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6、初めての終わり
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逆にそういう人の方が、結婚を大切にするかもしれない。父親と母親も完璧からはほど遠いし、しょっちゅうケンカしているが、結婚をなんとか続けている。
相手がどうとかいう前に、Ωである流助をその人が受け入れてくれるかの方が大きな問題だ。マッチングサービスは紹介をしてくれるだけで、相手が嫌なら断ることができる。そうなれば即終了だ。次のチャンスはない。
流助はもやもやを打ち消すように無理やり目を閉じた。考えれば考えるほど断られる可能性の方が大きいように思えてならない。相手が流助を見たとたん、ぎょっとしたり嫌な顔をする。そんな態度をとられたら、はたして自分は平気な顔をしていられるだろうか。
その夜は重圧に耐えかね、逆に、ぐっすり眠ってしまった。
次の日、覚悟を決めて挑んだ面接の相手は、流助の想像をはるかに超えていた。
一人は大人で大きくて、強面。サングラスをかけた人だった。一人は細長くて、かっこいい服を着て、これまで実際に流助が見たことのある人の中で一番きれいな姿かたちをしていた。
「三、人、婚……?!」
「はい、そういうことです」
驚きを予測していたコーディネーターが、よどみない口調で説明をはじめる。しかし流助の耳にはまるではいってこない。
自分と相性のあう相手が世界に一人じゃなくて、二人。
両方まともな感じの、いや、かなりレベルの高い大人の男性だ。
これはダメだ。終わった。
流助は言葉をなくし、口の中の肉を噛んだ。
多少へんてこな人なら、Ωというハンディキャップをもつ流助を断らないかもしれないが、こんな素敵な人たち――結婚相手など選び放題だろ、――が自分を選ぶわけがない。
うつむくと、膝の上の握りこぶしが目に入った。とても小さかった。子どもと変わらない小さい身体。それが突然みっともなく恥ずかしくなる。いたたまれなくなる。
適合率が99.9パーセントなんて聞かされたところで、この人たちが、Ωと結婚するリスクを選ぶはずがない。Ωは表向きどんなにきれいごとを言っても差別の対象であることにかわりないし、脆弱な厄介者なのだ。
「それではみなさん、わたしは一度はずしますので」
コーディネーターが席をはずした。三人だけになった。
流助はふっと息を吐いた。
まあ、考えても仕方がない。なるようになれ。最後なんだ。楽しめ。
流助は顔を上げた。にっこり笑って思ったことをそのまま口にした。
「鳥飼さん、ってかっこいいですね」
呼ばれたスーツの鳥飼は、驚いたように眉を上げた。あれ、この人案外親しみやすい感じだ、怖くないと思うと、いつもの調子をすっかり取り戻す。流助はすぐさまかぶせた。
「名前が!」
鳥飼が「えっ」という顔をし「名前、が」と復唱する。その言い方にきれいな人が思わず、といった様子でふきだして笑った。神経質そうなビューティーも笑うと一気にかわいらしくなる。
「名前が、ですか?」
鳥飼がサングラス、いやフィルタグラスというらしいが、それに手をそえて、もう一度不思議そうに聞き返す。
「や、だって、俺、淵流助って、よく『ブチ』とか『プチ』とか言われて。あ、小さいから『プチ』なんですけどね、そんな風にいじられてきたから、嫌だなあって、ずっと」
「ああ、」
イオが急に食いついた。身を乗り出してくる。
「わかります。ぼくも『井岡イオ』って回文みたいで子どもの頃からずっと、なんでこんな名前なんだって嫌で嫌で。イオカイオ、イオカイオ……しつこく連呼されたりして」
その熱のこもった言い方に勇気をもらった流助は、たたみかけるように言った。
相手がどうとかいう前に、Ωである流助をその人が受け入れてくれるかの方が大きな問題だ。マッチングサービスは紹介をしてくれるだけで、相手が嫌なら断ることができる。そうなれば即終了だ。次のチャンスはない。
流助はもやもやを打ち消すように無理やり目を閉じた。考えれば考えるほど断られる可能性の方が大きいように思えてならない。相手が流助を見たとたん、ぎょっとしたり嫌な顔をする。そんな態度をとられたら、はたして自分は平気な顔をしていられるだろうか。
その夜は重圧に耐えかね、逆に、ぐっすり眠ってしまった。
次の日、覚悟を決めて挑んだ面接の相手は、流助の想像をはるかに超えていた。
一人は大人で大きくて、強面。サングラスをかけた人だった。一人は細長くて、かっこいい服を着て、これまで実際に流助が見たことのある人の中で一番きれいな姿かたちをしていた。
「三、人、婚……?!」
「はい、そういうことです」
驚きを予測していたコーディネーターが、よどみない口調で説明をはじめる。しかし流助の耳にはまるではいってこない。
自分と相性のあう相手が世界に一人じゃなくて、二人。
両方まともな感じの、いや、かなりレベルの高い大人の男性だ。
これはダメだ。終わった。
流助は言葉をなくし、口の中の肉を噛んだ。
多少へんてこな人なら、Ωというハンディキャップをもつ流助を断らないかもしれないが、こんな素敵な人たち――結婚相手など選び放題だろ、――が自分を選ぶわけがない。
うつむくと、膝の上の握りこぶしが目に入った。とても小さかった。子どもと変わらない小さい身体。それが突然みっともなく恥ずかしくなる。いたたまれなくなる。
適合率が99.9パーセントなんて聞かされたところで、この人たちが、Ωと結婚するリスクを選ぶはずがない。Ωは表向きどんなにきれいごとを言っても差別の対象であることにかわりないし、脆弱な厄介者なのだ。
「それではみなさん、わたしは一度はずしますので」
コーディネーターが席をはずした。三人だけになった。
流助はふっと息を吐いた。
まあ、考えても仕方がない。なるようになれ。最後なんだ。楽しめ。
流助は顔を上げた。にっこり笑って思ったことをそのまま口にした。
「鳥飼さん、ってかっこいいですね」
呼ばれたスーツの鳥飼は、驚いたように眉を上げた。あれ、この人案外親しみやすい感じだ、怖くないと思うと、いつもの調子をすっかり取り戻す。流助はすぐさまかぶせた。
「名前が!」
鳥飼が「えっ」という顔をし「名前、が」と復唱する。その言い方にきれいな人が思わず、といった様子でふきだして笑った。神経質そうなビューティーも笑うと一気にかわいらしくなる。
「名前が、ですか?」
鳥飼がサングラス、いやフィルタグラスというらしいが、それに手をそえて、もう一度不思議そうに聞き返す。
「や、だって、俺、淵流助って、よく『ブチ』とか『プチ』とか言われて。あ、小さいから『プチ』なんですけどね、そんな風にいじられてきたから、嫌だなあって、ずっと」
「ああ、」
イオが急に食いついた。身を乗り出してくる。
「わかります。ぼくも『井岡イオ』って回文みたいで子どもの頃からずっと、なんでこんな名前なんだって嫌で嫌で。イオカイオ、イオカイオ……しつこく連呼されたりして」
その熱のこもった言い方に勇気をもらった流助は、たたみかけるように言った。
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