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風
「今日は風が強いね!」
漕いでも漕いでもなかなか前に進まない自転車
私は思わず耐え切れなくなって
前を進む自転車に大声で叫んだ。
「なぁに?!聞こえない!」
風にのって前の自転車から声が流れてきた。
「きょうは!かぜが!つよいね!!!!」
もう一度、
こんどはもっと大きな声で
前の自転車に向かって叫んだ。
風が口の中に入ってきて、
口を閉じようとすると
カピカピな前歯に上唇が引っかかった。
「そうだねー!」
前の自転車から声が流れてきた。
中学校からの帰り道。
あぜ道を風に向かって
一生懸命自転車を漕いでいた。
前の自転車を漕ぐ友達のヘルメットからは
ぼさぼさになったおさげ髪が覗いている。
スカートは足に絡みついて、下に履いている体育着の短パンが見えていた。
耳元を風が通り過ぎ、
重くて速い音が体全体を包み込んだ。
幸い季節は夏に入る一歩手前で
ちょっと寒いかもしれないけど大丈夫かもしれない、
そんな空気が身体を押さえつける。
こんなに涼しいのにヘルメットの中は暑く蒸れている
一度ヘルメットを取って風を入れたい衝動に駆られた。
前の自転車はよろよろしながらも
なんとか漕ぎ続ける。
それを見て、私も負けじとお尻をサドルから浮かせて
一生懸命ペダルを漕ぐことに集中した。
まだ学校を出たばかり
それなのに
「今日は帰るの大変そうだね」
「気合い入れて帰らなきゃ」
教室から狂ったように揺れる木の枝を見ながらしたそんな会話が
遠い昔のようだった。
遠くにある愛しの我が家のリビングに思いを馳せ、
一瞬家の中にいるような錯覚に陥った。
風のない丈夫な壁に守られた静かな我が家。
はやく家に帰ってふかふかのソファで
おやつにプリンを食べるんだ。
口の中でとろける甘い甘いプリン。
夕飯前だからお母さんに怒られちゃうかな。
しかし強い風のせいで一瞬にして現実に引き戻される。
風に心を折られかけたが、
私には家にプリンが待っている!
風に向かって重いペダルを漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ
家にあるプリンに思いを馳せながら。
「あっ!!!」
突然前から声が流れてきたと思ったら、
前を走っていた友達の自転車から横に足が伸び、
ピタリと止まった。
私も慌てて自転車を止める。
ドクドクと体中を血がめぐる音がする。
「どうしたの?!」
私が叫ぶと、
友達は自転車から降りると
こちらを勢いよく振り向いた。
「もしかしてだけどさ!」
友達は真剣な顔をしながら
風に負けないくらい力強い声で言った。
「これ、自転車押して歩いた方が進むの早くない!?」
こっちを振り向いた友達の顔に
風で髪の毛が張り付いていた。
「・・・そうかもしれない。」
私はなんだか全てがストンと落ちたように感じて、ぽつり。
「歩こっか。」
「そうだね。」
少し疲れてしまったけど、
私たちはなんだか面白おかしくて大声で笑った。
自転車を押しながら2人で並ぶには少し狭いあぜ道。
私たちは一列で自転車を押していた。
「家遠いね!」
前から流れてくる声。
「そうだねー」
私は答えた。
「なんだって?!聞こえないよぉー」
自転車で進んでも
歩いて進んでも
風の強さは全く変わらなくて、
「そ!う!だ!ね!え!!!」
私はおかしくて笑いながら叫んだ。
漕いでも漕いでもなかなか前に進まない自転車
私は思わず耐え切れなくなって
前を進む自転車に大声で叫んだ。
「なぁに?!聞こえない!」
風にのって前の自転車から声が流れてきた。
「きょうは!かぜが!つよいね!!!!」
もう一度、
こんどはもっと大きな声で
前の自転車に向かって叫んだ。
風が口の中に入ってきて、
口を閉じようとすると
カピカピな前歯に上唇が引っかかった。
「そうだねー!」
前の自転車から声が流れてきた。
中学校からの帰り道。
あぜ道を風に向かって
一生懸命自転車を漕いでいた。
前の自転車を漕ぐ友達のヘルメットからは
ぼさぼさになったおさげ髪が覗いている。
スカートは足に絡みついて、下に履いている体育着の短パンが見えていた。
耳元を風が通り過ぎ、
重くて速い音が体全体を包み込んだ。
幸い季節は夏に入る一歩手前で
ちょっと寒いかもしれないけど大丈夫かもしれない、
そんな空気が身体を押さえつける。
こんなに涼しいのにヘルメットの中は暑く蒸れている
一度ヘルメットを取って風を入れたい衝動に駆られた。
前の自転車はよろよろしながらも
なんとか漕ぎ続ける。
それを見て、私も負けじとお尻をサドルから浮かせて
一生懸命ペダルを漕ぐことに集中した。
まだ学校を出たばかり
それなのに
「今日は帰るの大変そうだね」
「気合い入れて帰らなきゃ」
教室から狂ったように揺れる木の枝を見ながらしたそんな会話が
遠い昔のようだった。
遠くにある愛しの我が家のリビングに思いを馳せ、
一瞬家の中にいるような錯覚に陥った。
風のない丈夫な壁に守られた静かな我が家。
はやく家に帰ってふかふかのソファで
おやつにプリンを食べるんだ。
口の中でとろける甘い甘いプリン。
夕飯前だからお母さんに怒られちゃうかな。
しかし強い風のせいで一瞬にして現実に引き戻される。
風に心を折られかけたが、
私には家にプリンが待っている!
風に向かって重いペダルを漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ
家にあるプリンに思いを馳せながら。
「あっ!!!」
突然前から声が流れてきたと思ったら、
前を走っていた友達の自転車から横に足が伸び、
ピタリと止まった。
私も慌てて自転車を止める。
ドクドクと体中を血がめぐる音がする。
「どうしたの?!」
私が叫ぶと、
友達は自転車から降りると
こちらを勢いよく振り向いた。
「もしかしてだけどさ!」
友達は真剣な顔をしながら
風に負けないくらい力強い声で言った。
「これ、自転車押して歩いた方が進むの早くない!?」
こっちを振り向いた友達の顔に
風で髪の毛が張り付いていた。
「・・・そうかもしれない。」
私はなんだか全てがストンと落ちたように感じて、ぽつり。
「歩こっか。」
「そうだね。」
少し疲れてしまったけど、
私たちはなんだか面白おかしくて大声で笑った。
自転車を押しながら2人で並ぶには少し狭いあぜ道。
私たちは一列で自転車を押していた。
「家遠いね!」
前から流れてくる声。
「そうだねー」
私は答えた。
「なんだって?!聞こえないよぉー」
自転車で進んでも
歩いて進んでも
風の強さは全く変わらなくて、
「そ!う!だ!ね!え!!!」
私はおかしくて笑いながら叫んだ。
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