俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風

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100.成功であり、失敗であり……

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 拘束されたままの看護師の案内で、ちょっと大きめの民家みたいな院内を行く。

 うん……建物に入った時から感じていたが、場所柄からなのか、ここは死の気配がする。俺が感じているんじゃなくて、光属性がそういうのに敏感なのだ。ちょっとざわざわする。

 人の生死が関わる場所、か……
 やっぱり俺みたいに半端な覚悟で病人と向き合おうなんて奴は、ここに来ちゃいけないってことだな。

 だが、もう少しだけ、やらなければならない。

 なんだかんだで、使い込むことで少しだけ精度や効果が上がってきているのだ。
 少なくとも触れば「己の魔法技術で治せるか治せないか」や「『天龍の息吹エンジェルブレス』が必要か否か」までわかるようになった。
 ドラクエで言えばただのホ○ミ的な位置付けにある『光の癒しライトヒール』でも、結構効果が高いんだよな。光属性ってのは本当に回復に特化しているのだ。ますますアクロディリアには必要ない能力だと思う。

「ここが子供部屋です。恐らく寝ているので……」

 看護師に頷き、俺だけ看護師が開けたドアから室内に侵入した。
 狭い四人部屋で、プライバシーもへったくれもない、ただベッドが四つ並んでいるだけっつー場所だった。なんか野戦病院レベルで閑散としている。

 看護師の言った通り、子供たちはすっかり熟睡していた。まあ結構な夜中だからな。悪役令嬢になってからはずっと規則正しい生活してる俺も、実は少しだけ眠い。……早く終わらせて帰って寝ないと、明日に響きそうだ。

 事前調査で割れていた通り、子供は三人だ。
 ……あれ? 二人じゃなかったか? 三人いるぞ。うーむ……調査した後に入院が決まった子かもしれないな。こういうのも、現場では何が起こるかわからない事象の一つか。

 10歳になるかならないかくらいの男の子が二人、更に一回り小さな女の子が一人だ。女の子はぬいぐるみを抱いて寝ている。何のぬいぐるみかはわからない。怪獣……?
 まあいい。
 やってしまおう。

 魔法使用による発光は必ず起こるが、光自体を弱めることはできる。メイド二人は知っているが、看護師は俺が「光魔法を使って治療する」ということを知らない。できるだけ色々バレないように配慮しなければならない。
 光魔法の使い手は少ない。こういうのが「キャッツ (仮)の正体は領主の娘だ」と繋がる可能性もあるからな。完璧に隠すのは無理かもしれないが、まあ、できるだけな。

 手近な子から触れ、病気の度合いを確認していく。
 こうして触っていると、ぼんやりとだが「どこが悪い」とか「どの程度悪い」とか、わかるんだ。これが練度による魔法技術の上達なんだと思う。

 ――よし、この子は普通に行けそうだ。悪い場所は身体全体……? 風邪でもこじらせているのかもしれない。医者志望でもない俺だから、病名まではわからん。熱発してたらだいたい風邪だと思っちゃうし。
 まあとにかく、『天龍の息吹エンジェルブレス』を施し、次へ。




 なんとか子供の治療は終わった。誰も起きなかったし、穏便かつ迅速に完了だ。
 女の子はちょっと重かったくらいだが、問題なく完治したはずだ。……一応「魔力水」を飲んでおこう。あ、結構うまい。甘い。

「なんの目的でこんなことを……?」

 俺の所業を見守っていた看護師は、本当に意味がわからないと言わんばかりだ。傍目には病気が治ったかどうかなんてわかんないと思うが……いや、看護師なら、見た目だけで病気かどうかくらいはわかるのかもしれない。少なくとも日常的に面倒を見ていたこの子供たちは。

「お金なんて、ないですよ?」

 金か。
 金に執着がない奴はいるかもしれんが、嫌いな奴などいない。俺も大好きだ。

「早く次の患者を」

 あんまり無駄に語るのも都合が悪いばかりなので、さっさと次を要求する。
 金品目的ではないからな。そもそも金目的ならおおっぴらにやった方が荒稼ぎできるだろ。
 この医療行為自体が目的であるからして。

 その後、特に問題も起こらず、治療は黙々と、そして着々と進められた。
 想像以上に呆気なかったな、という感想だけが残った。

 ――後で知ることになるが、看護師の眠りの魔法で、少し深い眠りに着かせていたそうだ。この世界では「病気は薬と寝ること」が一番の治療法と言われているから。現代医学からすると結構な暴論の気もするし、でも確かに多少のことなら寝りゃ治るって気もするし。……正直なんとも言えないな。




 こうして、初めての病院襲撃事件は終わりを告げた。

 ――と、俺たちは思ったのだが。




 速やかに看護師を解放、俺たち病院から脱出し街を走り――

「待て」

 闇から飛んできた姿なき低い声に、ドキッとした。
 先頭を走るダリアベリーが止まったので、後に続く俺たちも止まらざるを得なかった。そりゃそうだ、完全にマークされてるのに、このまま屋敷までは帰れない。
 何かしらの処理は必要になる。

「自警団隊員ジータ・ダヴァンである」

 ぬるりと影から現れた男は剣を吊っていて。

「この街に賊なんて珍しいね」

 俺たちの背後からは、女の声がやってきた。

 挟まれた。
 マジか。俺はともかく、ダリアベリーが気配を読み損ねるなんて。





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