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17 決意
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────禁書を盗み出した直接的な犯人はマヌエラ・ミネッティだった。
────マヌエラ先生!?どうして……。
────俺の知ったことか。それから、お前の部屋に置いたのは、……金髪の女生徒だ。やたらアクセサリーをつけた、派手な……。
────リーゼラのこと?……えっと、オロヴァセーレがこの指輪をくれたときに、私に話しかけてきた子なんだけど。
────ああ、奴だった。
「そっか……」
指輪を介しての会話を忘れ、思わず口からぽつりとこぼれた。
リーゼラに嫌われていることも、マヌエラ先生に疎まれていることも百も承知だった。
でも、実際にこうやって陥れられたのだと事実を突きつけられると、流石に堪えてしまう。
これでも頑張ってきたつもりだったのにな。
オロヴァセーレとの会話の声が涙で揺れてしまいそうで、呼吸を整えるために大きく深呼吸をした。冷たい石の床の上で膝を立て、そこに顔を埋め、溜息をつく。
────……私は、このまま退学処分になるって。ノヴァーリス創立以来、何の召喚もできずに学園を去った笑い者。
────ふん。こんな学園去ってしまった方がいい。お前ならノヴァーリスにいなくても十分やっていけるさ。
────……でも、
元々私がここまでノヴァーリスにしがみついているのは、私を育ててくれた孤児院への恩返しのためもあった。
王宮勤めの魔術師……とまではいかずとも、いい地位の魔術師となるにはノヴァーリスは一番の近道だ。退学はしたくない。
────……でも、私はノヴァーリスにいなくちゃいけないの。立派な召喚術師になって、孤児院に恩返しを……。
────ノヴァーリスを望むのは箔がつくからか。……魔王の息子が使い魔だと言えば、その何倍も箔がつくというのに。
────……。
確かに、それは最高の謳い文句だろう。
私は本来、王宮勤めに向いている性格ではないとわかっている。森の奥で一人静かに召喚術の研究をしながら依頼を受ける方が、よほど幸せなものに思える。
そこまで考えて、はっと孤児院のことが頭をよぎった。
そうだ、孤児院からノヴァーリスの卒業生が出たという事実も大事なんだ。そのことを忘れてはいけない。
────でも、きっとここを卒業した方が孤児院は誇らしいと思うの。
────卒業、か。……それよりも、他にあるだろう。
────……何?
────ノヴァーリスの悪事を裁き、自主退学しろ。そうして名の売れた召喚術師となった方がずっとクールだ。
お前を落ちこぼれと貶し続けた学園だ。お前を陥れるような教師の勤める学園だ。お前を無実の罪で裁こうとしている学園だ。俺もそろそろこの学園に嫌気が差してきたところだ。次期魔王がノヴァーリスで使役者を探すなどという慣習は、俺の代で終わらせよう。
────え!?そんな、急に……。
────ノヴァーリスはこの先更に腐っていく。そうすればお前の孤児院も、いずれはお前のつけた箔などありがたく思わなくなる。……だが、名門魔術師学校の悪事を裁いた、高潔な召喚術師が出た孤児院となれば、その箔はお前が高潔である限り続くだろう。
────……。
ノヴァーリスを、私が……。
今までの記憶が蘇ってくる。
どの授業でも馬鹿にされた。座学がどれだけ優秀でも、何も召喚できないというだけで貶された。手を差し伸べる人はいなかった。
指にはめた指輪を見つめる。
この学園で信用できるのは、オロヴァセーレだけだ。
────……わかった。もう、終わりにする。
────それでこそ俺の主だ。
満足げに口角を上げるオロヴァセーレの表情が、目に浮かんだ。
────マヌエラ先生!?どうして……。
────俺の知ったことか。それから、お前の部屋に置いたのは、……金髪の女生徒だ。やたらアクセサリーをつけた、派手な……。
────リーゼラのこと?……えっと、オロヴァセーレがこの指輪をくれたときに、私に話しかけてきた子なんだけど。
────ああ、奴だった。
「そっか……」
指輪を介しての会話を忘れ、思わず口からぽつりとこぼれた。
リーゼラに嫌われていることも、マヌエラ先生に疎まれていることも百も承知だった。
でも、実際にこうやって陥れられたのだと事実を突きつけられると、流石に堪えてしまう。
これでも頑張ってきたつもりだったのにな。
オロヴァセーレとの会話の声が涙で揺れてしまいそうで、呼吸を整えるために大きく深呼吸をした。冷たい石の床の上で膝を立て、そこに顔を埋め、溜息をつく。
────……私は、このまま退学処分になるって。ノヴァーリス創立以来、何の召喚もできずに学園を去った笑い者。
────ふん。こんな学園去ってしまった方がいい。お前ならノヴァーリスにいなくても十分やっていけるさ。
────……でも、
元々私がここまでノヴァーリスにしがみついているのは、私を育ててくれた孤児院への恩返しのためもあった。
王宮勤めの魔術師……とまではいかずとも、いい地位の魔術師となるにはノヴァーリスは一番の近道だ。退学はしたくない。
────……でも、私はノヴァーリスにいなくちゃいけないの。立派な召喚術師になって、孤児院に恩返しを……。
────ノヴァーリスを望むのは箔がつくからか。……魔王の息子が使い魔だと言えば、その何倍も箔がつくというのに。
────……。
確かに、それは最高の謳い文句だろう。
私は本来、王宮勤めに向いている性格ではないとわかっている。森の奥で一人静かに召喚術の研究をしながら依頼を受ける方が、よほど幸せなものに思える。
そこまで考えて、はっと孤児院のことが頭をよぎった。
そうだ、孤児院からノヴァーリスの卒業生が出たという事実も大事なんだ。そのことを忘れてはいけない。
────でも、きっとここを卒業した方が孤児院は誇らしいと思うの。
────卒業、か。……それよりも、他にあるだろう。
────……何?
────ノヴァーリスの悪事を裁き、自主退学しろ。そうして名の売れた召喚術師となった方がずっとクールだ。
お前を落ちこぼれと貶し続けた学園だ。お前を陥れるような教師の勤める学園だ。お前を無実の罪で裁こうとしている学園だ。俺もそろそろこの学園に嫌気が差してきたところだ。次期魔王がノヴァーリスで使役者を探すなどという慣習は、俺の代で終わらせよう。
────え!?そんな、急に……。
────ノヴァーリスはこの先更に腐っていく。そうすればお前の孤児院も、いずれはお前のつけた箔などありがたく思わなくなる。……だが、名門魔術師学校の悪事を裁いた、高潔な召喚術師が出た孤児院となれば、その箔はお前が高潔である限り続くだろう。
────……。
ノヴァーリスを、私が……。
今までの記憶が蘇ってくる。
どの授業でも馬鹿にされた。座学がどれだけ優秀でも、何も召喚できないというだけで貶された。手を差し伸べる人はいなかった。
指にはめた指輪を見つめる。
この学園で信用できるのは、オロヴァセーレだけだ。
────……わかった。もう、終わりにする。
────それでこそ俺の主だ。
満足げに口角を上げるオロヴァセーレの表情が、目に浮かんだ。
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