悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月

文字の大きさ
28 / 31

28.側近side④

しおりを挟む
★ジョン・マレフィセント
侯爵家の人間で、宰相補佐官。私の人生は順風満帆の、はずだった。
 「まてぇっ!」
 「くそっ」
 私は慣れない獣道を今までにないぐらいもうスピードで走っていた。
 「何で俺がこんな目に」
 私の後ろを数人のオレストの騎士が追いかけてきていた。
 「私は関係ないのに」
 足がもつれそうになり、何度も転びかけては必死に踏み留まって先へ急ぐ。
 ガサリと前にある茂みから音がした。僅かに揺れた茂みを見て、本能的にヤバいっと思ったが体は思うように動かなかった。
 元来デスクワークオンリーで運動というものをしてこなかったのだ。体力的に限界があった。
 私は前から来たオレストの騎士にあっさりと捕まった。
 「離せよ」
 地面に押さえつけられながらも私は戦意を失わなかった。
 私を見下ろすオレストの騎士を睨み付け、低く唸る声を意識して出した。
 大抵の人間はそこで言葉をつぐむ。
 だが、オレストの騎士は違った。
 凄んでいる私を見ても余裕の笑みすら浮かべている。
 「今ので威嚇したつもりかよ。そんなんじゃあ、痛くも痒くもないぜ、お坊っちゃま」
 私の凄みが利かない人間は初めてだった。
 「な、なんで」
 驚く私にオレストの騎士は嘲笑うようにいい募る。
 「今までの奴らがそれで黙ってきたのは別にお前が怖かったわけじゃない。ただ単にお前に睨まれて、そのバッグにいるクレバーに睨まれるのが怖かっただけだ」
 「恥ずかしい奴」と言って私を取り囲んでいたオレストの騎士はゲラゲラと笑う。
 さすがはあの王妃の母国の人間だ。シャルロッテと違って品が無さすぎる。
 「私は関係ないだろ」
 「あん?」
 私が言うとさっきまで笑っていたやつらは真顔になり私を睨み付けてくる。
 全身で浴びる凶器。これが殺気なのだと分かるには私はあまりにも争い事と無縁だった。
 私は生唾を飲みながら何とか身の潔白を証明しようと頭を働かせた。
 「わ、私は知らなかったんだ。王妃があのような不当な扱いを受けているの。知っていたら、こんなこと許しは」
 別に私が言い出した訳じゃない。
 王妃を幽閉塔になんて。
 陛下が言い出したことだ。食事のことだって全く与えなかった訳じゃない。
 「お前、うざいよ」
 「ぐっ」
 地面に伏せられたままの私をオレストの騎士が蹴り上げる。衝撃で前歯が二本程飛んで行った。だが、オレストの騎士はそれに構わず何度も私に暴力を振るう。
 無関係である善良な帝国の人間を。さすがはオレスト。野蛮人の集まりだ。
 周囲の騎士も止める者は誰も居ない。寧ろ「殺すなよ」とか「俺の分も残しておけ」とか訳の分からないことを言っている。
 頭に膿みでも詰まっているんじゃないかと疑いたくなるぐらいの愚かさだ。
 侯爵家の人間を無実の罪で捉え、このような暴力を振るうなど。
 私はここから逃げ出した暁には絶対にオレストに自分の立場を分からせてやろうとう誓った。
 侯爵家の人間を一介の騎士が手を出す。これは決して許されることではないのだから。

 この時の私はまだ気づいはいなかった。自分を待っている暗雲立ち込める未来があることを。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。

婚約破棄を希望しておりますが、なぜかうまく行きません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のオニキスは大好きな婚約者、ブラインから冷遇されている事を気にして、婚約破棄を決意する。 意気揚々と父親に婚約破棄をお願いするが、あっさり断られるオニキス。それなら本人に、そう思いブラインに婚約破棄の話をするが 「婚約破棄は絶対にしない!」 と怒られてしまった。自分とは目も合わせない、口もろくにきかない、触れもないのに、どうして婚約破棄を承諾してもらえないのか、オニキスは理解に苦しむ。 さらに父親からも叱責され、一度は婚約破棄を諦めたオニキスだったが、前世の記憶を持つと言う伯爵令嬢、クロエに 「あなたは悪役令嬢で、私とブライン様は愛し合っている。いずれ私たちは結婚するのよ」 と聞かされる。やはり自分は愛されていなかったと確信したオニキスは、クロエに頼んでブラインとの穏便な婚約破棄の協力を依頼した。 クロエも悪役令嬢らしくないオニキスにイライラしており、自分に協力するなら、婚約破棄出来る様に協力すると約束する。 強力?な助っ人、クロエの協力を得たオニキスは、クロエの指示のもと、悪役令嬢を目指しつつ婚約破棄を目論むのだった。 一方ブラインは、ある体質のせいで大好きなオニキスに触れる事も顔を見る事も出来ずに悩んでいた。そうとは知らず婚約破棄を目指すオニキスに、ブラインは… 婚約破棄をしたい悪役令嬢?オニキスと、美しい見た目とは裏腹にド変態な王太子ブラインとのラブコメディーです。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

【完結】私の好きな人には、忘れられない人がいる。

Rohdea
恋愛
───あなたには忘れられない人がいる。だから私はー…… 厳しい入学試験を突破したエリートだけが入学出来る王立学校に通っている、元・男爵令嬢で平民のマリエール。 この学校を首席で卒業すると、陛下から一つだけ何でも願い事を叶えてもらえるという夢のようなご褒美がある。 そんな褒美の為に、首席卒業を目指すマリエールの最大のライバルは公爵令息のルカス。 彼とは常に首位争いをする関係だった。 そんなルカスに密かに恋心を抱くマリエール。 だけどこの恋は絶対に叶わない事を知っている。 ────ルカスには、忘れられない人がいるから。 だから、マリエールは今日も、首席卒業目指して勉強に励む。 たった一つの願いを叶えてもらう為に───

処理中です...