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オードブル
Ⅱ.流行の発信源と派閥製作のきっかけ
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さて、待ちに待った初登校日です。
心配性の父は難しい顔をしながら、母は笑顔で私の登校を見送ってくれました。
学校には勿論、兄も一緒です。
兄は私の教室まで一緒に行くと言ってくれたのですが教室ぐらい一人で行けるのでそれを断ったら兄にとても悲しい顔をされました。
だって、仕方がないじゃないか。
初登校日って言っても幼稚園児(この世界に幼稚園はないけど)じゃないんだから保護者付きなんて恥ずかしいよ。
私が教室に入ると既に何人かは教室に入り、二~四人までのグループを作って話をしていた。
そこは身分や世界が変わっても同じなんだなとちょっと関心をした。
私が教室に入って自分の席を見つけて足を進めると何故か周りから聞こえていたざわめきが一切聞こえなくなった。
何事だろうと思って周りを見るとみんな私の方を見ていた。
何故?
初めて人が入って来た時に注目を浴びるのは分かるよ。
みんなだって一度くらいは経験したことがあるでしょう。
遅刻して入った教室で全員の視線が向けられるとか。
誰か確認しようと視線が行くのは分かるけど、普通は入って来た人間が誰か分かったら視線って逸らされる物じゃないの?
何で今もずっと見られているんだろうか?
やっぱりあれかな?
家柄かな?
公爵家の人間が入学してきたから?
でも、公爵家って私以外にも居るね。
私の家が侯爵家の中でも特別に突飛しているのは分かるよ。
王家とも縁戚関係があったりするしね。
でも、だからってこんなに視線を集めなくてもよくない。
と、レイラは思っていたのだがそれは半分正解で、半分は間違いなのだ。
「すっげぇ、可愛い」
「俺、始めて見た」
「宰相が溺愛しているカーティス家の宝玉だろ」
「お近づきになりてぇ」
「ちょっと、あの子の肌見た?」
「さすがはカーティス家ね。私達と使っている物が違うのよ。
だからあんなにすべすべの肌なのね」
「本当に、触らなくても分かる持ち艶肌じゃない」
「羨ましい」
と、いうのが視線を集める一番の原因だった。
だが、今まで兄とデューク、それに父親や伯父、従兄などの身内以外の男と会ったことがないレイラがそのことに気づくはずもなかった。
みんながレイラに注目を集めている中、一人「へぇ~、あの子がレイラ・カーティスなんだ」と仄暗い笑みを浮かべている女子生徒が居た。
勿論、そんな彼女の存在に気づく者は誰一人居なかった。
******************
最初の登校日は自己紹介と簡単な説明、学校の案内などで終わった。
次の日から授業となった。
「カーティス公爵令嬢のペンとインク瓶、とても可愛らしいですわね」
そう、声をかけて来てくれたのは私の隣の席に座るマルべリア・ハイネ伯爵令嬢だ。
おっとりとした話し方がとても印象的な令嬢だ。
本来、下位の令嬢が上位の令嬢に話しかけるのはマナー違反になるがこれは学校内では免除される。
でなければ、色々と不都合が生じるからだ。
勿論、同じクラスメイトでも社交の場に出れば其れが適用されるので対応の仕方や態度がガラッと変わるが。
「ありがとうございます。
私もとても気に入っているのです」
「どこのお店の物ですか?」
と、聞いて来たのはマルべリアとは反対の私の隣に座るララ・コンバッド侯爵令嬢だ。
「王都の表参道にある店ですわ」
「お高いのですか?」
と、聞いて来たのは子爵家の令嬢だ。
子爵家だと上流貴族程財が豊かではないので色々と気遣うこともあるのだろう。
普通の令嬢なら気にしない値段のことを聞いて来た。
それを嘲笑する者も居たが、中には真剣に聞き耳を立てている者も居た。
「いいえ。これは庶民向けに作られているのでお値段はそんなに高くないのですわ」
「そうなんですか!?」とは、聞いていた全員が驚いた。
会話には参加しなくとも聞き耳を立てていたものもとても驚いていた。
「とても凝った細工に見えますが?」
「ええ。けれど、店主は身分に関わらず手にして欲しいと思っておりますので」
「おかなし店主がいたものですわね。
低俗な庶民に文字の読み書きができるとは思えませんわ。
そんな庶民にそんな物が必要になるとは思えませんが?」
と、小ばかにしたように言ったのは私と同じ公爵家のジュリア・ミレイユだ。
「文字が書けない者ばかりではありませんわ。
ミレイユ公爵令嬢は庶民をバカにしますが私達が使っているこの机や椅子、学校の機材などを作っているのはその庶民です。
それにこれは文字を書くだけの道具ではなくインテリアとしても会求める者がいるそうですわ」
私がそう言うと周りの令嬢が食いついて来た。
「確かにこれは飾るだけでもいいですわね」
「ええ。部屋がよりお洒落になりますわ」
「私もお父様に買ってもらおうかしら」
「私も」
「私も」
周りの人間が賛同していくのがそんなに気に食わないのかジュリアはフンッと鼻で笑って大げさなぐらい侮蔑と呆れを込めて言った。
「貴族ともあろうものが下賎の民の者を欲するなんて品性を疑いますわ」
「あら、ではお互い様ですわね」
「何ですって!!」
私とジュリアがぶつけた視線には火花が飛び散った。
周りの人間はそれをハラハラしながら見ている。
お互い、公爵家同士の闘いだ。
そして周りにいるのは全員、貴族の出身
瞬時にどちらの側につくのがいいかを計算してこれからの人付き合いを考えなくてはいけない。
派閥とはこうしてできるのかもしれない。
ついでに流行も。
期せずして、彼女、レイアが持っていたペンとインク瓶は貴族の中でも大流行をすることとなった。
これはレイラ・カーティスという一人の令嬢の影響力の大きさが物を言ったのかもしれない。
心配性の父は難しい顔をしながら、母は笑顔で私の登校を見送ってくれました。
学校には勿論、兄も一緒です。
兄は私の教室まで一緒に行くと言ってくれたのですが教室ぐらい一人で行けるのでそれを断ったら兄にとても悲しい顔をされました。
だって、仕方がないじゃないか。
初登校日って言っても幼稚園児(この世界に幼稚園はないけど)じゃないんだから保護者付きなんて恥ずかしいよ。
私が教室に入ると既に何人かは教室に入り、二~四人までのグループを作って話をしていた。
そこは身分や世界が変わっても同じなんだなとちょっと関心をした。
私が教室に入って自分の席を見つけて足を進めると何故か周りから聞こえていたざわめきが一切聞こえなくなった。
何事だろうと思って周りを見るとみんな私の方を見ていた。
何故?
初めて人が入って来た時に注目を浴びるのは分かるよ。
みんなだって一度くらいは経験したことがあるでしょう。
遅刻して入った教室で全員の視線が向けられるとか。
誰か確認しようと視線が行くのは分かるけど、普通は入って来た人間が誰か分かったら視線って逸らされる物じゃないの?
何で今もずっと見られているんだろうか?
やっぱりあれかな?
家柄かな?
公爵家の人間が入学してきたから?
でも、公爵家って私以外にも居るね。
私の家が侯爵家の中でも特別に突飛しているのは分かるよ。
王家とも縁戚関係があったりするしね。
でも、だからってこんなに視線を集めなくてもよくない。
と、レイラは思っていたのだがそれは半分正解で、半分は間違いなのだ。
「すっげぇ、可愛い」
「俺、始めて見た」
「宰相が溺愛しているカーティス家の宝玉だろ」
「お近づきになりてぇ」
「ちょっと、あの子の肌見た?」
「さすがはカーティス家ね。私達と使っている物が違うのよ。
だからあんなにすべすべの肌なのね」
「本当に、触らなくても分かる持ち艶肌じゃない」
「羨ましい」
と、いうのが視線を集める一番の原因だった。
だが、今まで兄とデューク、それに父親や伯父、従兄などの身内以外の男と会ったことがないレイラがそのことに気づくはずもなかった。
みんながレイラに注目を集めている中、一人「へぇ~、あの子がレイラ・カーティスなんだ」と仄暗い笑みを浮かべている女子生徒が居た。
勿論、そんな彼女の存在に気づく者は誰一人居なかった。
******************
最初の登校日は自己紹介と簡単な説明、学校の案内などで終わった。
次の日から授業となった。
「カーティス公爵令嬢のペンとインク瓶、とても可愛らしいですわね」
そう、声をかけて来てくれたのは私の隣の席に座るマルべリア・ハイネ伯爵令嬢だ。
おっとりとした話し方がとても印象的な令嬢だ。
本来、下位の令嬢が上位の令嬢に話しかけるのはマナー違反になるがこれは学校内では免除される。
でなければ、色々と不都合が生じるからだ。
勿論、同じクラスメイトでも社交の場に出れば其れが適用されるので対応の仕方や態度がガラッと変わるが。
「ありがとうございます。
私もとても気に入っているのです」
「どこのお店の物ですか?」
と、聞いて来たのはマルべリアとは反対の私の隣に座るララ・コンバッド侯爵令嬢だ。
「王都の表参道にある店ですわ」
「お高いのですか?」
と、聞いて来たのは子爵家の令嬢だ。
子爵家だと上流貴族程財が豊かではないので色々と気遣うこともあるのだろう。
普通の令嬢なら気にしない値段のことを聞いて来た。
それを嘲笑する者も居たが、中には真剣に聞き耳を立てている者も居た。
「いいえ。これは庶民向けに作られているのでお値段はそんなに高くないのですわ」
「そうなんですか!?」とは、聞いていた全員が驚いた。
会話には参加しなくとも聞き耳を立てていたものもとても驚いていた。
「とても凝った細工に見えますが?」
「ええ。けれど、店主は身分に関わらず手にして欲しいと思っておりますので」
「おかなし店主がいたものですわね。
低俗な庶民に文字の読み書きができるとは思えませんわ。
そんな庶民にそんな物が必要になるとは思えませんが?」
と、小ばかにしたように言ったのは私と同じ公爵家のジュリア・ミレイユだ。
「文字が書けない者ばかりではありませんわ。
ミレイユ公爵令嬢は庶民をバカにしますが私達が使っているこの机や椅子、学校の機材などを作っているのはその庶民です。
それにこれは文字を書くだけの道具ではなくインテリアとしても会求める者がいるそうですわ」
私がそう言うと周りの令嬢が食いついて来た。
「確かにこれは飾るだけでもいいですわね」
「ええ。部屋がよりお洒落になりますわ」
「私もお父様に買ってもらおうかしら」
「私も」
「私も」
周りの人間が賛同していくのがそんなに気に食わないのかジュリアはフンッと鼻で笑って大げさなぐらい侮蔑と呆れを込めて言った。
「貴族ともあろうものが下賎の民の者を欲するなんて品性を疑いますわ」
「あら、ではお互い様ですわね」
「何ですって!!」
私とジュリアがぶつけた視線には火花が飛び散った。
周りの人間はそれをハラハラしながら見ている。
お互い、公爵家同士の闘いだ。
そして周りにいるのは全員、貴族の出身
瞬時にどちらの側につくのがいいかを計算してこれからの人付き合いを考えなくてはいけない。
派閥とはこうしてできるのかもしれない。
ついでに流行も。
期せずして、彼女、レイアが持っていたペンとインク瓶は貴族の中でも大流行をすることとなった。
これはレイラ・カーティスという一人の令嬢の影響力の大きさが物を言ったのかもしれない。
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