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第一章:旅立ち
その6:冥王は冒険者ギルドへ行く
しおりを挟む「……朝か、眩しいな」
質素なカーテンは陽の光を完全に遮ることはできず、陽ざしが眩しくて目を覚ます。
俺の居る領は大抵の期間が薄暗く、陽の光を浴びて起きるということはほぼ無いので妙な感覚だ。
とはいえ、懐中時計を見るといつも起きる時間だったので体内時計はきちんと機能しているらしい。
「行くか」
ハンバーグは美味かったが、さすがに寝床は城にあるベッドとは違い、硬い木に薄い布団で寝たため体が悲鳴を上げていた。
「おう、おはよう早いな」
「いつもこの時間に起きるんだ、それより昨日は世話になった」
「気にすんな、それよりこれからどうするんだ?」
「金だな。まずは稼ぐことを考えようと思っている。世話になりっぱなしで悪いが、なにか仕事を知らないか? それと勇者の居場所を知りたい」
こうなったら恥かきついでにと尋ねてみると、店主は俺の剣に目を向けてから顎に手を当てて口を開く。
「おめえ、立派な剣を持っているけど冒険者じゃないのか? ギルドに行けば仕事にありつけるだろ」
「冒険者……」
そういえば衛兵もそんなことを言っていたな。
確か人間達が魔物達を狩り、素材を集めるような依頼や、俺達魔族との小競り合いをするために雇われる傭兵などの仕事をすると聞いたことがある。すぐに仕事があるなら使うべきか。
「そうさせてもらおう。度々すまない」
「おう、ウチで働いてもらってもいいんだが、お前さんみたいに不愛想なやつは使えねえからよ」
「飯は美味いが口の悪い店主のところでは働きたくはないし、おあいこだろう」
俺が反撃をしてやると店主は一瞬言いよどみ、口元に笑みを浮かべて片手を上げて俺に言う。
「へっ、おもしれえやつだ。金ができたらまた食いに来いよ」
「そうさせてもらう」
「外に出てから右に真っすぐ向かうとその内でかい建物に突き当たる。そこがギルドだ。この時間でも誰かいるだろ」
その言葉に俺は片手を上げて店から出ると、言われた通り大通りを歩く。
「人間は好戦的と聞いていたが、どうやらそういう人間ばかりではないようだな」
「父ちゃん、お菓子買える?」
「頑張って売ったらな」
早朝なので人通りはまばらで、商人らしき者やどこかで市場でもあるのか、籠を背負った親子などが通り過ぎていく。
「……平和なものだな」
俺達魔族の日常とそれほど変わらないが、恐らく俺が魔族だと知られれば全力で殺しに来るに違いない。
二百年前……俺が生まれる前にあった戦争は相当悲惨だったらしく、魔族に恨みを持つ人間は数多いと聞く。
俺に勝てる人間はそう居ないと思うが、正体がバレないように警戒するに越したことはないだろう。
「ここか」
看板に『冒険者ギルド キアンズ』と書かれているので間違いないだろう。キアンズは衛兵が町の名前として口にしていた気がする。
「邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ! あら、初めて見る顔ね? ま、いいか。キアンズの冒険者ギルドへようこそ。本日はどういったご用件ですか」
建物内に目を向けながら、受付だと思われる場所に立つ女性に向かって歩いていく。
……女性とはあまり関わりたくないが、仕方ない。
それにしても早朝だというのに、武装した人間達がテーブルに座って談笑していたり、掲示物を見ながら地図を確認しているのが見えるな。
仕事に対して勤勉なのだろうか? 魔族の軍に入ったやつは規則正しい生活をしているものの、集合に遅刻する者は後を絶たない。
一般の魔族などは食えればいいという適当な者も多いので、昼から起き出して夜遅くまで酒を飲んで過ごすやつもザラだ。
「……人間の冒険者か、侮れんかもしれん」
「なにか?」
「いや、なんでもない。早速だが、俺は金を稼ぎに来た。荷物を野盗に奪われてしまって金が一ルピも無い」
「あらら、それはお気の毒に……最近、商人が狙われるという話を聞いていますしお察しします」
女は深々と頭を下げてそんなことを言い、すぐに顔を上げてから俺に尋ねてきた。
「さて、同情はしますがこの世界は弱肉強食……生きていただけでも儲けものと思いましょう! ではギルドカードのご提示をお願いします、まだ早朝なので仕事はよりどりみどりですよ」
弱肉強食とはこの女、いいことを言う。
そんなことを思いつつ、ギルドカードとやらがなんなのか分からず俺は顎に手を当てて首を傾げる。
「……?」
「いやいや『?』じゃありませんよ、ギルドカードですよ。冒険者なら持ってますよね」
「俺は冒険者じゃない、ただの旅人だ」
「旅人!? 腰の剣は飾りですか……?」
そうか、剣があればそう思われてしまうか……ここは適当な嘘をついておくのが得策だな。
「一応戦えるが、俺は冒険者じゃない。盗賊に襲われて金がなくてな、手っ取り早く稼ぐために冒険者になろうじゃないかというところだ」
「なろうじゃないかって……なぜ上から目線なのかわからないし、今までどうやって生きていたのか分からないわ……。ま、いいか、イケメンだし。それじゃ、まずギルドカードを作るからちょっとこっちへ来てもらえるかしら? あ、私はアレイヤよ、よろしく!」
「俺はザガムだ、よろしく頼む……こら、近づくんじゃない」
「え、ちょっと触れただけじゃない」
……やはり女性は苦手だと思いながら、俺はアレイヤの後ろについていくことにした。
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