老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

文字の大きさ
24 / 485

第24話 竜、来客をもてなす

「いい家屋ですな」
「夫と私で作ったんですよ。ゲストルームもあるんですけど、リヒトが大きくなったら使うことになりそうですね」
「おお……村の家より全然いいわね……」

 モルゲンロートとバーリオはリビングのテーブルにつき、村人はソファに座っている者や許可を取ったうえで他の部屋を見せてもらっていた。
 家屋は小屋と違い木造の平屋で出来ているが、木は良いものを選別し、なるべく広く作っているため村人からするといい家に見える。

「はい、お茶です。お口に合うといいのだけれど」
「ありがとう。ほう、不思議なお茶だな」

 嬉竜草で作ったお茶を見てモルゲンロートが香りを嗅いで感想を口にする。
 そこで以前、飲んだことのある村人がトワイトからお茶を受け取りながら言う。

「陛下、このお茶とても美味しいですよ。前、持ってきてくれた時に飲んだんですけど、体が軽くなった気がします」
「嬉竜草という草で作ったお茶でドラゴン達がよく飲むお茶なのじゃ」
「あまり流通がない草ですね……では私から」

 ザミールが名前は知っているけど流通はしていないと言いつつお茶を一口。続いて従者でもあるバーリオも、毒見役を兼ねてモルゲンロートより先にお茶に口をつけた。

「……!」
「……!?」
「お、どうした……!?」

 二人の眼がカッと見開いたのでモルゲンロートがびっくりして尋ねる。するとバーリオが小さく頷いてからお茶を勧めた。

「問題ない……いや、問題はあるのかもしれませんが……」
「ふむ? ……これは……! 美味い……!」
「うふふ、良かったです」
「うー♪」

 モルゲンロートもカッと目を見開いてお茶を飲む。その様子を見てトワイトと、ディランが抱っこしているリヒトが嬉しそうに笑った。

「しかし、本当に人間と変わらない生活をしているのだな」
「楽じゃからな。こうやって人間の子を拾って育てることもできるしのう」
「もう、後は余生を過ごすだけなのでゆっくり暮らせたらと思っています」

 モルゲンロートの質問にディランとトワイトが返す。そこで村人が疑問を投げかけた。

「そういえばドラゴンってどれくらい生きるんだ? ディランさん達が二千年生きているんだから実はドラゴンがいっぱいいるとか?」
「多分ワシは後二百年くらいで寿命が来るじゃろうなあ」
「私もそれくらいですね。個体差がありますから五百年くらいしか生きられないドラゴンも多いですよ。食生活とかでも変わりますし」
「世知辛いな……」

 三千年近く生きる個体と五百年くらいしか生きられない個体差を聞いて人間達は冷や汗をかいていた。特に口に指を当ててトワイトが言った食生活が刺さる。

「む……済まぬ、トイレはあるだろうか?」
「そこの廊下を右じゃ」
「助かる……!!」
「陛下!?」

 すると突然モルゲンロートが腹を抑えて立ち上がり、鎧を脱いでトイレへと駆けこんだ。慌てるバーリオだがお構いなしにモルゲンロートはトイレへ消えた。
 そして数分後に戻ってくると――

「ふう……」
「だ、大丈夫ですか陛下? あのお茶に変なものが入っていたということは……」
「む? いつものお茶じゃ」
「ええ」
「しかし……」

 バーリオが訝しんでいると、モルゲンロートが彼の肩に手を置いて笑う。

「大丈夫だ。実は便秘気味だったのだが、お茶を飲んで急に出るようになっただけだ」
「あら、それは良かったですね! 村の人達もそうでしたけど人間には薬みたいな効果があるのかもしれません」
「ああ、体がスッキリしたよ」
「このお茶……健康茶として売れば……」

 スッキリした顔でまた鎧を着こむモルゲンロート。そんな中、お茶をちびちび飲みながら商売のことを考えていた。

「これは人間に扱うのは難しいみたいだから売り物にはならないかもしれませんよザミールさん」
「そ、そうですか……」
「嬉竜草も珍しくはないが山の上の方に生えておることが多いし、採るのは難しいと思うぞ」

 ディランが追加で情報を与えると、ザミールは顎に手を当ててなにかを考えていた。
 
「まあ、この山は好きに使ってもらって構わない。魔物も多いが、お二人ならなんとかなるだろう。人間が迷い込んできて襲われていたら助けてくれるとありがたい」
「わかったわい。険しい場所じゃし、城というところに比べると狭いが遊びに来てくれても構わない」
「ははは、息抜きに来させてもらおうかな。この茶は美味い」
「その時はお供しますよ陛下」

 するとザミールが笑顔で言う。

「私は村で会えれば助かります!」
「むしろ村にはいつでも来てくれよ。ディランさんなら強いし、なにかあったら守ってくれそうだ」
「それは構わんが、そうそうなにか起こることもないじゃろ」
「村はここから見えますけどね」

 静かな場所なので避暑地のような感覚で使えるかもとモルゲンロートは考えており、村人は守り神という感覚で接していた。
 談笑していたところでバーリオが外に目を向けて口を開く。

「そういえば騎士達のことを忘れていた。入れ替わりましょう」
「そうだな」

 モルゲンロート達が腰を上げたところで、ディランが手を打って奥を親指で指す。

「そうじゃ、知り合ったのもなにかの縁。モルゲンロート殿、なにか土産を持っていってくれ」
「土産? いいのだろうか」
「ガラクタかもしれんが、なにか気に入ったものがあればというところじゃな」
「い、行きましょう陛下!」
「お、おう……」

 ディランの言葉に一番食いついたのはザミールだった。そこでペット達が玄関から家へ入って来た。

「こけっこ♪」
「「「ぴよー♪」」」
「ふう、陛下どうですか?」
「あら、お外に居たのね? すみません騎士さん達。相手をしてもらって」
「いえ、色々と衝撃で……」
「あーう♪」

 何故かご満悦のペット達が一列に並んで部屋に入り、リヒトを抱っこしているディランの足元に集まって来た。
 そこでトワイトにリヒトを渡し、ディランは立ち上がる。

「では騎士達も一緒に行くか。その間に婆さん、お茶を用意してやってくれ」
「はいはい。行ってらっしゃい♪」

 来客が楽しいのかトワイトは軽い足取りでキッチンへ行き、ペット達も着いて行った。

「ではこっちじゃ」
「承知した」
「い、いいのかな……?」

 村人たちは困惑していたが、とりあえず全員ということで裏の倉庫になっている洞穴へと向かった
感想 875

あなたにおすすめの小説

畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜

グリゴリ
ファンタジー
 木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。  SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。  祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。  恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。  蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。  そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。  隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。