α、β、Ωで結婚したら無敵だった

月田朋

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4、そうなったのには理由がある

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 今すぐ助けてやりたいと思いながら、ドア一枚隔てた先から漏れだす強烈なフェロモンにくらくらする。はずしていたフィルタグラスをあわててつけた。
「あんた連れ? いい匂いさせているΩと、美人のβ。二人を乗りこなしてるなんて豪勢だな。お嬢ちゃんたちのどっちか一人でもいいから俺らに譲ってくんない?」
 ライダースジャケットが鳥飼の肩に手をかけた。その手を強く振り払った。
 男が鳥飼の胸倉をつかもうとした。
 考えるより先に身体が動いた。
 絡んできた男を気づけば地面にねじふせていた。その時相手の指にはじかれて、鳥飼のフィルタグラスが飛んだ。体勢を整えようとした際、誤って自分でそれを踏み割ってしまう。鳥飼は舌打ちをした。
「てめっ、この……」
 男がイキった様子で、反撃しようと鳥飼を睨んできたが、顔をしかめる威嚇の表情で睨み返した。男はその瞳を見たとたん、黙った。
 相手が一気に脱力してゆく様子を冷めた視線で見届ける。後じさり、腰がぬけてしまったように、尻もちをついている。
 α同士は目の色で互いの優劣を把握することが可能だった。男性女性かかわらず、αとαが本気で真正面からやりあえばどちらかが死ぬか致命傷を負ってしまう。勝っても負けても両者にメリットはない。
 無用な血が流れるのを避けるため、戦わずして勝敗が決まる仕組みが遺伝子にくみこまれている。α特有の生存戦略だった。
 一番目立っていたその男が群れのリーダーだったようで、男の様子を見て他の男たちも急速に勢いをなくしてゆく。
「……くそっ、てめえのメスくらいちゃんと管理しろ!」
 去り際に捨て台詞を残して全員がバイクで発進してしまうと、誰もいなくなった。改めてドアの前に立つ。それだけでぞわぞわした。甘い香りが強くなっている気がする。逃げたくなるがなんとか踏みとどまってノックした。
「わたし以外もう誰もいません、開けてください」
「……」

 怯えているのかそれとも中で何か起きたのか、返事がない。これ以上一秒も待てない。
「今から無理やり開けます。ドアから離れてください。……怖がらないで」
 緊急事態だ。あとで施設管理者に謝罪と賠償をすればいいと判断し、スライドドアの取っ手部分を蹴り上げる。数度の蹴りでロックが破壊された。
 ドアを開けると、トイレのすみでイオが流助の華奢な身体を守るよう抱きしめていて、怯えた顔でこちらを見る。目が真っ赤になっている。
「……遅い、よ」
 イオが口を開く。
「……俺が全部悪いの、ごめ……」
 流助がとても小さな声でつぶやく。
 ドライブ中ずっとはしゃいでいて、先ほどまで元気よく展望台に向かって走りだしていたというのに、まったく見る影もなかった。
 鳥飼は先ほどもみ合った時に、フィルタグラスが破損した。何も隔てず二人をまともに見ることになった。息があがりこめかみがキン、とする。
 直後、自分の脳内にイメージが勝手に浮かんだ。
 イオと流助、いたいけな二人を壁に押しつけて後ろから順番に犯す。抵抗して泣き叫んでも無理やりねじこむ。そんな映像が、自分の意思とは無関係に現れた。
 流助は、濃い匂いを身体中からたちのぼらせている。イオはその橙ごと抱きしめている。影響を受けないわけがない。βもαほどではないが、Ωのフェロモンと無関係ではいられないのだから。
 ひょっとしてイオは、鳥飼のペニスが欲しくて欲しくてたまらないんじゃないだろうか。
 そんな根拠のない思考を振り払う。性欲が見せる勝手な幻影だ。事実とは違う。
 どんどん膨れ上がる欲望を、なんとか力づくで理性という狭い場所におしこめた。だが時間の問題だ。いつか爆発する。自分ではどうしようもなくなる。
 己の渇きに抗っても、衝動が暴れだすまであと数秒といったところだった。
「……これが、Ωのヒート、なの……?」
「……ごめんなさい……ごめんなさい……ぜんぶ俺が悪いんだ……くすり、のんだから、すぐ、効くとおもうから、」
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