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スカーレット・ミレイユ。炎なような赤い髪と光の加減で色が変わって見える金緑の瞳。乳白色の肌。
母は幼い頃に病死。兄弟はなく、父との二人暮らし。父は公爵の位を陛下から賜っているので使用人がたくさんいる。
ただ父は野心のない人で、社交界のような華やかな場が苦手。
王宮での役職は資料整理という窓際。けれど歴史ある名家になるので上級貴族と呼ばれる分類に入る。
領民も家も栄えていて、贅沢な暮らしができている。
父のなせる技?いいえ違います。
気の弱い父は王宮の隅っこで資料整理するのがお似合い。ならなぜ贅沢な暮らしができるのか。
それは私が稼いでいるからです。
私が生まれたイルマーン国は男尊女卑は他国に比べてない。
少数ではあるが女性が騎士を目指したり、家を継ぐことも可能だ。
イルマーンでは歴史を遡れば女王が何人か存在している。そのおかげで働く女性に対する偏見は、全くないわけではないけれど他国に比べて優しい。
だから私が表立って様々な事業をしていても問題ないのです。
けれどそんな私にも問題が一つ発生しました。
「もう一度お願いできるでしょうか、お父様」
私の書斎にある来客用のソファーベッドに申し訳なさそうに座っているのは私の父、ウェルネット。
「王命で第二王子との婚約が決まった」
聞いたのはこれで五回目。何度聞いても答えは変わらない。これは既に決定事項となっている。
第二王子セルフは御年二十四。今だ婚約者もいない。女は十四~十八歳まで男は十六~二十五歳までが結婚の平均年齢だ。
ただ王族なら十八までにだいたい結婚しているし、していなかったとしても婚約者ぐらいはいるものだ。
けれどセルフ殿下は今まで婚約者がいなかった。
その理由は・・・・
「セルフ殿下は商家の娘を囲っていると専らの噂ですが」
さすがに王族が隠しているのか民達には広まってはいないが貴族の間では有名な話だ。
「だから今まで婚約者が決まらなかったのでしょう」
第二王子だから王太子はまずない。今の第一王子はとても優秀な方で、民達にも人気だから。
第二王子である彼は新たに爵位を拝命するか私のように男兄弟のいない家に婿養子になるしかない。まぁ、貴族が増えすぎても困るので基本はどこかの家に婿養子になる。
「王位も継げず、婿養子ができる家。おまけに愛人を許してくれる寛容な人間となると些か無理難題ですわね」
愛されて育つ貴族の娘が自分よりも格下の女に入れあげている男を旦那に迎えたいとは思わない。
王族と繋がりが得られるのは良いが、言い換えればそれしか利益がない。
セルフ殿下は騎士として立派に一人立ちしてはいるが商才があるわけでもないので領や家を栄えさせることはできない。
それに一応は王族だから野心のある家には嫁がされない。だから陛下も散々迷った揚げ句、野心がなく押しに弱い我が父に話が言ったわけだ。
「つまりお父様は私に名ばかりの正妻でいることを望んでおられるのですね」
「いや、そういうわけでは、結果的にそうなってしまったが、でも、あ、いや、ごめん。王命なんだ」
針のむしろ状態で父はしどろもろになりながら答える。最後は蚊の囁くような声になっていた。私の耳にはかろうじて届いたが。
「・・・・王命」
最早拒否権はない。我が家は公爵家だが父に野心がないので権力とは無縁。王家に逆らえる力はない。
陛下もそれが分かっているから父のところへ行ったのだろう。
私は出そうなる地底よりも深い溜め息を飲みこんだ。
ぐだくだ言ったところで結果は変わらない。貴族に生まれた以上、家のため、領民のために結婚するのは当然のこと。
「分かりました」
「・・・・すまない、スカーレット」
「・・・・いいえ。貴族に生まれた以上、こういうこともあると覚悟しておりましたわ」
母は幼い頃に病死。兄弟はなく、父との二人暮らし。父は公爵の位を陛下から賜っているので使用人がたくさんいる。
ただ父は野心のない人で、社交界のような華やかな場が苦手。
王宮での役職は資料整理という窓際。けれど歴史ある名家になるので上級貴族と呼ばれる分類に入る。
領民も家も栄えていて、贅沢な暮らしができている。
父のなせる技?いいえ違います。
気の弱い父は王宮の隅っこで資料整理するのがお似合い。ならなぜ贅沢な暮らしができるのか。
それは私が稼いでいるからです。
私が生まれたイルマーン国は男尊女卑は他国に比べてない。
少数ではあるが女性が騎士を目指したり、家を継ぐことも可能だ。
イルマーンでは歴史を遡れば女王が何人か存在している。そのおかげで働く女性に対する偏見は、全くないわけではないけれど他国に比べて優しい。
だから私が表立って様々な事業をしていても問題ないのです。
けれどそんな私にも問題が一つ発生しました。
「もう一度お願いできるでしょうか、お父様」
私の書斎にある来客用のソファーベッドに申し訳なさそうに座っているのは私の父、ウェルネット。
「王命で第二王子との婚約が決まった」
聞いたのはこれで五回目。何度聞いても答えは変わらない。これは既に決定事項となっている。
第二王子セルフは御年二十四。今だ婚約者もいない。女は十四~十八歳まで男は十六~二十五歳までが結婚の平均年齢だ。
ただ王族なら十八までにだいたい結婚しているし、していなかったとしても婚約者ぐらいはいるものだ。
けれどセルフ殿下は今まで婚約者がいなかった。
その理由は・・・・
「セルフ殿下は商家の娘を囲っていると専らの噂ですが」
さすがに王族が隠しているのか民達には広まってはいないが貴族の間では有名な話だ。
「だから今まで婚約者が決まらなかったのでしょう」
第二王子だから王太子はまずない。今の第一王子はとても優秀な方で、民達にも人気だから。
第二王子である彼は新たに爵位を拝命するか私のように男兄弟のいない家に婿養子になるしかない。まぁ、貴族が増えすぎても困るので基本はどこかの家に婿養子になる。
「王位も継げず、婿養子ができる家。おまけに愛人を許してくれる寛容な人間となると些か無理難題ですわね」
愛されて育つ貴族の娘が自分よりも格下の女に入れあげている男を旦那に迎えたいとは思わない。
王族と繋がりが得られるのは良いが、言い換えればそれしか利益がない。
セルフ殿下は騎士として立派に一人立ちしてはいるが商才があるわけでもないので領や家を栄えさせることはできない。
それに一応は王族だから野心のある家には嫁がされない。だから陛下も散々迷った揚げ句、野心がなく押しに弱い我が父に話が言ったわけだ。
「つまりお父様は私に名ばかりの正妻でいることを望んでおられるのですね」
「いや、そういうわけでは、結果的にそうなってしまったが、でも、あ、いや、ごめん。王命なんだ」
針のむしろ状態で父はしどろもろになりながら答える。最後は蚊の囁くような声になっていた。私の耳にはかろうじて届いたが。
「・・・・王命」
最早拒否権はない。我が家は公爵家だが父に野心がないので権力とは無縁。王家に逆らえる力はない。
陛下もそれが分かっているから父のところへ行ったのだろう。
私は出そうなる地底よりも深い溜め息を飲みこんだ。
ぐだくだ言ったところで結果は変わらない。貴族に生まれた以上、家のため、領民のために結婚するのは当然のこと。
「分かりました」
「・・・・すまない、スカーレット」
「・・・・いいえ。貴族に生まれた以上、こういうこともあると覚悟しておりましたわ」
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