めいちゃんとかたつむりハウスの雨宿り屋さん

あき伽耶

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【第1話】夕立ち

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  ざあっと音を立てて、やっぱり雨が降ってきてしまいました。
 運動靴に雨がしみて、靴下のさきっぽが冷たくなってきました。きっとかぶっているピカピカの小学校の帽子も背中のランドセルも、濡れてしまっているでしょう。
 めいちゃんは走りながら、お母さんが「夕立があるから傘を忘れずにね」と言ってくれたのに、持って出なかったことを後悔しました。
 でもそれにはわけがあります。

「お母さんたら、ふうのことばっかりなんだもん」

 ふうというのは、めいちゃんの妹で赤ちゃんです。
 今朝だってお母さんはふうちゃんにおっぱいをあげていて、めいちゃんのお顔を全然見てくれず「いってらっしゃい」なんて言うのです。
 だからお母さんの言うことを聞きたくなくなって、わざと傘を置いてきたのです。
 わかっているんです。お母さんは忙しいし、ふうは赤ちゃんだからしかたないって。
 だけどめいちゃんは、ちょっぴり寂しいのでした。
 家まではまだもう少しかかります。着くまでに足も帽子もランドセルも大変なことになってしまいそうです。
 道の角に、背の高くて太い、とても大きな木がありました。こんなに降っているのにその木の下はちっとも濡れてません。

「わあ、助かったあ! ここで雨宿りできる!」

 めいちゃんは木陰に飛び込みました。
 なかなか止みそうにない大粒の雨を見ながら、めいちゃんが溜息をついていると―― 

「あらあら、そのままでは風邪をひいてしまうよ」

 突然、おだやかな声で話しかけられました。びっくりして辺りを見回しましたが、木の下には自分一人しかいません。

「おじょうちゃん、こっちこっち」

 声のする方に目を凝らすと、太い根っこの上に小さな小さなおばあさんがいるではありませんか。めいちゃんの手ぐらいの大きさです。
 真白な髪の毛を頭にくるくると巻きつけているおばあさんは、クリーム色のきれいで立派なかたつむりの殻の横に立ち、にこにこと手を振っています。

「かたつむりハウスで雨宿りしていかないかい?」

と言うとおばあさんは、かたつむりの殻の口についていた木製のドアを開きました。
 ドアの上には看板が掲げてあり、とても小さい文字で『あまやどりや』と書いてあります。

「雨宿り屋さん?」

 かたつむりハウスだなんて、わあすてき! 

 そう思ったら、気がつけばめいちゃんはかたつむりハウスとおばあさんを見上げて、太い根っこの上に立っていました。いつのまにおばあさんは大きくなったのでしょう? それともめいちゃんが小さくなったのでしょうか? 不思議なこともあるものです。

「お茶でも飲んでおいきなさいな。さあどうぞ」

 ドアをくぐっためいちゃんは目を丸くしました。

 

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