【完結】火を吐く土の国の王子は、塔から来た調査官に灼熱の愛をそそぐ

月田朋

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9、続・変幻

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 濃厚な甘い香りとぬくもり。手を伸ばせば、みずみずしいはなびらのひやりとした感触。
 風景は一変し、視界のすべてが白い花となっていた。
 果たして自分はどうにかなってしまったのかと思ったが、ヨミ王子の呼吸を身体全体で感じており、まぐわってそのまま気を失ってしまったのだとおぼろげな記憶が戻る。
 トウヤはヨミ王子の胸の上にうつぶせて、気を失ってしまっていたようだった。
 白い花は、二人のいる空間を包みこむように咲き乱れていた。それは狭く、繭の中に閉じこめられているかのようだ。
 不思議なことに、あんなに激しい性交をして疲労や痛みがまるでない。
 トウヤは王子の肌から身を離そうとした。と、思わず「ぅ……ん……」と甘い吐息を漏らしてしまう。
 まさか、まだ繋がっていた。挿入したまま気を失ってしまっていたとは。
 トウヤは突然我に返った。
 あろうことか自分からねだり、欲しがり、しかけて、思い通りにならないとわかると駄々をこね、暴れて泣いて(おかげで大量の魚を発生させ天井に穴をあけ)、無事欲しいものをもらい……。
 一連のことがよみがえると、ヨミ王子の寝顔に罪悪感を感じた。
 何事もなかったことにはできないにしても、今はとにかく気づかれないようにそっと抜いて……と、尻を浮かそうとするが、まるで自分の内部が嫌がるようにぎゅう、と締まった。
「~~……っぅ、……ん」
 中が、身体が、まだ欲しいといって、ききわけがない。
 ぬるぬるしたものが胎にふんだんにあり、ぬるりずるりとヨミ王子のものを包むように締め上げはじめる。
 そのせいで王子が目を覚ましてしまった。目が合って、お互い何か言いかける。
 王子も、すぐさま身を起こそうとして、動いた。トウヤも腰を浮かそうとする。それがよくなかった。
「あ、……っ、ぅ、……、ぅ」
 バランスをくずし、トウヤは王子の上で勢いよく尻もちをつくようなかたちとなり、ずくり、とその杭を自らの深い場所に、強く打ちこむ。
「くッ……っ」
 これには、ヨミ王子もたまったものではなく、強すぎる刺激に声をもらす。
 トウヤがいやいやをするように首を振ると、わかっている、というようにヨミ王子はうなずく。
 二人で協力しながら体勢をたてなおし、極力刺激をひろわないように離れようとするが、なるべく身体が触れ合わないようにと思うあまりに、花に囲まれた狭い空間で自由がきかないせいもあり、ぎくしゃくとなって、またもや深く繋がってしまう。
 繋がったまま花の褥に倒れこむ。
 こんなにも中がずるずるなのだから、すぐ抜けてもおかしくないのに、抜こうとするとぎゅうと締まって抜けなくなるのだから、思い通りにならない自分の身体を恨みたくなる。
 そしてその都度、狂おしいほどの快楽が襲ってくるのだからどうしようもない。
 自分の意志ではないと何度もトウヤは首を横にふり、わかっているとヨミ王子は縦に振る。なんとか二人で協力して身を離そうと目で会話するが、無駄な努力だった。
 無言のままどちらともなく口を吸いあい、腕をまわし再び狂おしくまぐわう。
 トウヤは身体の向きをかえた。後ろからさらに強くしてほしくて、してもらいたくて、尻を突き出し誘い導く。ヨミ王子はトウヤの望みを叶え、己の分身を勢いよくねじこんだ。
 トウヤは声をあげ、花の中に顔を埋めると、蜜が口の中に入った。その蜜はさらりとしており、トウヤの唾液と甘くまざりあった。

 それが数時間なのか、数日なのか、それともたったの数分のことなのか、時間の経過がわからない。そしてわからないと感じはじめてからもだいぶ時が経った。
 何度も離れようと試みたが、毎回努力のかいなく快楽にのみこまれてしまい、そうなったが最後、気を失うまで腰をふり、自他の境界なくどろどろに没頭してしまう。
 やがて意識が遠のき、またどちらともなく覚醒し、幾分冷静さを取り戻し、離れようとし……。
 こんなことを繰り返していれば、常人であれば体力を消耗してしまうはずだ。なのにむしろ、精気があふれている。
 それは王子も同じであるようだった。これほどまで執拗に繰り返し交わっても、衰えるどころかますます力が満ちてくる。
 トウヤは王子の腹の上で腰をくねらせながら、普通ならどちらかが息絶えてもおかしくないと頭のすみで考えていた。
 自分も王子も、無限に同じことを繰り返してしてもまだ漲る。
 花におおわれた狭い空間では、お互いしか目に入るものがない。黒い目をした魅力的な男が、たまらなそうな目でなめまわすように自分を見上げている。そんな目で見られると、どうしても昂って、出したり入れたりを、よりみだらにみせつけるような角度に変えて煽りたくなる。
 黒い目? 
 目が金赤ではない。
(……っ、はなし、はなしをいたしましょう)
「……そう、しよう」
 吐息と吐息の間に、どうやったらこれを止められるのかと話し合った。王子はトウヤの腰の動きを制しつつ、火吐き竜の性交はだいたい相手が死ぬまでやるのだと言った。
 それで理解した。通常は衰弱するなり死ぬなりで性交に終わりがくるのだ。
 まわりで咲き乱れていた花はいつのまにか実をつけている。
「いっそのこと斬ってしまっては、どうだろうか」
 突然王子が言った。
(なんてことを……!)
 トウヤがせつなそうに自分の腹をなでる。そこには深々と王子のものがある。
「く……」
 王子が苦しそうにする。
「そのような顔をされては、ますます……」
(斬ってでもわたしと離れたいと言うからです)
 自分でも何を言っているのかわからない。さっそくトウヤの目から小さな魚が一匹こぼれだ。
 王子はあわてて目元に口づけをする。
 どこから来たのか鳥やさまざまな動物たちが、果実を食べにやってきている。
「かりそめに言ってみたまで。できることなら、このままあなたの中にいたい」
(それは本当にそのような……)
 目の前の熟れた果実を、王子はトウヤに食べさせた。果汁が垂れて、胸をつたうのを舐めあげると、もう会話することは困難だった。
 動物たちがどれほど騒ぎたてても、お互いのことしか目にも耳にも入らなかった。
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