14 / 26
14 〝核の冬〟後10年
しおりを挟む
アルタモノフ博士が会話を受け取る。
「五カ国が同時に核兵器を使用したのは、結果責任の所在をあいまいにするため。南極大陸の中央は住民が皆無、よって民間人の人的被害がないというのも核攻撃の理由になった。そして爆発によって吹き上がった膨大な水蒸気が、〝核の冬〟を起こす。それが、地球温暖化の抑制に役立つとも…。その結果が、この南極大陸の北端の位置、今や、赤道直下だ」
オペレーターが、トンネル内の磁力リングによる減速開始を告げながら続ける。
――放射性物質の残存の心配はない。だが指摘の通り、巻き上がった二〇〇〇万トンもの水蒸気が厚い雲となり、六年間は日照を和らげたが、その後、雨や雪となって地表に降り、世界の河川・湖や海の水量、氷河の重量のバランスを大きく乱した。地軸の移動、ポール・シフトが起きたのは、それから一〇年後…。沿海部や諸島の何千万人が、巨大ツナミで犠牲になった――
ヤマモト博士が、低い声で、
「議論はここまで。人類初の氷底湖探検に集中しよう。言っとくが、核爆発でできたクレーターを、最大限に氷底湖の調査に利用しようと言い出したのは、この私。核を都合よく利用する魂胆では、誰より罪深い」
――誰も、君を罪人とは思わない。もうすぐトンネルを抜ける。幸運を、良い旅を――
トンネルを降り切った特殊雪上車は、直立態勢を保ったまま、氷底湖の湖面に飛び込んでいった。
「五カ国が同時に核兵器を使用したのは、結果責任の所在をあいまいにするため。南極大陸の中央は住民が皆無、よって民間人の人的被害がないというのも核攻撃の理由になった。そして爆発によって吹き上がった膨大な水蒸気が、〝核の冬〟を起こす。それが、地球温暖化の抑制に役立つとも…。その結果が、この南極大陸の北端の位置、今や、赤道直下だ」
オペレーターが、トンネル内の磁力リングによる減速開始を告げながら続ける。
――放射性物質の残存の心配はない。だが指摘の通り、巻き上がった二〇〇〇万トンもの水蒸気が厚い雲となり、六年間は日照を和らげたが、その後、雨や雪となって地表に降り、世界の河川・湖や海の水量、氷河の重量のバランスを大きく乱した。地軸の移動、ポール・シフトが起きたのは、それから一〇年後…。沿海部や諸島の何千万人が、巨大ツナミで犠牲になった――
ヤマモト博士が、低い声で、
「議論はここまで。人類初の氷底湖探検に集中しよう。言っとくが、核爆発でできたクレーターを、最大限に氷底湖の調査に利用しようと言い出したのは、この私。核を都合よく利用する魂胆では、誰より罪深い」
――誰も、君を罪人とは思わない。もうすぐトンネルを抜ける。幸運を、良い旅を――
トンネルを降り切った特殊雪上車は、直立態勢を保ったまま、氷底湖の湖面に飛び込んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる