最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第二章:勇者

その34:金持ちになる冥王と勇者

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 「これは間違いじゃないのか?」

 俺の前に置かれた札、ざっと見て百万ルピは越えているだろう金を前にスパイクへ問うと、

 「いや、正当な報酬だよ。ザガート達にも最初のゴブリン討伐依頼から色をつけている。ゴブリンロードという強敵と戦った謝罪分も兼ねて」

 と返って来た。
 ザガート達にも五十万と言いながら手渡し、彼らもぎょっとした顔で受け取っているので相当破格な報酬に違いない。

 「いや、僕達はやられかけたんで流石にこの大金は受け取れないですよ……」
 「命あって、というところだ。死んでいたら手に出来なかったし、それくらい危険だったはずだ。危険の代償としては少ないが受け取っておいてくれ」
 「しかしザガムが……」

 ザガートはまだ困惑しているが、俺も札束を手にしながら告げてやる。

 「素直に受け取っておけ。生き残れた運が金にもなった、とでも思えばいいんだ。お前達が見つけていなければ被害が広がっていたかもしれないしな。ファムの代わりに行ったなら、弟子を助けてくれたお礼みたいなもんだ」
 「そうですよ! ありがとうございます!」
 「はは……なら、これはありがたくいただきますよ」
 
 ザガートはファムを見て苦笑しながら金を受け取り鞄へしまう。その間に確認すると、俺の報酬は百七十万ルピあった。

 「……これでしばらく稼がなくてもいいが、依頼は続けるぞ」
 「はい! ザガムさんが持っていてくださいね」
 「持ち逃げとか……しないか、この男は」

 マイラが意地悪な笑みを浮かべながら俺の肩に腕を置いてそんなことを言う。変な信頼を得たような気がする。

 「しかし、ゴブリンロードの件は陛下に報告しないといけないか。ザガムの仇である大魔王ではないが、魔族が暗躍している可能性もあるしな」
 「……」

 俺達魔族も一枚岩ではなく、いわゆる『はぐれ』と呼ばれる魔族も居て、正直な話、魔族領を出ていくメリットは五分。
 それなりに力のある者なら人間を食料にした方が良い場合もあるが、返り討ちに遭って死ぬことも考えられるから五分というわけだ。

 ヴァンパイア種などは俺と同じで見た目が人間に近いから溶け込み、スパイクの言うような暗躍はできるだろう。
 ……人間の血は美味いし美人が多いからとあいつらはよく出ていくが、まあここに居る女性陣を見る限り分からないでもない。
  
 「どうしました?」
 「……なんでもない」

 このひ弱な勇者など格好の餌食だろうな、などと考えながら金を懐へ入れて立ち上がり、部屋を出るため歩き出す。

 「国王には会う必要がないのでこれで失礼する。また明日顔を出すよ」
 「承知した。ゆっくり休んでくれ」
 「行くぞファム」
 「はーい! それじゃ皆さんありがとうございました! またギルドで!」
 「またね」
 「ザガム、今度手合わせをお願いしたい」
 「気が向いたらな」

 俺とファムはみなに見送られ部屋を後にする。
 幸い二階のあまり目立つ場所ではなかったため、階段を下りてすぐにある出口を抜けさっさとギルドを出るとファムが背伸びをしながら俺の前に立って振り返った。

 「それじゃご飯にしましょう! 今日は豪勢にいきたいですね」
 「そうしよう。ハンバーグステーキはどこかに無いものか」
 「はんばーぐ? なんですかそれ」
 「別の町でな――」

 俺達は陽が沈む町の通りを適当な話をしながら歩いていく。ギルドマスターとやらに話を通せたのはこの町で活動するにあたり助かる。
 大金も手に入れ、これで後はファムを鍛えるだけの生活をするかとレストランに向かった。
 

 ◆ ◇ ◆

 「……行ったか?」

 ザガム達が出て行ったあと、窓の外を見ていたマイラにスパイクが問うと、椅子に戻りながら頷く。

 「ええ、大丈夫です。もう通りの向こうへ消えました」
 「ふう……それにしてもとんでもない奴だな、陛下に直談判だと?」
 「そう言っていましたね。詳しくは分かりませんが、そう語っていました。大魔王と戦ったのが本当かわかりませんけど、ゴブリンロードを倒せるほどの力があるのは確かですし……」
 「よく見ればイケメンだけど、不愛想なのはマイナスよね」
 「それは今関係ないでしょ!? 目の前で見てた私が言うけど、ザガートより数段どころか数十段上だと思うわ」
 「しかし、ザガムと言う名、どこかで聞いたことがあるんだが、知らないか?」
 「うーん……」

 ギルドマスターの部屋で残されたスパイクやザガートのパーティは、出て行ったザガムについて話し合いを続けていた。
 結局、大魔王への復讐を誓う凄腕の冒険者ということでしばらく静観するということで解散。

 そして――

 「夜分に申し訳ない。ギルドマスターのスパイクだ、陛下に緊急で謁見を申し入れたい」

 スパイクは報告の義務があるため、謁見を申し入れた。
 ちょうど夕餉の時間ということで、晩餐と一緒に話を聞こうと提案され、相変わらず気楽なお方だと複雑な感情で招かれたスパイクは色々な意味で困惑することになる。

 「久しぶりだなスパイクよ、ゆっくりしていくといい」
 「は、恐縮にございます。ああ、申し訳ないでは一杯だけ……」

 酒を注がれたグラスを渡され軽く口につけるのを見て満足した国王は、メインメニューである鳥の香草焼きを一切れ口に運ぶと、フォークをスパイクに向けながら質問を投げかける。

 「して、今日はどうしたのだ? なにか問題でもあったか」
 「はい、一つは陛下もご存じかと思いますが、ザガムという男のことです」
 
 そういった瞬間、国王アレハンドロの動きが石膏像のように固まり、しばらく動かなくなる。やがて口を開くと、
 
 「あー、あいつね、うん知っておるよ。それがどうした?」
 「彼はファムについて陛下に物申しに来たと伺っておりますが、どうでしたか?」
 「……あいつがなにかしでかしたか?」
 「は、いえ、もう一つの話であるゴブリンロードが現れた件で、彼がひとりで倒したと報告がありまして……」

 妙な雰囲気を感じ取り、恐る恐る返答をすると、アレハンドロは酒をくいっと一気にあおって話し出す。

 「まあ、奴なら可能じゃろうな。……今から言うことは他言無用だが約束できるか?」
 「当然。命は惜しいですからな」
 「うむ。……奴は確かにファムを連れてこの城へ来た。そして城の兵士、さらに騎士団長のエイターすら倒して私に説教を垂れおったぞ」
 「は?」

 スパイクは言葉の意味が解らず、間の抜けた声を上げた後、少し間を置いてから、何故か嬉しそうに笑うアレハンドロに尋ねた。

 「兵士を倒した? エイター様が負けたんですか……?」
 「信じられんのも無理はないが私がこの目で確かに見た。一撃で沈むエイター、完全に戦闘不能になった兵士たちの山をな。ゴブリンロードくらい倒せると思うぞ」
 「……マジか」

 騎士団長のエイターは『一人』でAランク相当の実力を持つ強者。それに城の兵士も差はあれど練度は高く、最低でもCランク以上はある者ばかり。
 それを数百人倒したと聞けば嘘だろうと思ってしまう。だが、アレハンドロの口ぶりは間違いなく真実を語っているようだ。

 「エイターを呼ぶか? あやつに諭されて今日から私も剣の稽古を始めたのだ。やはり王といえど守られてばかりではいられないと教えてくれたわ。で、話の本筋はゴブリンロードのことか?」
 「あ、はい」

 スパイクは経緯を話し、アレハンドロも神妙な顔で周囲の状況に注意するようにし、場合によっては兵士も出すと回答をもらう。
 以前なら「任せる」とだけ言ってまともに取り合わなかった国王と今後のやり取りをしていることに困惑しながら、味の分からない食事を終えて帰路につく。

 「少し見ない間にお変わりになられたな……本来あるべき姿と言えばそうなのだが、ザガム一人でこうまで――はうあ!?」
 「わんわん!」

 と、帰り道、ぶつぶつと有り得ないものを見たスパイクが急に変な声を上げて野良犬に吠えられる。
 しかし、そんなことはお構いなしに青い顔で口元に手を当てて冷や汗をかく。

 「ザガム……そういえば魔王軍にそんな名前をした魔族が居たような気がするぞ……! こうしちゃいられない――」
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