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第四話 フート②
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はあ? お前何言っとるんや??」
「オレを弟子にして下さいッ!!」
「いや別に聞こえとらんかった訳やないわ、自分で自分の耳を疑っとるんや!! オレを弟子にって……ワシが、お前を弟子に取るって事か?」
「はいッ!!」
青年のキラキラと希望に満ちあふれた瞳と、ディックの呆気に取られ白目が増えた瞳が一直線に重なる。そして先にディックの方が目を逸らし、顔をブンブンと横に振った。
「ダメや、絶対あかん」
「何でですかッ!?」
「何でですかもクソもない、ダメなもんはダメ。絶対にワシはお前を弟子になんて取らんッ! えっと………名前なんやったっけ」
「誰のですか?」
「誰のって、此処にはワシとお前しか居らんだろうがッ。お前やお前、弟子に成りたいんやったら先ずは自分の名前を名乗らんかい!!」
ディックにお前の名前だと言われたのと同時に青年の顔がつい零れてしまった様な笑顔で埋まる。そして瞳の輝きを更に強くさせ、どうという事ではない筈なのにとても嬉しそうな表情で名前を名乗った。
「フート、オレの名前はフートって言います。フートです、フート、フーート」
「そんな何回も言わんでも聞こえるわッ。じゃあフート、良く聞け。ワシは何も意地悪で弟子にせんと言っとる訳やないで、お前の為を思って拒否しとるんや。考えてもみい、ワシは世界一の嫌われ者プロフェッサーディックやで? そんな奴に弟子入りしてた何て経歴人生の邪魔にしかならんわ。悪い事は言わん、普通に生きるんが一番や」
「普通の人生なんてクソくらえですよッ。寧ろ人生も何もかもメチャクチャになって壮絶な死を遂げたいです!!」
フートは一切笑顔を崩す事無く堂々とそう言ってのけた。その言葉、そしてその表情がまた別の人間と重なって感じられたのだが、ディックはその気付きから目を逸らし説得を続ける。
「お前な、今はその選択に悔いがないと思っとるかも知れんが後々絶対後悔するで? 何時までも若い訳やない、体力も気力も年齢に従って落ちていく。ちょっと目ぇ閉じて想像してみい、50過ぎたオッサンが普通の人生なんてクソくらえって言っとる姿を。惨め過ぎて鳥肌立たんか?」
「カッコいいじゃないですか」
「………はぁ、お前相当重傷やな。何で態々自分から苦しい道に進もうとすんねん。思春期特有の破滅衝動って奴か? 夏休みにタトゥー入れるノリで弟子成りたいって言われても困るんやけどなあ」
「違いますッ、オレはそんな軽い気持ちで弟子にしてくれって言ってる訳じゃない!本気で、貴方みたいにこの世界をぶっ壊す為に命を捧げたい。その為だったら他の何を失う事だって覚悟の上ですッ!!」
「ワシみたいに、って………」
フートの目はまるで今此処で腹を割らんとでも言い出しそうな位に据わっていた。此処まで来るといい加減ディックも気付き始める、目の前に居る男が唯の変わり者ではなく本気で社会に対し憎悪を抱いているテロリスト予備軍であると。
その目は、一切冗談の色を纏ってはいなかった。
紛うこと無き危険人物、だがしかしそれはディックも同じ事だ。寧ろ彼は本職本業の超有名テロリスト、ケツの青いガキの狂気程度では脅しにすら成らない。更に語気と圧力を強め、自分の足に縋り付くフートの心を折りにかかる。
「本気かどうか何て関係無いねん。お前見た感じまだ未成年やろ、ガキを弟子になんて取れる訳無いやろうがッ!! それに簡単なショックガンですらあの程度、何か特殊技能がある訳でもない。要らんねんそんな奴ッ。弟子取るにしてももっとマシなのが幾らでも居るわ!!」
ディックはフートが如何に力不足であるのかという点を突いて弟子入りを諦めさせようとする。しかし彼がディックの言葉の中で焦点を当てたのは全く予想外の所であった。
「特殊技能ですか………あ、ありますッ! 特殊技能あります!!」
「え?」
想定外の返答を受けたディックは呆気に取られ、言葉に詰まってしまう。
「……………一応、言ってみい」
「根性があります」
「馬鹿野郎ッ! そんなもん特殊技能とは言わへんねん! もっとこう……司法試験合格とか総合無線通信士の資格持ってるとかそういうのを言っとるんや!! そもそも本当に根性がある奴が自分で根性があります何て言うかッ。能ある鷹は本当に爪を隠すもんやで」
「なら証明しますッ!!」
流石に此処までボロクソ言えば諦めると思っていた。しかしフートは頭上から降り注ぐ罵倒に僅かすら気後れする事無く食い下がってくる。
それどころか更に瞳に宿る必死さが増し、ディックの足に絡み付けていた腕を一層強く締めた。
「今から弟子入りを認めて貰えるまで、オレは絶対にこの腕を放しませんッ!! 殴られたって蹴られたって、耳を削ぎ落とされようとも絶対にッ!!」
足に伝わって来る鬱血する程の圧力から、フートが本気で離れまいと抱きついてきている事は分かった。そして今までの問答からこの青年が言葉で制せる程簡単な相手ではないという事も。
こうなるともう残っている選択肢はただ一つ、彼が望む通り力尽くで押しのけるのみ。
流石に昨日知り合ったばかり恩ある相手、しかも子供に暴力を振るう事は心が痛む。しかしこのまま受け入れてしまえば一つの掛け替えのない人生を後戻りできない程破壊する事になる。そう考えれば、この瞬間の心痛など些細な物として呑み込む事が出来た。
身体を捧げた泣き落としが通じると思っているのなら読みが甘い。プロフェッサーディックとはヴィランの名、子供の顔だろうと本気で足蹴に出来る男の名である。
「オレを弟子にして下さいッ!!」
「いや別に聞こえとらんかった訳やないわ、自分で自分の耳を疑っとるんや!! オレを弟子にって……ワシが、お前を弟子に取るって事か?」
「はいッ!!」
青年のキラキラと希望に満ちあふれた瞳と、ディックの呆気に取られ白目が増えた瞳が一直線に重なる。そして先にディックの方が目を逸らし、顔をブンブンと横に振った。
「ダメや、絶対あかん」
「何でですかッ!?」
「何でですかもクソもない、ダメなもんはダメ。絶対にワシはお前を弟子になんて取らんッ! えっと………名前なんやったっけ」
「誰のですか?」
「誰のって、此処にはワシとお前しか居らんだろうがッ。お前やお前、弟子に成りたいんやったら先ずは自分の名前を名乗らんかい!!」
ディックにお前の名前だと言われたのと同時に青年の顔がつい零れてしまった様な笑顔で埋まる。そして瞳の輝きを更に強くさせ、どうという事ではない筈なのにとても嬉しそうな表情で名前を名乗った。
「フート、オレの名前はフートって言います。フートです、フート、フーート」
「そんな何回も言わんでも聞こえるわッ。じゃあフート、良く聞け。ワシは何も意地悪で弟子にせんと言っとる訳やないで、お前の為を思って拒否しとるんや。考えてもみい、ワシは世界一の嫌われ者プロフェッサーディックやで? そんな奴に弟子入りしてた何て経歴人生の邪魔にしかならんわ。悪い事は言わん、普通に生きるんが一番や」
「普通の人生なんてクソくらえですよッ。寧ろ人生も何もかもメチャクチャになって壮絶な死を遂げたいです!!」
フートは一切笑顔を崩す事無く堂々とそう言ってのけた。その言葉、そしてその表情がまた別の人間と重なって感じられたのだが、ディックはその気付きから目を逸らし説得を続ける。
「お前な、今はその選択に悔いがないと思っとるかも知れんが後々絶対後悔するで? 何時までも若い訳やない、体力も気力も年齢に従って落ちていく。ちょっと目ぇ閉じて想像してみい、50過ぎたオッサンが普通の人生なんてクソくらえって言っとる姿を。惨め過ぎて鳥肌立たんか?」
「カッコいいじゃないですか」
「………はぁ、お前相当重傷やな。何で態々自分から苦しい道に進もうとすんねん。思春期特有の破滅衝動って奴か? 夏休みにタトゥー入れるノリで弟子成りたいって言われても困るんやけどなあ」
「違いますッ、オレはそんな軽い気持ちで弟子にしてくれって言ってる訳じゃない!本気で、貴方みたいにこの世界をぶっ壊す為に命を捧げたい。その為だったら他の何を失う事だって覚悟の上ですッ!!」
「ワシみたいに、って………」
フートの目はまるで今此処で腹を割らんとでも言い出しそうな位に据わっていた。此処まで来るといい加減ディックも気付き始める、目の前に居る男が唯の変わり者ではなく本気で社会に対し憎悪を抱いているテロリスト予備軍であると。
その目は、一切冗談の色を纏ってはいなかった。
紛うこと無き危険人物、だがしかしそれはディックも同じ事だ。寧ろ彼は本職本業の超有名テロリスト、ケツの青いガキの狂気程度では脅しにすら成らない。更に語気と圧力を強め、自分の足に縋り付くフートの心を折りにかかる。
「本気かどうか何て関係無いねん。お前見た感じまだ未成年やろ、ガキを弟子になんて取れる訳無いやろうがッ!! それに簡単なショックガンですらあの程度、何か特殊技能がある訳でもない。要らんねんそんな奴ッ。弟子取るにしてももっとマシなのが幾らでも居るわ!!」
ディックはフートが如何に力不足であるのかという点を突いて弟子入りを諦めさせようとする。しかし彼がディックの言葉の中で焦点を当てたのは全く予想外の所であった。
「特殊技能ですか………あ、ありますッ! 特殊技能あります!!」
「え?」
想定外の返答を受けたディックは呆気に取られ、言葉に詰まってしまう。
「……………一応、言ってみい」
「根性があります」
「馬鹿野郎ッ! そんなもん特殊技能とは言わへんねん! もっとこう……司法試験合格とか総合無線通信士の資格持ってるとかそういうのを言っとるんや!! そもそも本当に根性がある奴が自分で根性があります何て言うかッ。能ある鷹は本当に爪を隠すもんやで」
「なら証明しますッ!!」
流石に此処までボロクソ言えば諦めると思っていた。しかしフートは頭上から降り注ぐ罵倒に僅かすら気後れする事無く食い下がってくる。
それどころか更に瞳に宿る必死さが増し、ディックの足に絡み付けていた腕を一層強く締めた。
「今から弟子入りを認めて貰えるまで、オレは絶対にこの腕を放しませんッ!! 殴られたって蹴られたって、耳を削ぎ落とされようとも絶対にッ!!」
足に伝わって来る鬱血する程の圧力から、フートが本気で離れまいと抱きついてきている事は分かった。そして今までの問答からこの青年が言葉で制せる程簡単な相手ではないという事も。
こうなるともう残っている選択肢はただ一つ、彼が望む通り力尽くで押しのけるのみ。
流石に昨日知り合ったばかり恩ある相手、しかも子供に暴力を振るう事は心が痛む。しかしこのまま受け入れてしまえば一つの掛け替えのない人生を後戻りできない程破壊する事になる。そう考えれば、この瞬間の心痛など些細な物として呑み込む事が出来た。
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