もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第211話 したたかな振る舞い

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楽しみにしていた幻のリンゴジュースが床の上で砕け散り、
「また持ってきてあげるよ」
というミヤビの提案まで黛に断りを入れられてしまったシズクのショックは相当らしい。

思わず割れてしまったリンゴジュースの瓶に駆け寄ろうとしたシズクを「動くな」ものすごく強い口調で黛が止めた。
いつもは冷静で穏やかな黛が声を荒げたことに驚くシズク。

「じゃあ私が片付けます」

動けなくなってしまったシズクの横からミヤビが名乗りを上げたけれど
「ケガをしたら大変だからね。すぐ病院のスタッフに片付けてもらうよ」
黛はすぐにスマホを取り出してどこかへ電話しはじめた。

親しそうな口調で相手と挨拶を交わし、病室番号や便を割ってしまったこと、そして片づけを専門のスタッフに頼みたいと伝えて終話。

「申し訳ないですがシズクはあす検査があるので、そろそろ皆さんは…」
ひとりずつ顔を見ながら申し訳なさそうな表情で帰るよう促した。

さらに
「あ、それから絢世は体調不良ではないのだから、いまから店に出てもらえる?」
そんなとんでもないことを言いはじめる。

「…え?」

「ウソをついてサボった罰」
にんまりと微笑む黛には言い返す言葉もない。

最初からこのつもりだったから何も言わなかったのか。
したたかだなぁ…。

そして黛はミヤビをチラリと見て聞く。

「まだ予約時間前なので絢世を指名されますか?ご迷惑をおかけしたので、もし来ていただけるならラストまで飲み放題で利用いただけるようサービスさせていただきますよ」

しかも指名料しか入らない飲み放題かぁ…。
ペナルティ厳しすぎ。
まぁ、相手がミヤビだから苦ではないけれど。

ミヤビは絢世と黛のほうを見て
「絢世と飲むならそんなサービスはいらない。正規料金で飲みに行くから準備しておいて」
そう言って帰っていった。
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