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28.側近side④
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★ジョン・マレフィセント
侯爵家の人間で、宰相補佐官。私の人生は順風満帆の、はずだった。
「まてぇっ!」
「くそっ」
私は慣れない獣道を今までにないぐらいもうスピードで走っていた。
「何で俺がこんな目に」
私の後ろを数人のオレストの騎士が追いかけてきていた。
「私は関係ないのに」
足がもつれそうになり、何度も転びかけては必死に踏み留まって先へ急ぐ。
ガサリと前にある茂みから音がした。僅かに揺れた茂みを見て、本能的にヤバいっと思ったが体は思うように動かなかった。
元来デスクワークオンリーで運動というものをしてこなかったのだ。体力的に限界があった。
私は前から来たオレストの騎士にあっさりと捕まった。
「離せよ」
地面に押さえつけられながらも私は戦意を失わなかった。
私を見下ろすオレストの騎士を睨み付け、低く唸る声を意識して出した。
大抵の人間はそこで言葉をつぐむ。
だが、オレストの騎士は違った。
凄んでいる私を見ても余裕の笑みすら浮かべている。
「今ので威嚇したつもりかよ。そんなんじゃあ、痛くも痒くもないぜ、お坊っちゃま」
私の凄みが利かない人間は初めてだった。
「な、なんで」
驚く私にオレストの騎士は嘲笑うようにいい募る。
「今までの奴らがそれで黙ってきたのは別にお前が怖かったわけじゃない。ただ単にお前に睨まれて、そのバッグにいるクレバーに睨まれるのが怖かっただけだ」
「恥ずかしい奴」と言って私を取り囲んでいたオレストの騎士はゲラゲラと笑う。
さすがはあの王妃の母国の人間だ。シャルロッテと違って品が無さすぎる。
「私は関係ないだろ」
「あん?」
私が言うとさっきまで笑っていたやつらは真顔になり私を睨み付けてくる。
全身で浴びる凶器。これが殺気なのだと分かるには私はあまりにも争い事と無縁だった。
私は生唾を飲みながら何とか身の潔白を証明しようと頭を働かせた。
「わ、私は知らなかったんだ。王妃があのような不当な扱いを受けているの。知っていたら、こんなこと許しは」
別に私が言い出した訳じゃない。
王妃を幽閉塔になんて。
陛下が言い出したことだ。食事のことだって全く与えなかった訳じゃない。
「お前、うざいよ」
「ぐっ」
地面に伏せられたままの私をオレストの騎士が蹴り上げる。衝撃で前歯が二本程飛んで行った。だが、オレストの騎士はそれに構わず何度も私に暴力を振るう。
無関係である善良な帝国の人間を。さすがはオレスト。野蛮人の集まりだ。
周囲の騎士も止める者は誰も居ない。寧ろ「殺すなよ」とか「俺の分も残しておけ」とか訳の分からないことを言っている。
頭に膿みでも詰まっているんじゃないかと疑いたくなるぐらいの愚かさだ。
侯爵家の人間を無実の罪で捉え、このような暴力を振るうなど。
私はここから逃げ出した暁には絶対にオレストに自分の立場を分からせてやろうとう誓った。
侯爵家の人間を一介の騎士が手を出す。これは決して許されることではないのだから。
この時の私はまだ気づいはいなかった。自分を待っている暗雲立ち込める未来があることを。
侯爵家の人間で、宰相補佐官。私の人生は順風満帆の、はずだった。
「まてぇっ!」
「くそっ」
私は慣れない獣道を今までにないぐらいもうスピードで走っていた。
「何で俺がこんな目に」
私の後ろを数人のオレストの騎士が追いかけてきていた。
「私は関係ないのに」
足がもつれそうになり、何度も転びかけては必死に踏み留まって先へ急ぐ。
ガサリと前にある茂みから音がした。僅かに揺れた茂みを見て、本能的にヤバいっと思ったが体は思うように動かなかった。
元来デスクワークオンリーで運動というものをしてこなかったのだ。体力的に限界があった。
私は前から来たオレストの騎士にあっさりと捕まった。
「離せよ」
地面に押さえつけられながらも私は戦意を失わなかった。
私を見下ろすオレストの騎士を睨み付け、低く唸る声を意識して出した。
大抵の人間はそこで言葉をつぐむ。
だが、オレストの騎士は違った。
凄んでいる私を見ても余裕の笑みすら浮かべている。
「今ので威嚇したつもりかよ。そんなんじゃあ、痛くも痒くもないぜ、お坊っちゃま」
私の凄みが利かない人間は初めてだった。
「な、なんで」
驚く私にオレストの騎士は嘲笑うようにいい募る。
「今までの奴らがそれで黙ってきたのは別にお前が怖かったわけじゃない。ただ単にお前に睨まれて、そのバッグにいるクレバーに睨まれるのが怖かっただけだ」
「恥ずかしい奴」と言って私を取り囲んでいたオレストの騎士はゲラゲラと笑う。
さすがはあの王妃の母国の人間だ。シャルロッテと違って品が無さすぎる。
「私は関係ないだろ」
「あん?」
私が言うとさっきまで笑っていたやつらは真顔になり私を睨み付けてくる。
全身で浴びる凶器。これが殺気なのだと分かるには私はあまりにも争い事と無縁だった。
私は生唾を飲みながら何とか身の潔白を証明しようと頭を働かせた。
「わ、私は知らなかったんだ。王妃があのような不当な扱いを受けているの。知っていたら、こんなこと許しは」
別に私が言い出した訳じゃない。
王妃を幽閉塔になんて。
陛下が言い出したことだ。食事のことだって全く与えなかった訳じゃない。
「お前、うざいよ」
「ぐっ」
地面に伏せられたままの私をオレストの騎士が蹴り上げる。衝撃で前歯が二本程飛んで行った。だが、オレストの騎士はそれに構わず何度も私に暴力を振るう。
無関係である善良な帝国の人間を。さすがはオレスト。野蛮人の集まりだ。
周囲の騎士も止める者は誰も居ない。寧ろ「殺すなよ」とか「俺の分も残しておけ」とか訳の分からないことを言っている。
頭に膿みでも詰まっているんじゃないかと疑いたくなるぐらいの愚かさだ。
侯爵家の人間を無実の罪で捉え、このような暴力を振るうなど。
私はここから逃げ出した暁には絶対にオレストに自分の立場を分からせてやろうとう誓った。
侯爵家の人間を一介の騎士が手を出す。これは決して許されることではないのだから。
この時の私はまだ気づいはいなかった。自分を待っている暗雲立ち込める未来があることを。
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