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19 交流試合?!
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よく晴れた昼下がり。
霞が関の警視庁庁舎から、揃って出てきた飯岡権子(のりこ)たち、娘たち九人。
卒業証書を入れるような筒を、それぞれ抱えている。
「やあ――、警視総監感謝状がもらえるなんて、夢みたいだね」と権子。
「法学部を目指す女子高生にとって、有利な経歴になります」と一条主(おも)。
「わたしゃあ、DVの男、五人も思いっきり、ぶん殴れたうえに、表彰状ももらえて、満足じゃい!」と九条(くじょう)和水(なごみ)。
「たまたま同じ夢をみんなで見てたと思ってたら、現実だったんですね、不思議です」と前田文(ふみ)がつぶやく。
「ニュー・アトランティスの制憲会議、同時開催の記念イベントの来賓出席でも、みんな、頑張ろうね!」と権子がガッツポーズを作る。
「まあ、ただの見学のようですけど。日本に長いあいだ難民として暮らしていた暫定大統領の、その息子さんを、たまたま助けたご褒美(ほうび)ですから…」と主が返す。
「これにも早めに慣れないと…」
権子が、いきなり手話のような動作を始める。
首都圏大学付属病院に勤める文谷正が伝えた、脳内ペースメーカーの操作方法。それは、手話の動作を自ら視認することによる、起動やコマンド入力だった。
視界に、いきなり矢印や注釈のデジタル文字が重なる。
「あっ、あのクルマ、速度違反!」
権子がつぶやく。
「あそこの交差点の歩道には、軽犯罪の発生の可能性あり、だよね」と続ける。
「おお――っ、ノンコ、家電に順応、早っ!」
みんなが感心している。
「お父さんがカメラマンだから、デジタル機器に、子供の時から馴染んでるんだよ」と権子が話す。
みんなも手話で、「頭、スタート」の動作をして、それぞれ脳内ペースメーカーの機能を立ち上げてみる。
ピピッ、電子音が頭の中で鳴る。
「これ、起動音とは、違いますね」と文谷真奈。
「二通、外部から、電子メールだよお」と権子。
「心当たりのない送り主からのメールを、無暗に開いては…」と主が注意をしかけたところ、
「おお――、アメリカと中国から、同時にメールだね!」
権子が電子メールを二通とも開いてしまった。
急に視界が暗転したかと思うと、遠方の小高い山の山頂にかすかに噴煙たなびく、南洋の島の海岸まぎわの光景に切り替わった。
「これって、ウミガメさんの、見てた景色…」とつぶやく権子。
「明らかに、最近、隆起して出来た島に創られた、ニュー・アトランティスですね」と文が続ける。
左右から、鳥の群れが近づいてくる。
鳥の群れかと思って、よく目を凝らしてみれば、左の群れは、色鮮やかな装束の飛天たち。右側の群れは、まごうことなき、天使たちだ。
それぞれの群れの先頭に立つ者から、同時に声が届く。
「私たちの合意のうえに、この島を『戦場特区』に指定しました。われわれ大国のいずれかが勝ち取るか、それともあなたたちが守り切れるか、勝負です!」
目を伏せて、なにか探るような表情を見せる権子。すっと、視線を上げる。
「住民の意思を無視しての特区指定は、日本国憲法ならば九五条、住民投票の条文に違反しています。違憲です!」
「ほ――っ、よく、スラスラと…。ぜひ、〝交流試合〟で決着を付けようではないですか!」
権子は、道着に黒袴(はかま)、領巾をまとった姿に、自らを変えた。
みんなも、領巾の色には違いはあれ、同様な姿に外見を転じた。
「ふふっ、同時に行きますよ!」
飛天と天使が、一体ずつ、娘たちに向かって、急速に降下し始めた。
霞が関の警視庁庁舎から、揃って出てきた飯岡権子(のりこ)たち、娘たち九人。
卒業証書を入れるような筒を、それぞれ抱えている。
「やあ――、警視総監感謝状がもらえるなんて、夢みたいだね」と権子。
「法学部を目指す女子高生にとって、有利な経歴になります」と一条主(おも)。
「わたしゃあ、DVの男、五人も思いっきり、ぶん殴れたうえに、表彰状ももらえて、満足じゃい!」と九条(くじょう)和水(なごみ)。
「たまたま同じ夢をみんなで見てたと思ってたら、現実だったんですね、不思議です」と前田文(ふみ)がつぶやく。
「ニュー・アトランティスの制憲会議、同時開催の記念イベントの来賓出席でも、みんな、頑張ろうね!」と権子がガッツポーズを作る。
「まあ、ただの見学のようですけど。日本に長いあいだ難民として暮らしていた暫定大統領の、その息子さんを、たまたま助けたご褒美(ほうび)ですから…」と主が返す。
「これにも早めに慣れないと…」
権子が、いきなり手話のような動作を始める。
首都圏大学付属病院に勤める文谷正が伝えた、脳内ペースメーカーの操作方法。それは、手話の動作を自ら視認することによる、起動やコマンド入力だった。
視界に、いきなり矢印や注釈のデジタル文字が重なる。
「あっ、あのクルマ、速度違反!」
権子がつぶやく。
「あそこの交差点の歩道には、軽犯罪の発生の可能性あり、だよね」と続ける。
「おお――っ、ノンコ、家電に順応、早っ!」
みんなが感心している。
「お父さんがカメラマンだから、デジタル機器に、子供の時から馴染んでるんだよ」と権子が話す。
みんなも手話で、「頭、スタート」の動作をして、それぞれ脳内ペースメーカーの機能を立ち上げてみる。
ピピッ、電子音が頭の中で鳴る。
「これ、起動音とは、違いますね」と文谷真奈。
「二通、外部から、電子メールだよお」と権子。
「心当たりのない送り主からのメールを、無暗に開いては…」と主が注意をしかけたところ、
「おお――、アメリカと中国から、同時にメールだね!」
権子が電子メールを二通とも開いてしまった。
急に視界が暗転したかと思うと、遠方の小高い山の山頂にかすかに噴煙たなびく、南洋の島の海岸まぎわの光景に切り替わった。
「これって、ウミガメさんの、見てた景色…」とつぶやく権子。
「明らかに、最近、隆起して出来た島に創られた、ニュー・アトランティスですね」と文が続ける。
左右から、鳥の群れが近づいてくる。
鳥の群れかと思って、よく目を凝らしてみれば、左の群れは、色鮮やかな装束の飛天たち。右側の群れは、まごうことなき、天使たちだ。
それぞれの群れの先頭に立つ者から、同時に声が届く。
「私たちの合意のうえに、この島を『戦場特区』に指定しました。われわれ大国のいずれかが勝ち取るか、それともあなたたちが守り切れるか、勝負です!」
目を伏せて、なにか探るような表情を見せる権子。すっと、視線を上げる。
「住民の意思を無視しての特区指定は、日本国憲法ならば九五条、住民投票の条文に違反しています。違憲です!」
「ほ――っ、よく、スラスラと…。ぜひ、〝交流試合〟で決着を付けようではないですか!」
権子は、道着に黒袴(はかま)、領巾をまとった姿に、自らを変えた。
みんなも、領巾の色には違いはあれ、同様な姿に外見を転じた。
「ふふっ、同時に行きますよ!」
飛天と天使が、一体ずつ、娘たちに向かって、急速に降下し始めた。
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