どうぞお好きに

音無砂月

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セルフ殿下が連れてきた愛人、シャーベットの体が弱いというのは事実のようだ。
彼女は基本的にベッドの上で過ごしている。セルフ殿下はそんなシャーベットを哀れんでいるのかつきっきりで看病?というか側に居て話しているだけだが。
シャーベットには侍女を一人つけている。
「お嬢様」
「何、セバスチャン」
執務室で仕事をしている私のところに執事のセバスチャンがやや疲れた顔で入ってきた。
「シャーベット様につけていた侍女のミリアーナですが、解雇されました」
ぽとり。私の手からペンが転がり落ちた。
拾うことのできない私に代わりダリウスが床に落ちたペンを拾い、机の上に置いてくれる。
「ありがとう、ダリウス。セバスチャン、ミリアーナはどうしてるの?」
「侍女長が匿っております」
「そう」
良かった。出ていかれなくて。ミリアーナはまだ若いけれどとても気が利いて優秀な侍女だ。
私が経営している孤児院の出身で、彼女が六歳の時に私が引き取った。
侍女長の推薦でミリアーナを次の侍女長にということになっている。
今回、彼女をシャーベットにつけたのは侍女長ともなればいろんな人の相手をしないといけない場合がある。中にはとても面倒で厄介な相手も。
だからミリアーナをつけて侍女長にはその補佐を頼んだ。
「原因は何?」
「それが・・・・」
セバスチャンが言いよどんだ。いつもきっぱり言うこの男にしては珍しい。
「ミリアーナに限って失態はないでしょ?」
「それはもちろんです」
間髪入れずにセバスチャンは答えた。
「なら何だと言うの?」
「ミリアーナがセルフ殿下に、その、色目を使ったと」
「は?」
私は口を開けたまま閉じることができなくなった。令嬢としてははしたないことだが致し方ない。
だってそれぐらい予想外の答えだったのだ。
「もちろん、ミリアーナに限ってそんな事実はございません。ミリアーナ本人も否定しています」
セバスチャンは必死にミリアーナを擁護した。
「セルフ殿下がミリアーナに言い寄ったということはないの?」
絶世の美女というわけではないが、ミリアーナはそれなりに可愛い顔をしている。おまけに胸も大きい。男受けはするだろう。それがシャーベットにとっては気に入らないという可能性もある。
「言い寄ったという目撃情報は確認できていませんが、セルフ殿下が何度かミリアーナの視線を剥けているというものならございます」
「それでは決定権に欠けるわ。たまたま視線がそっちに向いていただけかもしれないし」
報告したセバスチャンがそのことは一番分かっているのだろう。
報告内容に躊躇いが見受けられる。つまりそれぐらい不確かな情報なのだ。
「良いわ。私が直接シャーベット嬢に聞くから。それとミリアーナは望み通りシャーベット嬢から外すわ」
「てば代わりの者を?」
「つけない」
それではきりがない。
ああいう手合いは誰でも兎に角気に入らないのだ。
それにここの主人は私。全ての決定権は私にある。それを分からせてやる。
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