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第六話 イベント⑦
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「ゴフゥ……ッ!!」
ドテッ! ドッ、ドサッ………
自慢の斬撃をジークに流され、容易く顔面に拳を叩き込まれたミミックはそんな事全く想定しなかったという様に体勢を崩し吹き飛ばされていった。
そして派手に二度も天地入れ替わる大回転を行った後、其れでも何が起ったのか理解出来ないという面持ちで顔を手で覆ったのである。
その悠長極まりない姿も、レッドバロンなら絶対に晒さなかったであろう。
(なッ、何が起った!? この俺の剣が突然歪んで、気付いたら殴り飛ばされていたッ。何だ、何だ、何だ、何だッ、何だッ、何だッ、何なんだッ!!)
ミミックはこれまで想像した事も無かった。まさか自分の剣技が敵を捉える事さえ出来ず、それどころかカウンターで吹き飛ばされ醜態を晒し地面を転がるなど。
当然、この様な時の対応策なんて都合の良い物用意している筈も無い。手札はこれ一枚切りなのだから。
頭の中で何だ何だと呟きながらも、彼の脳味噌は氷付いた様に固まり全く回転してはいなかった。
そんなミミックが立ち上がり剣を構え直すという最低限が出来たのは、その尻餅をつき目を白黒させる様を見飽きたジークの方が近付いて来て漸く。
「うおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ズオォォォンッ!!
しかし、何とか立ち上がった彼が放ったのは先程と代わり映えのしない、真正面から突っ込んで小綺麗に剣を振り下ろすだけの攻撃であった。
当然、初見時ですら掠りもしなかった攻撃をもう一度放って敵に命中する道理は無い。寒々しい風切り音が狭いコロッセオの中で響くのみ。
たった一振りで己と敵の間の実力差を悟るべきだったのは、彼の方であった。
「おおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ブオンッ!! ズザァァッ!! ザンッ、ズオオオンッ!
流石のミミックも、攻撃が空を切る独特な脱力感で脳の片隅が気付く。
しかしその折角得た真実にも関わらず、彼は顔を左右にフルフルと揺らしそれを思考の外へと追い出したのである。
そして考える事を拒絶し、只管前へ出て剣を振り回し続けるのだった。
例え其れが真実だったとしても、認める訳にはいかなかったのである。自分の鍛え上げてきた剣技がこんな無名のプレイヤーに通用しない等。
だってそれを認めてしまっては、これしか持ち得ない自分にはもう勝つ手が無くなってしまうではないか。その事実を認めるという事は、自分のプロ入りへの道が閉ざされた事を認めるのと同じなのだから。
だからそんな見たくない現実が頭に入ってくる余地が無い様に、ミミックは只管当ることの無い剣を振り回し続ける。
ズオンッ!!
「……ッと」
そのまるで子供が癇癪を起した様な、視界の狭窄している斬撃をジークは容易く身体を反らすのみで回避する。
そうして完璧なタイミングで攻撃を避けた彼の前へと道が開けた。首へと一直線に通じる、此処を刺してくれと誘っているかの如き隙を敵が晒したのだ。
其処に凶刃を滑り込ませれば、その瞬間敵の体力は弾け飛び試合終了の運びとなるだろう。
ズドンッ!!
しかしその決定機を前にしたにも関わらず、ジークは武器による攻撃を行わなかった。
代わりに全力とは程遠い、敵を突き放す程度の蹴りを相手の腹へと叩き込んだのである。
(それ以外はまるで違うけど、剣技だけは本当にレッドバロンそっくりだ。良い練習台には成るかもな……)
それはキルを取れる場面で取らないという最上級の嘗めプ。
ジークはこの時、既に自分ならこの敵を何時でも倒せると見切りを付けていた。そしてその上で、この男の剣技をレッドバロンとの再戦を想定したサンドバッグとして利用したのである。
次に奴と対戦する機会があった時に使いたい技術、それを正しく敵の身体で人体実験するつもりであった。
皮肉な事に、ミミックはその己が磨いた剣技故に生かされ、又同時に殺される事と成ったのだ。
ビュオンッ
「クソッ、クソッ、クソォッ!! 何で攻撃が当らないんだよォ”!!」
もう心臓の拍音ほど耳に染み込んでしまった攻撃が空振る音に、ミミックは等々苛立たしげな声を上げる。
そしてこの頃に成れば流石の彼も気付く。いやッ気付かないフリをする事さえ許しては貰えなかった。
今相対しているこの男が、自分より遙かに強いという事を。
ズオォッ
自分では勝てない、そんな事は空を切る感触を両手で握った柄が伝える度に理解させられている。既に何度も、何十度も自分が弱いという事を思い知らされているのだ。
そして敗北を悟ってしまった者が何をすべきなのかも知っている。メニューを開き、リタイアを選択するのが自分に許された最も潔く美しい結末。
だがそうだと知っていても如何してもその選択を行う事が出来なかったのである。
剣を振るう腕を、止める事が出来なかった。
ブオンッ
だってこの戦いで負けた瞬間、自分は全てを失ってしまうのだから。
普通の人生を歩めば充分人並み以上の幸せを享受出来たであろう時間を既に捧げてしまっていた。負けて慰めてくれる仲間も既に切り捨ててしまった。例え非情な現実を突きつけられても諦める事の出来ない夢を既に見てしまっているのだ。
俺にとってゲームは遊びなんかじゃない。このゲームは俺の人生なんだ。
ズザァッ
だから、何時も本気だった。
誰よりも幸福と睡眠時間を削って、誰よりも苦しみと努力を積み重ねたのだ。そうすれば、誰より強く成れると思ったから。
足手纏いでモチベーションを落としてくる仲間を切り捨てたのだ。一人に成れば、今までよりずっと強く成れると思ったから。
だけど、本当に今のオレは強く成れているのかな?
ッヒュン
だとしたら、自分は何を間違えたのだろうか。
強く成る為の最短ルートを突き進んできた筈である。これ以上ない程限界を超えて努力をしてきたのだ。
サボった事何て無い、何時も愚直に真面目にプレイしてきた自信がある。
でも、今自分が追い詰められているという事は、きっと何かを間違ったんだろな。
ブゥンッ
なあ、レッドバロン。俺は何を間違えたんだい?
どうやったらアンタみたいに成れた? アンタに比べて今の俺には何が足りないんだい? どんな努力をすればその足りない物は埋まるんだ?
ああ、努力で頼むよ。
どんな辛い特訓だって耐えてみせる。どんな辛い試練だろうと乗り越えて見せるからさ。
だって俺には、努力する以外何も無いんだから。
「もう良いか。ブースト、起動」
……………………………………ッダアアァン”!!!!
それまで僅かだって手応えを伝えてはくれなかった癖に、突如まるで何かが爆発したかの如き衝撃を剣は手に伝えてきた。
そして僅かだって手応えを感じられぬ中でも握り続けていた剣が、その衝撃に弾かれ手の中から離れていったのである。
耳に、遠くで自分の手から弾き飛ばされた剣が何かに突き刺さった音を聞く。
目に、鮮血の如き赤いオーラを纏った短刀を自らへ向け振り上げる敵の姿が映った。
心に、幸せも友情も剣も無くしてしまった見窄らしい男の姿を感じる。
ズバァ”ッ
【キルログ コード・ジーク→ミミック✖】
ドテッ! ドッ、ドサッ………
自慢の斬撃をジークに流され、容易く顔面に拳を叩き込まれたミミックはそんな事全く想定しなかったという様に体勢を崩し吹き飛ばされていった。
そして派手に二度も天地入れ替わる大回転を行った後、其れでも何が起ったのか理解出来ないという面持ちで顔を手で覆ったのである。
その悠長極まりない姿も、レッドバロンなら絶対に晒さなかったであろう。
(なッ、何が起った!? この俺の剣が突然歪んで、気付いたら殴り飛ばされていたッ。何だ、何だ、何だ、何だッ、何だッ、何だッ、何なんだッ!!)
ミミックはこれまで想像した事も無かった。まさか自分の剣技が敵を捉える事さえ出来ず、それどころかカウンターで吹き飛ばされ醜態を晒し地面を転がるなど。
当然、この様な時の対応策なんて都合の良い物用意している筈も無い。手札はこれ一枚切りなのだから。
頭の中で何だ何だと呟きながらも、彼の脳味噌は氷付いた様に固まり全く回転してはいなかった。
そんなミミックが立ち上がり剣を構え直すという最低限が出来たのは、その尻餅をつき目を白黒させる様を見飽きたジークの方が近付いて来て漸く。
「うおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ズオォォォンッ!!
しかし、何とか立ち上がった彼が放ったのは先程と代わり映えのしない、真正面から突っ込んで小綺麗に剣を振り下ろすだけの攻撃であった。
当然、初見時ですら掠りもしなかった攻撃をもう一度放って敵に命中する道理は無い。寒々しい風切り音が狭いコロッセオの中で響くのみ。
たった一振りで己と敵の間の実力差を悟るべきだったのは、彼の方であった。
「おおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ブオンッ!! ズザァァッ!! ザンッ、ズオオオンッ!
流石のミミックも、攻撃が空を切る独特な脱力感で脳の片隅が気付く。
しかしその折角得た真実にも関わらず、彼は顔を左右にフルフルと揺らしそれを思考の外へと追い出したのである。
そして考える事を拒絶し、只管前へ出て剣を振り回し続けるのだった。
例え其れが真実だったとしても、認める訳にはいかなかったのである。自分の鍛え上げてきた剣技がこんな無名のプレイヤーに通用しない等。
だってそれを認めてしまっては、これしか持ち得ない自分にはもう勝つ手が無くなってしまうではないか。その事実を認めるという事は、自分のプロ入りへの道が閉ざされた事を認めるのと同じなのだから。
だからそんな見たくない現実が頭に入ってくる余地が無い様に、ミミックは只管当ることの無い剣を振り回し続ける。
ズオンッ!!
「……ッと」
そのまるで子供が癇癪を起した様な、視界の狭窄している斬撃をジークは容易く身体を反らすのみで回避する。
そうして完璧なタイミングで攻撃を避けた彼の前へと道が開けた。首へと一直線に通じる、此処を刺してくれと誘っているかの如き隙を敵が晒したのだ。
其処に凶刃を滑り込ませれば、その瞬間敵の体力は弾け飛び試合終了の運びとなるだろう。
ズドンッ!!
しかしその決定機を前にしたにも関わらず、ジークは武器による攻撃を行わなかった。
代わりに全力とは程遠い、敵を突き放す程度の蹴りを相手の腹へと叩き込んだのである。
(それ以外はまるで違うけど、剣技だけは本当にレッドバロンそっくりだ。良い練習台には成るかもな……)
それはキルを取れる場面で取らないという最上級の嘗めプ。
ジークはこの時、既に自分ならこの敵を何時でも倒せると見切りを付けていた。そしてその上で、この男の剣技をレッドバロンとの再戦を想定したサンドバッグとして利用したのである。
次に奴と対戦する機会があった時に使いたい技術、それを正しく敵の身体で人体実験するつもりであった。
皮肉な事に、ミミックはその己が磨いた剣技故に生かされ、又同時に殺される事と成ったのだ。
ビュオンッ
「クソッ、クソッ、クソォッ!! 何で攻撃が当らないんだよォ”!!」
もう心臓の拍音ほど耳に染み込んでしまった攻撃が空振る音に、ミミックは等々苛立たしげな声を上げる。
そしてこの頃に成れば流石の彼も気付く。いやッ気付かないフリをする事さえ許しては貰えなかった。
今相対しているこの男が、自分より遙かに強いという事を。
ズオォッ
自分では勝てない、そんな事は空を切る感触を両手で握った柄が伝える度に理解させられている。既に何度も、何十度も自分が弱いという事を思い知らされているのだ。
そして敗北を悟ってしまった者が何をすべきなのかも知っている。メニューを開き、リタイアを選択するのが自分に許された最も潔く美しい結末。
だがそうだと知っていても如何してもその選択を行う事が出来なかったのである。
剣を振るう腕を、止める事が出来なかった。
ブオンッ
だってこの戦いで負けた瞬間、自分は全てを失ってしまうのだから。
普通の人生を歩めば充分人並み以上の幸せを享受出来たであろう時間を既に捧げてしまっていた。負けて慰めてくれる仲間も既に切り捨ててしまった。例え非情な現実を突きつけられても諦める事の出来ない夢を既に見てしまっているのだ。
俺にとってゲームは遊びなんかじゃない。このゲームは俺の人生なんだ。
ズザァッ
だから、何時も本気だった。
誰よりも幸福と睡眠時間を削って、誰よりも苦しみと努力を積み重ねたのだ。そうすれば、誰より強く成れると思ったから。
足手纏いでモチベーションを落としてくる仲間を切り捨てたのだ。一人に成れば、今までよりずっと強く成れると思ったから。
だけど、本当に今のオレは強く成れているのかな?
ッヒュン
だとしたら、自分は何を間違えたのだろうか。
強く成る為の最短ルートを突き進んできた筈である。これ以上ない程限界を超えて努力をしてきたのだ。
サボった事何て無い、何時も愚直に真面目にプレイしてきた自信がある。
でも、今自分が追い詰められているという事は、きっと何かを間違ったんだろな。
ブゥンッ
なあ、レッドバロン。俺は何を間違えたんだい?
どうやったらアンタみたいに成れた? アンタに比べて今の俺には何が足りないんだい? どんな努力をすればその足りない物は埋まるんだ?
ああ、努力で頼むよ。
どんな辛い特訓だって耐えてみせる。どんな辛い試練だろうと乗り越えて見せるからさ。
だって俺には、努力する以外何も無いんだから。
「もう良いか。ブースト、起動」
……………………………………ッダアアァン”!!!!
それまで僅かだって手応えを伝えてはくれなかった癖に、突如まるで何かが爆発したかの如き衝撃を剣は手に伝えてきた。
そして僅かだって手応えを感じられぬ中でも握り続けていた剣が、その衝撃に弾かれ手の中から離れていったのである。
耳に、遠くで自分の手から弾き飛ばされた剣が何かに突き刺さった音を聞く。
目に、鮮血の如き赤いオーラを纏った短刀を自らへ向け振り上げる敵の姿が映った。
心に、幸せも友情も剣も無くしてしまった見窄らしい男の姿を感じる。
ズバァ”ッ
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