完全犯罪DIARY

御天 皐月

文字の大きさ
1 / 1

石川紫乃

しおりを挟む
 中学の三年間、必死に努力して入った高校は、周辺で偏差値一、二位を争う程の名門校だった。その高校の中で僕は、文芸部に入部した。
 僕が小説の世界に取り込まれたのは、小学校最終学年の頃だった。毎朝に読書時間があり、そのための本を買っていた。そのころの僕は読書に興味など全くなく、表紙を見て適当に選んでいたほどだ。しかし、その日は家で目的の本を決めてから書店に出た。聞いた話によると、自分と同年代の小学生作家がデビューしたらしい。
 書店に着き、文庫本サイズのライトノベルが並べられている棚を見ると、その小学生作家が書いたとみられる本が多くの面積を占めていた。
 その本の帯には「天才!小学生ラノベ作家“石川紫乃”期待のデビュー」と、強調された字体で書かれ、著名作家のものとみられるコメントがいくつか添えられていた。
 それを一冊買って家に帰ると、その本を早く読みたくなってうずうずしていた。
 結局、翌日の朝まで待てずにその本を読み始めた。
 読み進めてみると、そのころの僕にもほかの作品との違いがはっきりとわかった。一つ一つの単語の選び方、心情変化の表し方。そのすべてが完璧で、当時の僕はその小説に飲み込まれたような感覚に陥った。
 心のどこかに穴をあけられ、そこにいろいろなものを詰め込まれるように、不快ではなく、むしろ気持ちいいようなショックに襲われたのは今でも覚えている。
 小学生というのは、様々な作品に簡単に影響される。ここからの展開は容易に想像できるだろう。
 自分も石川紫乃のような小説を書けるようになりたいと思いとりあえず一回自分なりに小説を書いてみた。当然のようにごみのような文章だった。これが普通だろう。小学生であんな文が書ける紫乃のほうがおかしい。
 そんないかれたスタートダッシュを決めた紫乃は作業ペースもいかれていた。300~400ページもの作品を一か月に一回出版していた。しかもそれらは漏らすことなく売れわたり、どの作品も二か月以内には百万部以上の売り上げをたたき出していて、それは四年たった今でも崩れていない。いつからか、紫乃には“異世界の住人”という二つ名がつけられた。
 あれからの僕はというと、あっという間に石川紫乃の作品に吸い込まれ、紫乃の作品はすべて購入し、紙がよれよれになり、ところどころ破けてしまうくらいに、何度も読み返した。
 そのおかげというのか、紫乃の作品は一字一句違わず覚えていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...