もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第275話 辞めたのではなく行方不明

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たかみね…。
シズクは首を傾げて不思議そうな顔をしたが、絢世はその苗字に聞き覚えがあった。

ただ勝手にINNOCENTイノセントで働くホストの個人情報を晒すわけにはいかない。
たとえいまはいなくても。

タクシー運転手・高峰はそれを察したように口を開く。

「高峰信也(たかみねしんや)。INNOCENTイノセントに“シン”と名乗ってホストをやっていた男がいただろう?俺はそいつの父親…。父親なんて言ったら信也に怒られそうだ」

高峰は苦笑いすると
俺はあいつが行方不明になるまで、どこで何をしているのかさえ知らなかったんだからな」
後悔がひしひしと伝わってくるような表情でそう続けた。

「…え?」
口元に手をあてて固まる絢世。

「シンさんが行方不明…?」

知らなかった。

…ウソだろ?
シンさんも行方不明とか…。

でも、シズクが書いてくれた健康診断を受けたホスト一覧に名前はなかった。
…そうか、シンさんが店を辞めたのは半年くらい前。
シズクが店に入職したのも半年くらい前だったからか…?

「半年くらい前に羽村はむらくんと黛さんがウチまでやってきて、それではじめてウチの信也が行方不明になっていることを知ったんだ。情けない父親だろう?」

黛さんと羽村…?

「羽村さんって…?」

「あぁ、INNOCENTイノセントで黒服をやっている羽村貴之はむらたかゆきくん。ウチの息子と幼馴染みでね、そして…。あ、いや…。それから大学に入ったときに黛さんと仲良くなって、それからはよく3人で行動していたみたいだな」

高峰はそう言うとさらに続ける。

「絢世さん、ウチの信也はあなたと毎月のように売り上げを競っていたんだってな?偶然とはいえ、そんな息子の相手を乗せることができて俺は…」

語尾を涙で詰まらせた高峰は右手のひらで顔を覆った。
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