最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第二章:勇者

~幕間1:【王】達の会議~

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 「というわけでザガムが旅に出たらしい」
 「は? ちょ、大魔王様どういうことですか!?」
 「はははは」
 「笑いごとじゃありませんよっ!」
 「おお!? ユースリアちゃん積極的!? あ、締まる、締まってるから!?」

 数か月ぶりに開催された【王】の会議はまるで緊張感の無い大魔王メギストスの一言で会議室が騒然となり、海王ユースリアが胸倉を掴んでメギストスを揺すると、みるみるうちに顔が紫色に変色しだしたので天王であるマルセルが慌てて止めた。

 「待てユースリア!? とりあえず話を聞こう! な? お前興奮しすぎて下半身が正体現してんぞ!?」
 「ふー!」
 「今ので死んでたらユースリアが大魔王だったのね……やっちゃう?」
 「焚き付けるなメモリー! だ、大丈夫ですか大魔王様?」

 浴衣のような服を着て、緑のゆるふわな髪と眼鏡をかけた特徴的な美人女性が不敵に笑いながら首を掻っ切る仕草をするのをマルセルが窘める。

 彼女は【樹王】メモリー。
 南方にある樹海を領地とする【王】で、No.7の最下位の実力だが、草木や花、魔法生物といった眷属を配下に置くからめ手を得意とする。
 そんな彼女や直接攻撃に及んだユースリアに叱るということもなくメギストスは笑いながら口を開く。

 「まあ、私も詳しいことは知らないんだよ、ザガムの執事であるイザールから置き手紙を見せられて知っただけだからね」
 「どこへ行ったのかは分からないのかよ? まあ、居なくてもこっちは困らねえんだがよ」
 「それには同感だよ、ヴァルカン。私もザガムにいきなり襲い掛かられなくて平和というものだ。ザガムの気持ちがちょっと分かった気がするよ」
 「チッ、あいつばっかり面白くねえ」

 【炎王】ヴァルカンは炎のように真っ赤なざんばら髪を揺らしながら頬杖をついてそっぽを向く。
 彼は魔王軍No.3でザガムのひとつ下だが、大魔王の強さに憧れており、倒そうとするザガムを毛嫌いしている。火山から生まれた人型の【王】で、手から繰り出される炎は鉄をも溶かし、吐く息はまともにあびれば火傷では済まない。

 「領地を放置してどうするつもりなのだろうか。メギストス様ザガムを連れ戻しますか? その場合、大地の精を総動員すれば発見するのは容易いと考えます」

 不貞腐れたヴァルカンの横に座っていた岩肌の男がそう言って手を上げると、メギストスは少し考えた後に岩肌の男へ指をさして言う。
  
 「んー【土王】の言うことも……。いや、いいんじゃないかな放置で。ザガムの領地は部下がしっかりやってくれているから大きな問題にはならないだろうしね。なにか問題があれば、親として私が面倒を見ようじゃないか」
 「ま、まあ、確かにメギストス様がザガムの義理の父親というのは知っていますが、よく命を狙う息子に肩入れできますね……」

 紳士な口調をした【土王】ロックワイルドはゴーレムのような肌と大きな体躯が特徴で、土の精霊を通して地域の状況を知ることが出来る優秀な能力を持つ。
 見た目はかなり怖いが、性格は穏やかで守る戦いが得意な彼がそう言うと、メギストスは口元を歪め、【王】達を見ながら高揚した口調で話し出す。

 「まあ、あれくらいの気概が無いと大魔王の椅子は渡せないからねえ。君達も【王】だけど、私の椅子が欲しくないのかい? 手に入ればこの世界は思いのままだ。まあ、維持するだけの実力は必要だけどね」

 すると落ち着いたユースリアがため息を吐きながらメギストスへ言葉を返す。

 「……はあ、そう言われてもNo.2のザガムですら勝てないメギストス様を倒そうとは思いませんよ。ザガムと協力しても難しいでしょうし」
 「いや、あんた今ヤりかけたじゃない」

 メモリーが茶々を入れるが、ヴァルカンがスル―して肩を竦める。

 「というより先代を圧倒的な力でねじ伏せたメギストス様に勝つどころか、突っかかることは不敬だと思うな俺は」
 「慕ってくれるのはありがたいけど、私の気が変わって魔族も人間も滅ぼすとか言い出した時どうするんだい? 諦めて死ぬかな?」
 「それは――」

 急に恐ろしいことを言い出し【王】達は冷や汗をかきながらメギストスにくぎ付けになる。
 
 「あっはっは! 冗談だよ、それにしてもザガムはどこに行ったんだろうね、私を倒すのを諦めたとは思えないから逃げた訳じゃなさそうだけど」
 「修行でもしているのでしょうか?」
 「さあ? とりあえず見合いが嫌で逃げたんじゃないかとはイザールの言だ。ま、今日はウチの息子が居なくなったという話がメインだからこれで終わりとしよう。なにか報告をしたい者は?」
 「特段変わったことはありませんので問題ありません」
 「結構だね。人間達は襲い掛かってきたら殺るくらいは変わらないでくれよ。さ、アンリちゃんとデートなんだ失礼するよ」
 「あ、はい」

 ロックワイルドが返事をしてメギストスは軽い足取りで会議室を出て行くと、メモリーが目を細めて場に居る全員に話しかける。

 「ねえ、ザガムってどこに行ったと思う? なーんか、大魔王様は知ってそうなんだよね。ユースリアはお姉ちゃんとしてどう思う?」
 「誰がお姉ちゃんですか! ……まあ、危なっかしいから世話を焼いているけど……うーん、巨獣フンババのところか邪龍ファフニールと戯れている、とか?」

 ザガムはペット感覚で遊びに行くが二頭とも超凶悪な存在で、修行するつもりならそこではないかとユースリアが言うと、ヴァルカンが椅子から立ち上がり面白く無さそうに口を開く。

 「いいじゃねえかあんな奴のことなんざ。あんまり帰って来なかったら冥王の椅子は誰か別の奴が座ればいいしな」
 「どこへ行くか告げずに出て行ったんだ、俺もそう思う。野心のある魔族が居ればそいつに任せてもいいだろう」
 「あ、ちょっと! もう……」
 
 ヴァルカンとロックワイルドが会議室から出るのを引き留めようとするが構わず出て行くのを見てユースリアは頬を膨らませる。
 そこでメモリーも席を立ち、嫌らしい笑いを浮かべながら片手を上げて歩き出す。

 「ま、私達はそれぞれ領地運営があるから探しに行く手間は惜しいし仕方ないわよ。探したところで帰ってくるとは言わないだろうし、お見合いが嫌ってのは分かるわー」
 「あんたも?」
 「神木がうるさくてね、それじゃ帰るわ」
 「またね。……ザガム、一体どこに行ったのかしら……」

 ザガムが人間の町へ行ったことなど露ほども知らない彼らが気づくのはまだ先の話――
 
 ◆ ◇ ◆

 「くく……ザガムは人間の国へ行ったようだね。やはり狙いはアレかな? 連れ戻されてはかなわないからここは黙秘といこう。いずれ気づく者がでてくるだろうけど、ね」

 デートと言いつつ私室でグラスを傾けながら窓の外に見える青白い月を見ながら大魔王メギストスはひとり呟く。

 「……強くなれザガム。お前にはそれだけの素質がある」
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