スキルを駆使して人生勝ち組っ!R

momo

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幼稚園

第1話 死んで逆行してスキル取得

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 私の人生は、振り返れば失敗の履歴書だった。

 中学受験に失敗し、高校受験に失敗し、大学受験に失敗し、第一希望の会社の面接に落ち、滑り込んだ先は絵に描いたようなブラック企業。終電帰りは当たり前、休日出勤も当然。気づけば肌は荒れ、目の下には隈が刻まれ、まだ三十代後半だというのに四十代に間違えられる始末だった。

 容姿は、若い頃はそこそこだったと思う。けれど美容に気を遣う余裕なんてなかった。愛嬌もなければ、これといった特技もない。努力はしてきたつもりだったけれど、結果はついてこなかった。

 ――負け犬。

 その言葉が、私の人生を一言で表していたと思う。

 そんな私が、なぜか幼少期に戻っていた。

 死んだ記憶はない。事故に遭った覚えもない。ただ、気がつけばぷにぷにの紅葉のような小さな手を見下ろしていた。

 「夢か……」

 ころん、と寝返りを打とうとした瞬間、勢いよく布団が剥がされた。

 「燈由ひよりちゃん、幼稚園に行く時間よ」

 若かりし日の母が、にこにこと笑っている。

 リアルすぎる夢だ。そう思いながらも、私はされるがまま幼稚園の制服に着替えさせられ、バスに押し込まれた。

 ぼんやりと一日を過ごし、帰宅後に着替えているときだった。

 「……何これ?」

 視界の端に、半透明のアイコンが浮かんでいる。

 恐る恐る指で触れると、ブーンという電子音と共に青いウインドウが展開された。

 【受け取り箱】【ステータス】【デイリー】

 三つの項目が並んでいる。

 夢にしては完成度が高すぎる。私はまず【受け取り箱】を押した。

 そこには“神様からの手紙”。

 タップすると、ぱさりと本当に紙が手元へ落ちてきた。

 『手違いで死なせてしまった詫びとしてスキルを授ける。良い人生を』

 「……私、死んでたのか」

 さらっととんでもないことが書いてある。

 でも、まあいい。生きていたとしてもブラック企業に人生を削られていただけだ。どうせなら、この二周目は堅実に生きたい。

 目指すは安定の象徴――公務員。

 「ステータスオープン」

 何も起きない。念じても駄目だ。仕方なくアイコンをタップすると、再びブーンという音。

 ---------STATUS---------

 名前:秋月あきつき燈由ひより
 種族:人間
 レベル:1
 年齢:3歳

 体力:8
 魔力:21
 筋力:3
 防御:1
 知能:200
 速度:4
 運 :31

 ■職業:幼稚園児
 ■装備:綿のパジャマ
 ■スキル:完全記憶∞・空間魔法アイテムボックス∞・成長促進∞・経験値倍化∞・スキル生成∞
 ■ギフト:なし
 ■称 号:なし
 ■加護:なし
 ■ボーナスポイント:10000pt

 知能200って何。三歳児の数値じゃない。

 完全記憶∞があるなら、受験は余裕だろう。成長促進と経験値倍化も破格だ。

 けれど――空間魔法アイテムボックス

 ここ現代日本だよね?

 まあ重い荷物を持たなくて済むなら悪くない。

 私はスキル生成に目を向けた。

 一覧には、魅了、高速演算、並列思考、聖魔法、属性魔法……とんでもないラインナップだ。

 男っ気ゼロで終わった前世。今世こそ彼氏が欲しい。

 勢いで【魅了】を生成。

 だが熟練度0。

 「意味ないじゃん!」

 ならばボーナスポイントだ。魅了にPTポイントを振ると、熟練度1/100になった。

 鏡を見る。

 ……特に変化なし。残念。

 次はレベル上げだ。

 魔力があるなら消費すればいい。

 私は空間魔法アイテムボックスに熊のぬいぐるみを入れてみた。

 魔力消費5。

 クレヨンも入れる。やはり5。

 ならばまとめて入れれば効率がいいのでは?

 トートバックに絵本、ハーモニカ、帽子、ハンカチを詰め、それごと収納。

 やはり消費は5。

 「まとめた方が得だ」

 内心でガッツポーズを決める三歳児。

 表示はこうなっていた。

 空間魔法アイテムボックス
  L熊さん人形
  Lクレヨン
  Lトートバック
   L絵本
   Lハーモニカ
   L帽子
   Lハンカチ

 よし、便利。

 次は【デイリー】。

 1、母親の手伝いをしよう
 2、父親を労おう
 3、勉強をしよう
 4、お礼を言おう
 5、友達と仲良くしよう

 健全すぎる。

 私は母の元へ向かった。

 「お母さん、手伝いしたい」

 「あら? ママって呼ばなくなったのね」

 しまった。

 だが母は天然だ。すぐに笑って洗濯物を任せてくれた。

 私は丁寧に畳む。父のシャツだけは除外。アイロンが必要だからだ。

 三歳児とは思えない手際で山を片付けると、母は目を丸くした。

 「燈由ひよりちゃんは天才なのかもしれないわ!」

 羞恥プレイだ。中身はアラフォーだぞ。

 続いて勉強。

 「将来、公務員さんになりたいの」

 我ながら苦しい。

 けれど母は信じてくれた。

 ありがとう、と素直に言う。

 じゅん君と遊び、帰宅した父の肩を叩き、デイリーを全達成。

 受け取り箱が点滅した。

 チュートリアルクリア報酬。デイリー報酬。

 小瓶がカシャンと落ちる。

 鑑定を生成し熟練度5へ。

 青が経験値ポーション(大)、水色が(中)、ピンクが体力回復、黄色が魔力回復。

 そして【ミニステータス】。

 ミスステータス
  L魅力41・芸術10・運動21・学力102・社交性9

 経験が数値化されるらしい。

 つまり努力すれば確実に伸びる。

 前世で欲しかったものだ。

 神様ガチャチケットを握りしめ、私は深呼吸した。

 堅実に。地味に。安定第一。

 ――公務員一直線。

 そう決意したはずなのに。

 画面の端で、【芸術】の数値がわずかに光ったことに、この時の私はまだ気づいていなかった。

 こうして、出鱈目で、だけど確実にやり直せる二度目の人生が始まったのだった。
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