、周囲にどよめきが起きる。
しかし皆が驚くのも無理はない、車を持てる人間というのは上流階級の更に一握りだ。
しかも大抵の場合は何人もの人間にボロボロに成るまで乗り回された中古車であり、新車に乗れるのはその一握りの更に一握り。
つまりディルクが見つけた車の持ち主は、超絶金持ちという訳である。
「でかしたぞディルクッ!! 何処で見つけた? なあッ、何処だ??」
「車で、しかも新車だと? どんな奴が乗ってた? 今どこに居るのか把握しているのか??」
ディーノもどうやら何を発見したのかまでは聞いていなかった様で、ディーノとマルクの二人がディルクの胸倉を掴んで質問攻めにした。
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着てくださいッ! 胸倉掴まれながらだと苦しくて上手く喋れませんよ!!」
ディルクが苦しそうに顔を歪めに叫び、二人は慌てて手を放す。
二人はここの仲間達の命を年長者として預かる立場にも関わらず、去年三人も死者を出してしまった事がトラウマに成っていたのだ。
今年こそは何としてでも全員無事に冬を超えさせるという気持ちが先走ってしまっている。
「悪いディルク……少し熱く成り過ぎた」
「ああ、俺もだ。済まなかったッ」
咽て咳込むディルクを心配そうに見つめ、二人は頭を下げて謝罪した。
「別に良いですよ、あなた達が去年の冬以来一年間ずっと悩んでた事は知ってますからね。其れに大丈夫ですよ、持ち主の居場所と顔も把握済みです。きっと今頃中心部の高級ホテルに泊まってますよ」
咳が収まって呼吸が元に戻ったディルクはニヤニヤしながらそう言った。
憧れのディーノとマルクが驚いてくれた事と、自分が活躍して仲間たちの助けに成れている事が嬉しいのだろう。
「本当かッ!? でかしたぞディルク!!」
どの話を聞いたディーノが飛び掛かり、ディルクと肩を組んで喜びを表す。
その他の年長者達も既に金が手に入ったかのように大盛り上がりし、ディーノとディルクの上に覆いかぶさっていく。
一瞬でお祭りムードだ。
皆が完全に浮かれあがっている。
しかしそんな時に釘を刺し一歩下がった目線で見渡すのがマルクの役目だった。
「お前ら、盛り上がるのは金が手に入ってからにしろ。高級車を乗り回してこんな場所に来る奴だ、確実に唯者じゃない」
その声が薄暗い地下空間に響いた瞬間、辺りに木霊していた歓声がピタリと止む。
この126区は観光地と呼べるような場所は何処にも無く、マフィアの支配地域とも隣接していて目的もなく来る事は有り得ない地域であった。
確実に普通の目的でやって来た人間では無いだろう。
「ディルク……相手の人相は見たのか?」
そう聞かれたディルクは一瞬で顔色を変え、鉛でも吐き出すかのような思い口調で言葉を発した。
「ああ、中々、ショッキングな見た目をした奴だった。スキンヘッドで右目が潰れていて、見ただけで心臓が止まりそうな程威圧感の有る目をしていました……」
一瞬で空間が静まり返った。
全員の脳内では一つの可能性がデカデカと張り出されたが、恐ろし過ぎて誰もその可能性を声に変えて吐き出そうとはしない。
唯二人を覗いては。
「マフィアだな」
「ああ、十中八九なッ」
ディーノとマルクは覚悟が決まった様で、もしも実行する場合の手順まで考え始める。
他のメンバーが恐怖に恐れ慄き声も発せなかったにも関わらず、やる前提でどうすれば成功するのかを考え始めた二人をディルクは心からカッコイイと思った。
「底辺の口だけ野郎ならどうとでも出来るが……偶にいる本物だったら正直厳しいぞ」
「ああ、その時は即撤退だ。俺がこの目で見て判断する、神様が与えてくれた負け犬の呪いなんだから使い尽さないとなッ」
ディーノとマルクは一瞬で瞳に冷たい光が灯り、体が臨戦態勢に入った。
二人は腕っぷしと逃げ足だけで8年間ストリートチルドレンとして生きてきただけあって、戦闘能力だけなら並みの大人など相手に成らない。
銃程度使われても頭の回転とバトルセンスで難無く制圧できる、本物の戦いの天才なのだ。
加えて二人とも異常なほど地頭が良く、毎回天才的な作戦を思いついてくれる。
ディーノとマルクの二人が作戦を考え、実際に実行まで行ってくれるというだけで絶大な安心感が少年たちを包むのだった。
加えてディーノには不思議な力が……
「よしッ、お前たちはもう寝ろ!! 明日はターゲットが宿泊先から出るのを貼り込むため、朝4時には起きて貰うぞ。作戦は俺とディーノが一夜漬けで完璧に仕上げておく、急いで就寝だ!!」
マルクが叫んで、年長者達は一斉に行動を開始した。
皆一日中動き回り疲れ果てていて、自分の寝床へ向かい急ぎ足で向かっていく。
普通の人間は良く寝ておかなければ翌日充分なパフォーマンスを発揮する事は出来ない。
しかしディーノとマルクは普通の人間では無く、三日間は一切の睡眠無しで最高のパフォーマンスを発揮できるので夜通し作戦を考え続けた。
何とか一夜で作戦を纏め、日が昇る前に年長者達を揺すり起こす。
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