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10 授業中の騒動
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────聞こえてる?基礎召喚術の授業中なの。この間の話通りよろしくね。
────了解した。低級悪魔を用意しておく。その時が来たらまた声を掛けろ。
とっくの昔に予習済みの、マヌエラ先生の講義を聞き流しながら、指輪を介してオロヴァセーレに言葉を送る。
彼の話では、私の魔力は多く強大すぎるがために、下級悪魔が寄り付かないとのこと。だから今日の実践では、魔族の王子たる彼が教室の魔法陣へと適当な悪魔を送り込み、私が召喚したように見せてくれるという手筈だ。
これで落ちこぼれ扱いも少なくなるはず。そう思うと多少なりとも楽しみだった。
「それでは実践に移ります。学籍番号順に魔法陣の方へと来るように」
先生の声を聞いても、今日は憂鬱にならない。彼がどの悪魔を召喚させてくれるかを考えると、むしろ少し楽しみだった。
「ごきげんよう、モナさん。どんな無様な召喚術を披露してくださるのか、今日もとっても楽しみだわ」
耳鳴りのような高い声が耳をつんざく。
「リーゼラ……相変わらず暇そうね」
「あら、実践の貴方ほどじゃないわ!ふふふ」
私の言葉にわざとらしく大きな声で返され、そのやりとりを聞いて教室中から小さな笑い声が聞こえてくる。
それでも、今日ばかりは少しも気にしない。
私の番が近付いてきている。何も言い返さずに立ち上がって魔法陣の方へと向かうと、リーゼラは反応が少ないことがつまらないようだった。
「次。……ミス・フェスタ―。あまり期待はしていないから、気負わずにやりなさい」
マヌエラ先生は私に目もくれずに資料を読んでいる。
────そろそろだけど、大丈夫?
────勿論。お前の魔力を感じ次第送り出す。
聞こえてきたオロヴァセーレの声に一つ息を吐いて気持ちを落ち着かせる。床に描かれた魔法陣の中心に、自分の魔力が次第に集中していく。私の体ではなく、指輪から魔力が出ている。きっとオロヴァセーレが自身に宿る私の魔力を使っているのだろう。
一体何が来るのだろう。下級の魔物となると定番はインプか、ピクシーやグレムリンだろうか。それとも多少箔をつけてくれるとしたら、スカルミリョーネやチリアットなんかも妥当だろう。
オロヴァセーレを召喚したときと同じ感覚が湧き上がる。魔法陣の中心に集まった魔力が形作られていく。
「何?」
「あれ、今召喚してるのって……」
「嘘、あの落ちこぼれじゃん!」
室内がざわつき始め、魔法陣の周りに人が集まり始める。
「……!いいですよ、ミス・フェスタ―。何かが召喚できそうです。そのまま、ゆっくりと魔力を膨らませて……」
何かおかしい。下級にしては大きすぎる。
まさかオロヴァセーレを召喚してしまったのでは、と一瞬考えたが、そもそも私は召喚の手筈を踏んでいない。ただオロヴァセーレが悪魔を転送してくれているだけだ。
突然室内にカッと光が弾けた。
「きゃあああっ!?」
誰のものともわからない悲鳴が響き渡る。恐る恐る目を開けて魔法陣の中心を見ると、頭がヤギの大男が静かにそこに立っていた。
どう見たって低級ではない。この姿、何かの文献で見たことがある。確か名前は……。
「下級悪魔の長、レオナード……」
先生が驚愕でかすれた声で、ぽつりと呟いた。
────了解した。低級悪魔を用意しておく。その時が来たらまた声を掛けろ。
とっくの昔に予習済みの、マヌエラ先生の講義を聞き流しながら、指輪を介してオロヴァセーレに言葉を送る。
彼の話では、私の魔力は多く強大すぎるがために、下級悪魔が寄り付かないとのこと。だから今日の実践では、魔族の王子たる彼が教室の魔法陣へと適当な悪魔を送り込み、私が召喚したように見せてくれるという手筈だ。
これで落ちこぼれ扱いも少なくなるはず。そう思うと多少なりとも楽しみだった。
「それでは実践に移ります。学籍番号順に魔法陣の方へと来るように」
先生の声を聞いても、今日は憂鬱にならない。彼がどの悪魔を召喚させてくれるかを考えると、むしろ少し楽しみだった。
「ごきげんよう、モナさん。どんな無様な召喚術を披露してくださるのか、今日もとっても楽しみだわ」
耳鳴りのような高い声が耳をつんざく。
「リーゼラ……相変わらず暇そうね」
「あら、実践の貴方ほどじゃないわ!ふふふ」
私の言葉にわざとらしく大きな声で返され、そのやりとりを聞いて教室中から小さな笑い声が聞こえてくる。
それでも、今日ばかりは少しも気にしない。
私の番が近付いてきている。何も言い返さずに立ち上がって魔法陣の方へと向かうと、リーゼラは反応が少ないことがつまらないようだった。
「次。……ミス・フェスタ―。あまり期待はしていないから、気負わずにやりなさい」
マヌエラ先生は私に目もくれずに資料を読んでいる。
────そろそろだけど、大丈夫?
────勿論。お前の魔力を感じ次第送り出す。
聞こえてきたオロヴァセーレの声に一つ息を吐いて気持ちを落ち着かせる。床に描かれた魔法陣の中心に、自分の魔力が次第に集中していく。私の体ではなく、指輪から魔力が出ている。きっとオロヴァセーレが自身に宿る私の魔力を使っているのだろう。
一体何が来るのだろう。下級の魔物となると定番はインプか、ピクシーやグレムリンだろうか。それとも多少箔をつけてくれるとしたら、スカルミリョーネやチリアットなんかも妥当だろう。
オロヴァセーレを召喚したときと同じ感覚が湧き上がる。魔法陣の中心に集まった魔力が形作られていく。
「何?」
「あれ、今召喚してるのって……」
「嘘、あの落ちこぼれじゃん!」
室内がざわつき始め、魔法陣の周りに人が集まり始める。
「……!いいですよ、ミス・フェスタ―。何かが召喚できそうです。そのまま、ゆっくりと魔力を膨らませて……」
何かおかしい。下級にしては大きすぎる。
まさかオロヴァセーレを召喚してしまったのでは、と一瞬考えたが、そもそも私は召喚の手筈を踏んでいない。ただオロヴァセーレが悪魔を転送してくれているだけだ。
突然室内にカッと光が弾けた。
「きゃあああっ!?」
誰のものともわからない悲鳴が響き渡る。恐る恐る目を開けて魔法陣の中心を見ると、頭がヤギの大男が静かにそこに立っていた。
どう見たって低級ではない。この姿、何かの文献で見たことがある。確か名前は……。
「下級悪魔の長、レオナード……」
先生が驚愕でかすれた声で、ぽつりと呟いた。
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