琴陵姉妹の異世界日記

momo

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第一章【終わりの始まり】

第10話 運悪くないですか?姉よ

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 私の超厳選マットは、やはり世界を救うレベルで優秀だった。

 異世界だろうが森のど真ん中だろうが、睡眠の質は文明が決める。

 おはようございます。
 世界を超えたアイドル、琴陵ことおか容子まさこです。

 ……なんちゃって。

 そんな脳内ナレーションを決めていたら。

 「………起きろっつってんだろうがよ!」

 がしっ、と胸倉を掴まれた。

 そして――

 バシィッ!
 バシィッ!
 バシィッ!

 三連往復ビンタ。

 「いたっ、痛いぃ! ちょっ、朝っぱらから何すんのよ!!」

 森に私の悲鳴が響き渡る。

 せっかく王子様と結婚する夢のクライマックスだったのに!!

 だが宥子ひろこは清々しい顔で私を見下ろし、

 「何度声掛けても起きないからでしょう。朝飯用意したから早く着替えて顔洗え。」

 それだけ言って、さっさとテントの外へ。

 酷い。
 理不尽。
 異世界に来ても暴力姉は健在である。

 私はぶつぶつ文句を言いながら着替え、武器を装備。
 ウエストポーチから携帯を取り出し、更新チェック。

 ――よし、推し作家の更新なし。

 異世界でもネットが繋がる安心感よ。

 

 外へ出ると、宥子ひろこが朝食の準備をしていた。
 朝の森は澄んだ空気に満ち、木漏れ日が揺れている。

 ……それなのに。

 「もうちょっと、優しく起こしてくれても良いじゃない」

 私が抗議すると、

 「十分優しいと思うけど? 誰かさんと違って弱っている腰を重点的に攻撃してこないだけマシよね。」

 ぐさり。

 視線が泳ぐ。

 宥子ひろこはアイテムボックスからティーポットを取り出し、慣れた手つきで紅茶を注ぐ。

 ……便利すぎない?

 「熱いから気を付けてね」

 湯気の立つ紅茶。
 並べられるヨーグルトとコーンフレーク。

 私はしょんぼりした。

 「これが朝食ってしょぼくない?」

 ぽつり。

 次の瞬間。

 「お前、目くそ鼻くそっていう諺があるだろう。」

 鬼の形相。

 「この間、私にお茶漬けと冷凍から揚げ出したお前に言われたくない。黙って食え。」

 森に響くガリザリ音。

 ……ぐぬぬ。

 だが反論は飲み込む。
 戦いは避けるに限る。

 

 準備を終え、私たちは森へ踏み込む。

 索敵開始。

 十分後。

 嫌な予感。

 「……キラービーの大群」

 黒い影が空を埋める。

 羽音が鼓膜を震わせる。

 「容子まさこ! 連射出来るんだよね!? 身代わり人形持ってる!?」

 「勿論!」

 私はM85を構える。

 開戦。

 ダダダダダダ!!

 弾丸の嵐。

 だが蜂共、回避しやがる!

 「くっ、ムカつく!」

 スキル不足を痛感。

 そして――

 巨大な影。

 「女王蜂来たぁぁぁ!!」

 ラスボス登場である。

 「乱射して足止め! 私はテーザーで落とす!」

 「りょ!」

 弾幕最大。

 無駄玉? 知るか!

 蜂の動きが鈍る。

 「科学の力を舐めんなぁあっ!!」

 高圧電流が炸裂。

 女王蜂が痙攣し、崩れ落ちる。

 勝利。

 

 死骸が光に変わり、ドロップ品へ。

 洗濯籠がフル稼働。

 蜂蜜、毒針、羽、魔石。

 そして――

 赤い魔石(大)。

 さらに。

 「女王蜂の心臓」

 宝石のように美しい。

 戦利品一覧。

 蜂の羽×1068枚
 蜂の子(死骸)×302匹
 ロイヤルゼリー×102個
 毒針×534個
 黄色の魔石(小)×32個
 青い魔石(小)×28個
 赤い魔石(中)×3個
 赤い魔石(大)×1個
 女王蜂の心臓×1個

 ……えげつない。

 534匹討伐。

 私は震えた。

 「宥子ひろこが高レベルで良かった……」

 本音である。

 宥子ひろこは伸びをして、

 「今日はここまで。薬撒いて休憩」

 虫よけと魔物除けを散布する。

 私はそっとステータス画面を開く。

 レベルは?
 経験値は?
 分配は?

 異世界初の本格戦闘。

 恐怖よりも――

 ワクワクが勝っていた。

 さあ。

 次はどんな金策が待っているのか。

 私はにやりと笑った。
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