若君の憂鬱

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若君の憂鬱

若君の一目惚れ

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若君の憂鬱

「下手人に逃げられた」

まるで「くそー」とでも言う様に悔しげな顔で
「かたじけない」
頭を垂れ同僚に謝るのは
藤原義顕その人であった。
細面の美丈夫である。
まるで女人のように美しいと言った形容詞が似合うぱっと見た印象が優男であった。


「その件、誠か!?」
同僚の鈴木佐内が口を挟む。
此方は対照的に強面風の漢である。
「うーむ、下手人がなかなか出てこんのだ」

江戸内で辻斬りや誘拐が横行しているとの知らせがあったのだ。
犯人を捜していたのだが如何せん、逃げ足が早く証拠も残さず消えていくため

神隠しにあったものでは?などとも噂されていたのだった。


誘拐は、女子供を狙い、辻斬りで被害にあったのは大店の商人であった。

「何!?それは誠か!?面妖な」
拐かされたのは、女子供だったのが
連れ拐われた女子供達にはまるで

共通点がなく、
いや、共通点があると言えばどちらも
信仰心が強い事だった。

「信仰心が強い。。。か、これは神隠しではなかろうか?」

其処で藤原は江戸の総鎮守である神田明神に行く事にした。

神隠しには神頼み、あまりに安直な考えかもしれないが、人智を超えている案件だけに、

まさに藁をもすがる気持ちで、来たのだ。

「高天原に神留まります。神漏岐、神漏美の命もちて~」などと涼やかな美しい鈴の

鳴るような聴いていて心地よい女性の祝詞を唱える声が

聴こえた。

「!?」
思わず瞠目して後ずさってしまうと
その声はハッとしたように声を掛けてきた

「吃驚させてしまったようで、、、
お先に失礼させていただきました。」
ぺこりと可愛らしいまだ年端も行かぬような
女子が照れたように微笑みを浮かべ謝罪を述べた。

彼女が祈る様子をずっと観察していた藤原だったが、その余りの神々しさに息をするのを忘れていたのを思い出し、

ごくんと唾を飲み込む藤原。
「は、いや面目ない。余りに美しい声だったもので、思わず見入ってしまったようだ」

何を話しているんだと自分で突っ込みたくなるのをこらえつつ、相手に返事をする。

「はわわわ、そのありがとう存じます。
わたくし、藤原由乃と申します。」

藤原は思わず彼女の細くて華奢な手を掴んでいた。

「そなた藤原と申すか、実は拙者も藤原と
申す。」

現代で言うならば、婚活パーティー宜しくのようにお互いの自己紹介をしたのだった

何と聞けば彼女も仙台にご縁が有り、
藤原義顕と同じ家柄だったそうな。

はてははては、この恋の行方はどうなる?
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