学園一の落ちこぼれ召喚術師の私が魔王の息子を召喚できてしまったわけですが、皆さんどんな気持ちですか?

かやかや

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2 最悪の入学初日

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事の発端は数か月前。

式用ホールにしわ一つないフォーマルな黒のケープコートが立ち並ぶ。ノヴァーリスの制服だ。私も新入生の内の1人で、そのときはすごく緊張していたことをよく覚えている。

なぜなら私はその代唯一の15歳で、他の新入生たちに比べて若さが目立ったことと、この国では少々珍しい黒髪が理由で周囲からの視線を集めていたからだ。

緊張の理由はもう一つ、私が平民の出身だということもあった。

学園の生徒が貴族だけというわけではないが、平民が多いということは確かだ。少数派である平民の中でも私は、身寄りのない孤児院の出身だ。

学園側の話によると、孤児院からノヴァーリスに入る生徒は私が史上初だそうだ。噂話というのは知らない間に広まるもので、既に私が孤児院の出身だということを知っていそうな居心地の悪い視線もひしひしと感じていた。

それでも、施設の皆は私を応援してくれたし、特に施設長なんかは泣いて喜んでくれた。私は立派な召喚術師となって、いつか施設に寄付をするんだ。周囲からの奇異の視線に居心地の悪さを感じながらも、私は気合を入れ直す。

しかし、あの会場内で私以上に注目されていた人物が、一人だけいた。

「新入生の皆さん、この度はご入学おめでとうございます。皆さんのノヴァーリスでのご活躍を心より願い────……」

生徒代表として壇上に立ち、言葉を述べていたすらりとした男性。彼が壇上に立った途端、新入生がわぁっと沸いたのをよく覚えている。美しい白銀の髪と深い青色の瞳が特徴的で、ノヴァーリスの黒のケープとの対比が印象的だった。

彼の名はアルトゥール・クラウスナー。ノヴァーリスに在籍する4年生の18歳。学園町の孫であり、ノヴァーリス創立以来の天才と称されるほどの人物で、学園内外に多数ファンがいる。孤児であった私ですら知っている。

もっとも、彼は魔導師クラスで、私は召喚術師サマナークラス。憧れはするものの、きっと関りはないだろう。



入学式の後はクラスごとのオリエンテーションがあり、私の属する召喚術師クラスでは、薄暗く仰々しい部屋へと集められた。中央には薄緑の魔法陣が描かれ、薄気味悪くぼんやりと光っていた。

「私は基礎召喚術を担当するマヌエラ・ミネッティ。皆さんにはここで、最初に使役することになる使い魔を召喚してもらいます。
では、そこの貴方。魔法陣の前に立ち、私のあとに続いて呪文を唱えてください」

顔にいくつものしわを刻んだ老婆が私たちの前に立ち、新入生の一人を指名して魔法陣の前へと連れて行くと、驚くほど簡単に小さな魔物が魔法陣の中心に現れた。真ん丸とした子豚のような姿に、コウモリのように大きな羽が生えたまものだ。

間近で見る魔物の姿に生徒たちは多少ざわつくが、魔物の様子を見て人間に対して敵意は持っていないと判断するとすぐに落ち着いた。魔物はただキイキイと金切声を上げている。

「このように、下級悪魔であれば貴方たちなら呪文を唱えるだけで召喚することができます。他の召喚術師学校では、下級悪魔の召喚までに時間がかかるところですが、我がノヴァーリスに選ばれた貴方たちならば初日でこなすことができるでしょう。
では、次。名簿番号順に前へと来なさい」

生徒が次々と、それぞれ違う悪魔を召喚していく。自分の召喚する悪魔はどのような姿だろうかと皆が期待に胸を膨らませる中、ついに私の番が来た。

「モナ・フェスタ―です。よろしくお願いします」
「ええ。それじゃあ力を抜いて、魔法陣へと手を向けて……」

呪文の詠唱が始まる。私の中の魔力が外へと向けられ、段々と魔法陣の薄らぼんやりとした光が強くなってきたように感じる。呪文を唱え終え、きゅっと唇を一文字に結ぶ。ふわっと頬を風が掠めたような気配がして、それから────。

何も、起こらなかった。

いくら待っても、何も起こらない。何も現れないし、なんの変化もない。
周囲がどよめき始め、私も困り果ててマヌエラ先生を見上げた。目元がたるんで細くなった目が更に狭まり、こちらを睨みつけているようにも思えた。

「……ミス・フェスタ―。全員の召喚が終わったあと、少しここに残りなさい。……それでは、次!」

とぼとぼと重い足取りで生徒たちの列へと戻ると、周囲から小さく声が聞こえてきた。

「孤児院出の……」
「身の丈を弁えないで……」
「下級悪魔すら……」

プッ……クスクス……

次第に声は笑い声へと変わる。だけど、下級悪魔すら召喚できなかったのは事実だ。何も言い返せず、唇を噛むしかなかった。
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