【完結】『実録!ライダーを襲う美幌峠の女幽霊!』

蒼井輪

文字の大きさ
9 / 11

「ラストバトル」

しおりを挟む
「ラストバトル」

私は、ほっとして、交番の前に横付けしたバイクの前でへたり込んでしまいました。バイクのリアバックに残された食い込んだ数本の女の爪が生々しく壬生い光を放っていました。
(あー、助かったんや、俺・・・。)と思ったところ、背後から、激しい息遣いが聞こえてきます。激しい、ゼイゼイといった呼吸音です。かすかに
「貴様・・・」
と女の声が聞こえた気がしました。

恐る々々、振り返ると、そこに停めた私のバイクのリアシシートはぐっしょりと濡れ、黒い長い髪が何本もまとわりついていました。バイクの下から、大量の水が私のほうに流れ出てきています。
女の姿は見えません。(!!!奴か!こうなったら殺るしかないのか!)私は、ウエストバックに入れていたドライバーを右手で逆手に握り、ゼイゼイと聞こえる方にゆっくりと近づきました。
すると、突然、バイクの反対側から、先ほどの女がずぶ濡れの姿で飛び出してきました。あわてて、バイクを女側に蹴り倒しました。

「ぎゃ~っ!」
とこの世のものとは思えない声と発し、女は私のバイクの下敷きになりゼイゼイとあえいでいます。
「貴様~!バイクをのけろ~!殺してやる~!」
切れ切れの息で騒ぎ、バタつきますが、8キロの全力疾走ですっかり体力を奪われていたのでしょう。もがくだけでバイクは1センチも動きません。
交番の照明で照らされた、女は大量の汗(?)でワンピースはぐじゃぐじゃでした。やはり、足は見えません。しばらく、私へ悪態をつけるだけつき騒ぎ続けましたが、はたと暴れるのをやめ、女は中空を仰ぎ呟いた。

「負け・・た・・わ・・。あ・・な・たの・・よ・うに・なに・・が・なん・・でも・諦め・ない・・人に・生きて・いる・・間・に・逢いた・・かった・・・。」
「・・・・・・・。」
「ここま・で・・来る・・なら、乗せ・て・・いって・・・欲し・・かった・・・。疲れ・・たわ・・・。」
と言った彼女の顔は、峠で見せた、鬼の形相ではなく、何か「やり切った感」を感じさせる、優しいものでした。しかし、私は、バイクを起こして飛びかかられたらいやだと思い(心が狭くてすいません。ただ、その時は全く余裕がなかったのです)、バイクはそのままに、上になっている左のリアバックから、1本のアサヒスーパードライを取り出しました。
「自分で缶持てるか?」
ゆっくりと首を振る彼女。もう全ての力を使い果たした様子でぐったりとしています。

私はビールの栓を開けバイクの下敷きになっている彼女の口元に注いでやりました。
「こ・・んな・・わた・し・・にも・・・や・さ・・しく・・し・て・くれ・て・・・。おい・・し・いわ・・・。あ・・り・・・・が・・・・・・・」
とささやくとすーっと消えていき、一つの蛍の明かりのような黄色い光の点となり、空に消えていきました。
なぜか、私の右ほほに涙がつたいました。
ガチャ、ガチャと背後で鍵が開く音がしました。

「おー、どーした。ぽんぽん(バイクのこと?)こけとるがね。なんかあったんかね。(バイクの奥にころがるスーパードライの缶を見つけて)おいじょー、こげんとこで飲んどったらいかんどー。」
とお巡りさんが首にタオルをかけて出てきました。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...