最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
49 / 155
第三章:堕落した聖女

その47:疑惑の村

しおりを挟む

 あれから三日。
 すぐ収束するかに見えた村のゴースト討伐は意外にも難航していた。

 「おい、しっかりしろ! ……くそ、精神をやられちまったか……」
 「大丈夫です、休めばすぐに症状は緩和します! 誰か交代を!」

 「なんか強力になってねえか……? 僧侶さん達も頑張っちゃいるけど、数が減らねえ」
 「これはちっとやばいかもな……」
 「……」

 村を歩いているとこう言った会話が聞こえてくるのが当たり前になり、少しずつ負傷者も増えてきた。ゴーストだけでなく魔物も相手にしないといけないため場合によっては厳しい戦いを強いられるからだ。
 
 「私達も参戦した方がいいですかね……」
 「気に病むな。これは仕事で、覚悟の上で来ている連中のはずだ。指示があるまで俺達は俺達の仕事をすべきだ」
 「はい……」

 ファムは負傷者を見ながら泣きそうな顔で力なく返事をするが、ここは師として無茶はさせられない。
 
 「……」
 「……ひっ」
 「? どうしたんですか、脅かしたらダメですよ」
 「いや、なんでもない」

 村人とすれ違う時、俺は顔をしっかり確認する。

 ……今ので概ね村の全貌が見えてきた。が、まだ確証は無い。
 それでもそろそろスパイクに告げる必要がありそうだなと考えていると、アムレートがこちらを見ていることに気づく。いや正確には――

 「……」
 「あ、アムレートさん! あれ、行っちゃった」
 
 ファムが声をかけるも無言で立ち去っていくアムレート。その背中を俺も無言で見送っていると村の入り口が騒然とした出したので俺達も向かうと、

 「どうしたザガート!?」
 「僧侶さん達が急に苦しみだして、退治どころじゃなくなっちまったんだ。そこで魔物と挟み撃ち……なんとか逃げてきたけど、これは相当キツイよ」
 「っ……はあ……、これ以上はジリ貧よ、グラートのパーティも魔法使いのイセが負傷したし、私も魔力の消耗がきついわ。レッドアイも出て来てたし、ゴーストの数が多かった気もする」
 「Bランクパーティがこれで三つ行動不能か、まさかここまでとは……」

 スパイクが項垂れていると、村長が近づいて話しかける。

 「これだけ雁首を揃えてもダメなら、無理なのではないか? 周辺に来るゴーストだけ追い払えば良かろう」
 「しかし、これがいつ他の地域に牙を剝くか分かりません。……しかし、このままでは打開できないのも確か。今日は村に駐留して明日、負傷者は町へ戻すことにします」
 「ふん、冒険者も質が落ちたかの」
 「村長、失礼ですよ」
 「だけどダリーニャ婆さん、この体たらくじゃ仕方ないだろ。ま、飯は用意してやるけど」
 「申し訳ない、陛下に恩赦を進言させてもらうよ。みんな、今日はゆっくり休んでくれ、僧侶や神父さん達は交代で結界が破られないか警戒を」
 
 悪態をつく村人達に頭を下げるスパイク。
 すぐに立ち直り冒険者メンバーへ声をかけて指示を出していく様はギルドマスターといったところか。
 俺はスパイクに声をかけるため近づいていくと、俺達が世話になっている婆さんが困った顔で頭をさげてなにやら話をしていた。

 「ごめんなさいね、採集にも行けないからみんな鬱憤が溜まっているのよ。皆さんのおかげで安心できているんだけど……」
 「あ、いえ、不甲斐ないのはその通りですので……」
 「今夜も元気を出してもらうため美味しいものを用意するわね。みんな休んでいるから多く作らないと」

 柔和な笑顔でそう言う婆さんに、ファムが肩に手を置いて笑いかけた。三日という短い期間だが村を思い出すのか随分ファムが懐いている。

 「おばあちゃん、手伝おうか?」
 「ああ、ファムちゃんかい。ううん、これは私達の仕事だから……」
 「そう? いつでも言ってね!」
 「もちろんだよ、ご飯の時は家においで」
 「うん!」
 「ザガムもね」
 「ああ」

 俺の腰を軽く叩きながらゆっくりと戻っていく婆さんの姿が見えなくなると、スパイクがこの場を離れようとする。

 「スパイク、少しいいか?」
 「どうしたザガム? すまんが、ちょっと負傷者の確認をして明日町へ戻す算段をつけたい。飯時に話してくれるか?」
 「……仕方ないな」
 
 まあ、明日帰る際に全員引き上げるべきだと言うだけだから問題ないだろう。
 
 どうして全員撤収なのか? それは数人の村人を三日見ていた結果、村人と同じ容姿をしたゴーストが居たからだ。
 その数人が村人のフリをしているのか、死んだことに気づいていないのかは分からない点で確証は無いがこの村にはなにかあるのは間違いない。

 「おばあちゃんの料理おいしいから好きです! 名残惜しいですけど、たまに遊びに来ましょうね! 娘さんが亡くなって寂しいって言ってましたし」
 「そうだな」

 ――そして夜が更け、食事が始まる……はずだったのだが――

 「さあさ、ファムちゃんお食べ」
 「いただきまーす!! ほらザガムさんも」
 「……やけに静かだな」
 「え?」

 ファムが根野菜のスープを口にしながら俺の方を向いた瞬間、家の玄関で鈍い音がした。

 「なんだ?」

 俺が扉を開けると、そこにはザガートが脂汗をかきながら蹲っていた。

 「ザガートか、どうした? 顔色が悪いぞ」
 「ザ、ザガム、お、お前は平気か……? なんだかわからないけど、冒険者達が全員苦しみだして……マイラやニコラは意識も……うぐ……」
 「ザガートさん、しっかりしてください!」

 ファムがザガートを揺するがそのまま気を失ってしまった。
 
 「行くぞファム、先に動かれたようだ」
 「あ、はい! おばあちゃん隠れててくださ――」
 「……!」
 
 ファムが振り返った瞬間、いつの間にか背後に迫っていた闇がしみ込むようにファムに絡みついたかと思うと、そのまま姿が飲み込まれて消えた。
 
 「あ、あわわわ、な、なんだいこれは!? ファ、ファムちゃんは!?」
 「チッ、こいつを頼む」
 「あ、ああ……」

 狙いはファムか? しかし、ここにファムが来ることは予想できないはず……となると身内に謀反者が居るということになるが――

 「うぐ……」
 「うがああああ……」
 「あ、頭が割れる……!」

 ――見た限り冒険者は全員倒れていた。

 「違うか。いや、一人姿が見えない……」
 「ザガム! あんたが犯人だったのね!」
 「無事だったのか、ルーンベル」
 
 俺の前に走って来たのは激昂するルーンベルだった。
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...