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第一章:旅立ち
その8:冥王は適性試験を受ける
しおりを挟む「……」
「ちょっと、無言でどこへ行くつもりよ!」
「こら、触るなと言っているだろ」
「あり得なくは無いけど、Eランクで出せる魔法じゃないわ、あんた何者……?」
やっぱりそう来るかと、彼女を振りほどきながら後ずさる。
このままギルドカードを持って逃走すべきかとも考えるが、先立つものは必要だし、勇者の情報も聞かないといけない。
……町を蹂躙した方が圧倒的に楽だが、人間に対して静観を決めている大魔王に知られたら俺は恐らく消されるだろう。
毎回突っかかって生き延びているのはあいつが楽しんでいるからで、逆に言えば本気になれば俺を殺すことなど容易い。
そんな訳で逃げるよりも言い訳をした方が楽かもしれないと、ため息を吐いてからアレイヤに答える。
「たまに魔力が暴走してとんでもない魔法が出ることがあるんだ」
「イケメンのくせにしれっと嘘を言うわね」
「いや、本当だ。その証拠にもう一回いくぞ」
「ちょっと、被害を大きくする気!?」
アレイヤの制止を聞かず、俺はもう一度、今度は万分の一の力でファイアを放つと、子供の頭程度の大きさをした火球が折れかかった案山子に飛んでいき勢いよく燃え上がる。
「こんな感じでどうだ?」
「……なんで疑問なのか意味が分からないけど、これが本来の力ってこと?」
「ああ、魔力が不安定なんだと言われたことがある」
……子供の頃に、とは言ってやらない。だが、魔力が不安定だと言われたことがあるので嘘じゃない。
「あまり聞いたことがないけど、いざってときにそれは怖いわね。でも、今程度の魔法ならEランク相応しらね。魔法使いには向かないけど」
「ふむ。さっき水晶でEランクとして登録されたのに、ここで試す意味があるとは思えないんだが?」
「ま、適正検査みたいなもんね。特にあんたってただの旅人だったんでしょ? 剣も飾りだとしたら魔物討伐には行かせられないわ。例えば採集しかできない子に魔物討伐は自殺を応援するようなものと思わない?」
曰く それでも強くなればそのあたりは緩くなるらしく、それがギルドの昇格試験だそうだ。
例えば俺が強くなったからEランクになりたいと言えば、昇格試験に合格すればいいらしい。
「それじゃ、後は剣……でいいのね? 木剣だけど、模擬戦をしてもらうわ」
「わかった」
アレイヤは俺の破壊した案山子を見て呆然としている男達の一人のところへ行き、なにかを話すると、木剣を持って帰って来た。
「彼と模擬戦をしてもらうわ。剣技は私には判定できないから。よろしくね、ライ」
「初めまして新人君。俺はライという」
「ザガムだ、よろしく頼む」
少々たれ目がちな顔をしたライは嫌味ではない笑みを俺に向けて握手を求めてきたのでそれに応じる。
「それじゃ、早速やろうか」
「承知した」
さて、Eランクの冒険者として目立たないよう活動するためにはこのライと言う男に負けないといけない。さっきは失敗したが、今度こそうまくやろう。
「始めて」
アレイヤの掛け声と共に、俺とライは即座に距離を取って対峙し様子を見る。力を抜いて持っている剣は一見隙だらけだが、余計な力が入っていないので確実な一撃を生み出すことができる。
そんなことを考えていると、ライが口を開いた。……少しずつ間合いを詰めながら。
「……ふむ。君、ランクをもう見たんだろう? 教えてくれないか?」
「Eランクだ」
「!? では冒険者になる前は剣で狩りでもしていたのか?」
「そんなところだ」
「恐ろしい逸材だな……だいたい素人ってのは、イキって、いきなり飛び掛かって来るもんなんだがな」
ライは鼻の下に滲んだ汗を軽く拭いながら小さく呟いた。
まさかこの強さでもダメなのか……? さっきの魔法と同じく、本来の力よりかなり落としているんだが……もしかして人間に紛れるのは難しい、のか……?
俺は冒険者になろうとしたのを早速後悔し始めていた。
もうやめようかと一瞬思ったものの、ここまで来たのだからというやるせなさも感じたので、俺は適当に突っ込むことにした。
「うおおおおお!!」
「む……!」
どうだ、この素人感丸出しの攻め……! 俺は大振りで隙だらけの斬撃を繰り出すと、ライは半身で回避し反撃をしてくる。
「いや、やはり素人か……! たぁ!」
「ぐ……!?」
戦闘力を極限まで落としているのでやはりダメージはあるか。だが、大魔王の攻撃に比べれば大したことはない。
「はっ、それ!」
「お、おっと……!」
それから数度の打ちあいで、俺は殆んど手を出さずに防戦一方だった。
実際に彼の剣は鋭く、今の能力だと反撃に転ずるのは相打ち狙いが精一杯と言ったところだろう。さらに俺がEランクだと言っているからか、少々手加減していてこの強さなので人間の中でも結構強い部類なのかもしれない。
さて、そろそろもう一撃、盛大に空振りをしてもらっておくか……!
「チッ、流石にやるな……せりゃぁ!」
「おっと……!? 無駄が多い、終わりだ!」
「ぐあ」
「そこまで!」
その声でライの動きが止まり、戦いが終了。背中を打たれて転んだ俺が立ち上がっていると、アレイヤが俺を立ち上がらせながら隅を指さして言う。
「今のは痛かったでしょ? あそこに医務室があるから、診てもらうといいわ」
「大丈……いや、お言葉に甘えさせてもらうとしよう」
まだ平気だが、手練れと戦った今、平気なのはまずいかと思いアレイヤが指した方へと歩き出す。
難しいが、この調子でいけば人間に紛れ込めるか。
◆ ◇ ◆
「……なあ、あいつは一体なんなんだ? 本当にEランクなのか?」
「ええ、水晶は確かにEランクを示していたわ。魔法は不安定だけど、剣技を見る限り相応って感じね。どう? 剣士としてはやっていけそう?」
ザガムが立ち去った後、アレイヤがライへ適正について尋ねると、ライは怪訝な顔で顎に手を当てた。
「信じられん……確かにクリーンヒットは数度あったが、Bランクである俺の攻撃をあれだけ捌いていてEとは変じゃないか?」
「そういえば――」
ライにそう言われ、アレイヤは思い返してみればザガムがきちんと『防御』と『回避』をしていたと気づく。
「……なんなのかしらあの男……」
「俺に聞くな……しかしアレは逸材だ、すぐにランクを上げて来るぞ」
「そうね、ちょっとお仕事考えてみようかしら……?」
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