もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第278話 可愛くて困る

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ひとまずは黒服と話し合い、黛が警察に連れていかれたのは任意同行であることを説明。

よく考えて行動してほしいこと、やむを得ず店を辞める場合には二週間ほど前には伝えてほしいこと、お客さんからの予約が入っている場合にはそれを消化してから店をあとにしてほしいことなどを伝えた。

絢世が話し終わっても店内の空気は淀んだまま。
いままでに感じたことがない濁った嫌な感じがカラダに纏わりついてきた。

ヘルプや新人ホストたちよりも顕著だったのは売り上げをあげている主要ホストたちからの反応。

「いくら任意同行って言ったって、警察に疑われてるのには変わりないだろ?もうこの界隈に噂が広まってるのに客だって来たくないだろうが」

「だよな。血まみれになった扉と床を通って店に来たいヤツなんかいないだろ。客は金を払って夢を見に来てるんだぞ?」

「俺なら他の店でもやっていけるからな。悪いな、絢世」

みんなが言うことは間違ってはいない。
それぞれに生活だってある。

うまく言い返せずただじっと聞いていて、謝ることしかできなかった。

「…疲れた…」

皆が帰ったあとの店内で客席ソファへと崩れ込んだ絢世に
「お疲れさん」
ルイボスの入ったグラスを差し出したのは黒服。

いつものチャラい感じではなく、ミヤビの圧迫止血をしたときと同じ落ち着いた大人な雰囲気で
「ごめん。タメ語でいいかな?」
話しかけてきた。

「もちろん。…って、俺は敬語で話せばいい?」
「やめろ。絢世の敬語は可愛くて困る。お前とまともに話せなくなるよ」

「…え…?」

まさか黒服まで変なことを言い出すんじゃないかと思って身構えた絢世に
「なに引いてんだ?変な意味じゃないぞ。俺や隼人、それから信也にとって絢世は弟みたいなもんだからな。いつだって可愛くてしょうがないよ。本当に困るぐらいにな」
黒服は苦笑い。

けれどすぐ真面目な顔で言った。

「そんなことより、うまく嵌められたな」
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