11 / 31
1 1
しおりを挟む
王妃となって二回。公の場に出る。
最初の一回は結婚式だ。その後の披露宴以降、姿を見せない王妃である私に周囲の目が向く。
「あれが、オレストから嫁いで来た王妃、か」
「不美人だと聞いたが」
「とても妖艶だ。漆黒の髪と瞳が更にそれを際立たせるな」
「ああ」
と、国内の貴族達は話しており。
対する国外の貴族は。
「あれがオレスト国の王女か。第一、第二王子に溺愛されているとか」
「オレスト国の国王もただ一人の王女を目に入れても痛くないほど可愛がっているとか」
「ならば、後ろ楯はかなり大きいと言えるな。おまけにあれほどの美人。
蔑ろにするクレバー陛下は気でも触れているのか」
「囲っているのが後ろ楯も教養もない平民とくればそうとしか考えられないな」
「公の場でも恥ずかしげもなく連れ歩いていたな。確かに可愛らしい分類には入るが、少々」
「服装や言動がかなり幼いな。まぁ、若い連中はああいう娘に庇護欲をそそられてころっといくんだろうな」
「若い分、女に免疫もないだろうからな」
「しかし、オレストとガルディアの婚約話を聞いたときは逃した魚が大きすぎてショックだったが」
「あの様子を見る限り、我らにもまだチャンスがありそうだ」
と、話していた。
対する国内及び国外の令嬢達は。
「たかが平民風情に陛下の寵愛を取られた情けない王妃様のお越しですわね」
「私、王妃様を初めて見ましたが、かなりの美人ですわね」
「クスッ。それなのに平民に陛下を寝取られるなんて」
「王妃様が余程下手なのか、平民の方が手練手管に長けていたのか。厭らしいですわね。さすがは平民。やり方が下品すぎて高貴なる身である私達には想像もできませんわね」
「あら、まだ分かりませんわよ。王妃様の体に寝取られる原因になるだけの欠陥があるのかも」
「まぁ!もし、それが本当ならお痛わしいことですわね。クスリっ」
と、扇で口元を隠しながら好き放題話していた。
私の耳には入ってこないが視線をちらちら寄越してクスクス笑われているのは気づいているので悪口を言われていることぐらいは分かる。
何も知らない馬鹿な令嬢達は王女や王妃の座に憧れ、嫉妬する。
だから何か一つでも突っつける物があれば容赦なく攻撃してくるだろう。
傷口に塩を塗るだけでは足らず、岩塩を用いてくることぐらいは笑顔でやるだろう。
これは、オレストでも同じだった。
だから、慣れている。でも、何も感じないわけではない。
私は隣に視線を向ければ、取り繕うことを知らないのか、陛下は不機嫌さを隠さずに客の挨拶を聞いている。
それを見て、私は気づかれないように溜息をついた。
「おい、お前。ダンスは踊れるのか?」
この馬鹿。自分の妻を平民と勘違いしているのではないか。
「お忘れかもしれませんが私はこれでも王族に嫁げるだけの地位にいます。オレスト王国第一王女がダンスが踊れないなのど、常識的に有り得ませんわ」
こんな屈辱的な質問は初めてされた。
「そうか。お前は国では溺愛されているとか。どこまで自由奔放、我が儘に育てられたか分からないからな。確認しただけだ」
「・・・・陛下は、私に教養がないと思っていらっしゃるのですか?」
「間違ってはいないだろう。現にお前の兄達は主催者である私の所に挨拶にも来ないぞ」
というか、さっきから探しているのだけど姿を見かけない。
本当にどこに居るのかしら。
「必要ならします。それよりもダンスの時間ですわ」
最初は王族が踊り、それが終わったら貴族達が踊るのだ。
私は暗に『あなたにはその価値がないと兄が判断した』と言って、陛下にエスコートされながらダンスホールの真ん中へ行った。
「っ」
陛下は腐っても王族。
ダンスはかなり上手でとても踊りやすかった。
けれど握られた手に力が入りすぎていてかなり痛い。
わざとかどうかは分からないが、女性に対する気づかないができないなと心の中でため息をつきながら私はこの苦痛な時間を何とかやり過ごした。
最初の一回は結婚式だ。その後の披露宴以降、姿を見せない王妃である私に周囲の目が向く。
「あれが、オレストから嫁いで来た王妃、か」
「不美人だと聞いたが」
「とても妖艶だ。漆黒の髪と瞳が更にそれを際立たせるな」
「ああ」
と、国内の貴族達は話しており。
対する国外の貴族は。
「あれがオレスト国の王女か。第一、第二王子に溺愛されているとか」
「オレスト国の国王もただ一人の王女を目に入れても痛くないほど可愛がっているとか」
「ならば、後ろ楯はかなり大きいと言えるな。おまけにあれほどの美人。
蔑ろにするクレバー陛下は気でも触れているのか」
「囲っているのが後ろ楯も教養もない平民とくればそうとしか考えられないな」
「公の場でも恥ずかしげもなく連れ歩いていたな。確かに可愛らしい分類には入るが、少々」
「服装や言動がかなり幼いな。まぁ、若い連中はああいう娘に庇護欲をそそられてころっといくんだろうな」
「若い分、女に免疫もないだろうからな」
「しかし、オレストとガルディアの婚約話を聞いたときは逃した魚が大きすぎてショックだったが」
「あの様子を見る限り、我らにもまだチャンスがありそうだ」
と、話していた。
対する国内及び国外の令嬢達は。
「たかが平民風情に陛下の寵愛を取られた情けない王妃様のお越しですわね」
「私、王妃様を初めて見ましたが、かなりの美人ですわね」
「クスッ。それなのに平民に陛下を寝取られるなんて」
「王妃様が余程下手なのか、平民の方が手練手管に長けていたのか。厭らしいですわね。さすがは平民。やり方が下品すぎて高貴なる身である私達には想像もできませんわね」
「あら、まだ分かりませんわよ。王妃様の体に寝取られる原因になるだけの欠陥があるのかも」
「まぁ!もし、それが本当ならお痛わしいことですわね。クスリっ」
と、扇で口元を隠しながら好き放題話していた。
私の耳には入ってこないが視線をちらちら寄越してクスクス笑われているのは気づいているので悪口を言われていることぐらいは分かる。
何も知らない馬鹿な令嬢達は王女や王妃の座に憧れ、嫉妬する。
だから何か一つでも突っつける物があれば容赦なく攻撃してくるだろう。
傷口に塩を塗るだけでは足らず、岩塩を用いてくることぐらいは笑顔でやるだろう。
これは、オレストでも同じだった。
だから、慣れている。でも、何も感じないわけではない。
私は隣に視線を向ければ、取り繕うことを知らないのか、陛下は不機嫌さを隠さずに客の挨拶を聞いている。
それを見て、私は気づかれないように溜息をついた。
「おい、お前。ダンスは踊れるのか?」
この馬鹿。自分の妻を平民と勘違いしているのではないか。
「お忘れかもしれませんが私はこれでも王族に嫁げるだけの地位にいます。オレスト王国第一王女がダンスが踊れないなのど、常識的に有り得ませんわ」
こんな屈辱的な質問は初めてされた。
「そうか。お前は国では溺愛されているとか。どこまで自由奔放、我が儘に育てられたか分からないからな。確認しただけだ」
「・・・・陛下は、私に教養がないと思っていらっしゃるのですか?」
「間違ってはいないだろう。現にお前の兄達は主催者である私の所に挨拶にも来ないぞ」
というか、さっきから探しているのだけど姿を見かけない。
本当にどこに居るのかしら。
「必要ならします。それよりもダンスの時間ですわ」
最初は王族が踊り、それが終わったら貴族達が踊るのだ。
私は暗に『あなたにはその価値がないと兄が判断した』と言って、陛下にエスコートされながらダンスホールの真ん中へ行った。
「っ」
陛下は腐っても王族。
ダンスはかなり上手でとても踊りやすかった。
けれど握られた手に力が入りすぎていてかなり痛い。
わざとかどうかは分からないが、女性に対する気づかないができないなと心の中でため息をつきながら私はこの苦痛な時間を何とかやり過ごした。
51
あなたにおすすめの小説
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】祈りの果て、君を想う
とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。
騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。
そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、
ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。
愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。
沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。
運命ではなく、想いで人を愛するとき。
その愛は、誰のもとに届くのか──
※短編から長編に変更いたしました。
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
婚約破棄されたら、多方面から溺愛されていたことを知りました
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
卒業パーティーの当日、王太子に婚約破棄された公爵令嬢フルール。
それをあっさり受け入れた瞬間から、彼女のモテ期が始まった。
才色兼備で資産家の娘である彼女は、超優良物件にも拘らず、生まれた時から王太子の婚約者ということで今まで男性から敬遠されていたのだ。
思ってもみなかった人達にアプローチされて戸惑うフルールだが……。
※タイトル変更しました。
※カクヨムにも投稿しています。
断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド
「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」
人生をかけて尽くしてきた優しい継母。
彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。
継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。
メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。
牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。
「俺が力を貸してやろうか?」
男は魔法を使って時間を巻き戻した。
「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」
家族を洗脳して手駒にする貴族。
罪なき人々を殺める魔道士。
そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。
人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!
って、あれ?
友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。
悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら???
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〇約十一万文字になる予定です。
もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。
読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。
ある公爵令嬢の死に様
鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。
まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。
だが、彼女は言った。
「私は、死にたくないの。
──悪いけど、付き合ってもらうわよ」
かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。
生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら
自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる