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第四章:魔族領からの刺客
その59:空気を読む冥王
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「……ん。ここは……私……?」
「目が覚めたか」
「あ、ザガム! そうださっきの子! 姉ってどういうこと!?」
「それについてはリビングに行く間に説明しよう――」
ユースリアを介抱するのは俺だけでいいと遠ざけていたのでここに二人はおらず、代わりにイザールの相手をさせている。
イザールには俺が冥王であることを口にするなと含めてあるので大丈夫だろう。
「――なるほどね……大魔王様討伐のために勇者を。いい考えじゃない?」
「そうだろう」
「……なんていう訳ないでしょ!? なんでそうまでして倒そうとするわけ?」
「魔族発展のためだ」
「別に寿命は長いわけだし、メギストス様が退いてからでも問題ないじゃない」
「あいつはしばらく君臨するだろう、手合わせをしていないお前達には分からないだろうが、老衰など考えにくい」
即答する俺に訝し気な目を向けてくるが、すぐにため息を吐いて続ける。
「分かったわ。とりあえず様子見ってことで、あんたの姉としてふるまってあげる。だけど、女の子が苦手なあんたが二人と暮らしているなんてお姉ちゃんびっくりなんだけど?」
「……よく分からんが、お前を吹き飛ばしたファムと一緒に居ても動悸が上がったりしない。ちなみにルーンベルの方はダメだ、なるべく近づいて欲しくない」
「あー」
とりあえず話を合わせてくれるということで合意を得た俺はファムたちが待つリビングへと入っていく。
「ぶぇっくしょい!?」
「うわあ!? ちょっとルーンベルさん汚いですよ!?」
「いや、なんか急にくしゃみが……もしかして噂されているかも? まあ、私ってほら目立つから」
「美人なんですけどねえ。でも聖女というか性女だから……」
「ファムちゃん、もしかして私のこと嫌い?」
「ほっほっほ、お二人とも可愛らしいですぞ。ザガム様もようやく腰を落ち着ける気に……うう」
「任せてくださいイザールさん! 私、立派なお嫁さんになってみせます! 後、このお茶美味しいです!」
「香りがいいわよね」
リビングではファムとルーンベル、それとイザールが仲良くお茶をしていた。この匂いは魔族領で採れるマンドラゴラの葉を乾燥して刻んだ茶だな。
「戻ったぞ」
「あ、ザガムさんとお姉さん!」
リビングへ入るとファムが椅子から立ち上がり、ユースリアの前に来ると深々と頭を下げてから謝罪を口にする。
「ユースリアさんがザガムさんのお姉さんだって聞いて……ごめんなさい!」
「ふふ、いいのよ。私もちょっと気が立っていたし、話を聞くべきだったわ。ファムさんね? 改めまして、ザガムの『姉』ユースリアよ」
何故か姉を強調してにこやかに笑い、一瞬俺を見るユースリア。その調子だと頷き返すと、
「……」
何故か睨まれた。
「ささ、イザールさんがお茶を作ってくれましたしお話をしましょう!」
「そうね」
「はいはーい! 私もお嫁さん候補のルーンベルと言います!」
「ユースリアよ。ああ、あなたが近づいて欲しくないという子ね」
「え!?」
優しい笑顔でルーンベルと握手をしたユースリアがイザールの横に座り、俺も正面に座る。両脇にファムとルーンベルが座る。
「さて、それじゃここに来た理由を話してもらおうか」
「どういうこと? ねえ」
「とりあえず、家を飛び出したあなたを連れ戻しに来たのよ。このままだとあんた、居場所がなくなるわよ?」
「どういうことだ?」
「それはわたくしめが……。だいま……いえ、国王から通達があったのです、このまま家を空けるなら取りつぶしを行うと」
「あの、私に近づいて欲しくないって、どういうこと?」
なるほど、メギストスが会議などに参加しない俺に領地を明け渡すよう通達があったようだな。
「しかしまだ一か月も経っていないのに早すぎないか?」
「まあ、今は警告程度よ。この前の会議であなたが居ないのが知られちゃったから」
「ふむ……だとしても家には居ないのだから、通達するのもおかしな話だが……」
「うう……」
俺は確かに家に居ない。
それ故にイザールにお取り潰しを伝えても何もできないのは分かっているはず。何故なら俺がどこに居るか不明だからだ。
考えられる可能性としては何度も戦いを挑まれ、目障りになった俺を今の内に排除して別の【王】を立てるためだろう。
実際、手紙を出すまでイザール達ですら知らないことと考えればそれが一番分かりやすい理由だろう。
「ほえー……ザガムさんって領主様、だったんですね……それで大魔王にご両親を殺された仇を取りたい、と……」
「……そうだ」
そうだった、そういう話をしていた。
ユースリアとイザールが俺に『なに言ってるんだ』という目を向けてきたので、俺は小さく頷いておく。
「なら、お姉さんが居れば大丈夫なんじゃないですか?」
「ええっと……私は別の領地に居るから……」
「うむ、ユースリアの夫は他だからな」
「「……!?」」
「あ、ご結婚されていたんですね」
「ああ、それも大魔王の手によってな」
うむ、これは良い言い訳だ。
ユースリアは別の領に嫁いでいることにすれば、お取り潰しに対して、姉がいる問題もダメということが解決する。
すると、ユースリアがガタンと椅子を倒しながら立ち上がり、俺の腕を引っ張る。
「……ザガム」
「なんだ?」
「ちょーっと、いいかしら……?」
「まだ話が――」
「いいから来なさい!」
「?」
何故か怒っているユースリアに引きずられて隣の部屋へ連れ込まれ、扉が閉じた瞬間、
「この!」
「痛いじゃないか」
「私の心はもっと痛いわよ!? なんで私は結婚していて未亡人になってんのよ!? お付き合いした人も居ないわ!」
「都合がいいからだ」
「あんたの都合だけじゃない!? ……はあ、昔からそうだけど基本的に優しいのに、そういう自己都合がいい時だけ人の気持ちを考えられないの変わらないわよね。大魔王様でもそんなことはないし、イザールもそうよ。その二人に育てられたのに、タチ悪い嘘つくわよね」
ユースリアが鼻息を荒くしながら俺の頭を掴んでギリギリと力を入れてくる。
しかし、魔族的にはそういうものだと思うのだが?
「そう言われても、使えるものは使うものだろう? メギストスだってそう言っていた」
「そうじゃなくて……ああ、もういいわ。とりあえず、そういうことにしておいてあげるわ。……ファムさんって純真そうだし……一緒に居た方が……」
なにやらぶつぶつ言っているユースリアが正座した俺を掴んだまま移動し、ファムたちの部屋へ戻る。
「あ、おかえりなさい。……なんでザガムさんは吊られているんですか?」
「ユースリアに聞いてくれ」
「ちょっとお話をね? とりあえず事情は分かったわ。領地問題があるから常駐はできないけど、たまに顔を見に来るわね」
「おい――」
「異論は認めません。大丈夫、あんた達の邪魔はしないから」
「は、はい、よろしくお願いします!」
「お願いしますー! ねえ、さっきの話だけど――」
「それで、勇者は見つかったの?」
ルーンベルががっくりと床に手をついて落ち込んでいるのをよそに、そう言えばと俺はファムのところへ行き、ユースリアの前に出して言う。
「こいつが勇者だ」
「あ、えへへ……」
「なんと……!?」
はにかみながら頭をかくファムと、俺を交互に見るユースリアとイザール。
しばらく目を丸くした後に驚愕の声を上げた。
「「勇者が嫁候補ーー!?」」
「目が覚めたか」
「あ、ザガム! そうださっきの子! 姉ってどういうこと!?」
「それについてはリビングに行く間に説明しよう――」
ユースリアを介抱するのは俺だけでいいと遠ざけていたのでここに二人はおらず、代わりにイザールの相手をさせている。
イザールには俺が冥王であることを口にするなと含めてあるので大丈夫だろう。
「――なるほどね……大魔王様討伐のために勇者を。いい考えじゃない?」
「そうだろう」
「……なんていう訳ないでしょ!? なんでそうまでして倒そうとするわけ?」
「魔族発展のためだ」
「別に寿命は長いわけだし、メギストス様が退いてからでも問題ないじゃない」
「あいつはしばらく君臨するだろう、手合わせをしていないお前達には分からないだろうが、老衰など考えにくい」
即答する俺に訝し気な目を向けてくるが、すぐにため息を吐いて続ける。
「分かったわ。とりあえず様子見ってことで、あんたの姉としてふるまってあげる。だけど、女の子が苦手なあんたが二人と暮らしているなんてお姉ちゃんびっくりなんだけど?」
「……よく分からんが、お前を吹き飛ばしたファムと一緒に居ても動悸が上がったりしない。ちなみにルーンベルの方はダメだ、なるべく近づいて欲しくない」
「あー」
とりあえず話を合わせてくれるということで合意を得た俺はファムたちが待つリビングへと入っていく。
「ぶぇっくしょい!?」
「うわあ!? ちょっとルーンベルさん汚いですよ!?」
「いや、なんか急にくしゃみが……もしかして噂されているかも? まあ、私ってほら目立つから」
「美人なんですけどねえ。でも聖女というか性女だから……」
「ファムちゃん、もしかして私のこと嫌い?」
「ほっほっほ、お二人とも可愛らしいですぞ。ザガム様もようやく腰を落ち着ける気に……うう」
「任せてくださいイザールさん! 私、立派なお嫁さんになってみせます! 後、このお茶美味しいです!」
「香りがいいわよね」
リビングではファムとルーンベル、それとイザールが仲良くお茶をしていた。この匂いは魔族領で採れるマンドラゴラの葉を乾燥して刻んだ茶だな。
「戻ったぞ」
「あ、ザガムさんとお姉さん!」
リビングへ入るとファムが椅子から立ち上がり、ユースリアの前に来ると深々と頭を下げてから謝罪を口にする。
「ユースリアさんがザガムさんのお姉さんだって聞いて……ごめんなさい!」
「ふふ、いいのよ。私もちょっと気が立っていたし、話を聞くべきだったわ。ファムさんね? 改めまして、ザガムの『姉』ユースリアよ」
何故か姉を強調してにこやかに笑い、一瞬俺を見るユースリア。その調子だと頷き返すと、
「……」
何故か睨まれた。
「ささ、イザールさんがお茶を作ってくれましたしお話をしましょう!」
「そうね」
「はいはーい! 私もお嫁さん候補のルーンベルと言います!」
「ユースリアよ。ああ、あなたが近づいて欲しくないという子ね」
「え!?」
優しい笑顔でルーンベルと握手をしたユースリアがイザールの横に座り、俺も正面に座る。両脇にファムとルーンベルが座る。
「さて、それじゃここに来た理由を話してもらおうか」
「どういうこと? ねえ」
「とりあえず、家を飛び出したあなたを連れ戻しに来たのよ。このままだとあんた、居場所がなくなるわよ?」
「どういうことだ?」
「それはわたくしめが……。だいま……いえ、国王から通達があったのです、このまま家を空けるなら取りつぶしを行うと」
「あの、私に近づいて欲しくないって、どういうこと?」
なるほど、メギストスが会議などに参加しない俺に領地を明け渡すよう通達があったようだな。
「しかしまだ一か月も経っていないのに早すぎないか?」
「まあ、今は警告程度よ。この前の会議であなたが居ないのが知られちゃったから」
「ふむ……だとしても家には居ないのだから、通達するのもおかしな話だが……」
「うう……」
俺は確かに家に居ない。
それ故にイザールにお取り潰しを伝えても何もできないのは分かっているはず。何故なら俺がどこに居るか不明だからだ。
考えられる可能性としては何度も戦いを挑まれ、目障りになった俺を今の内に排除して別の【王】を立てるためだろう。
実際、手紙を出すまでイザール達ですら知らないことと考えればそれが一番分かりやすい理由だろう。
「ほえー……ザガムさんって領主様、だったんですね……それで大魔王にご両親を殺された仇を取りたい、と……」
「……そうだ」
そうだった、そういう話をしていた。
ユースリアとイザールが俺に『なに言ってるんだ』という目を向けてきたので、俺は小さく頷いておく。
「なら、お姉さんが居れば大丈夫なんじゃないですか?」
「ええっと……私は別の領地に居るから……」
「うむ、ユースリアの夫は他だからな」
「「……!?」」
「あ、ご結婚されていたんですね」
「ああ、それも大魔王の手によってな」
うむ、これは良い言い訳だ。
ユースリアは別の領に嫁いでいることにすれば、お取り潰しに対して、姉がいる問題もダメということが解決する。
すると、ユースリアがガタンと椅子を倒しながら立ち上がり、俺の腕を引っ張る。
「……ザガム」
「なんだ?」
「ちょーっと、いいかしら……?」
「まだ話が――」
「いいから来なさい!」
「?」
何故か怒っているユースリアに引きずられて隣の部屋へ連れ込まれ、扉が閉じた瞬間、
「この!」
「痛いじゃないか」
「私の心はもっと痛いわよ!? なんで私は結婚していて未亡人になってんのよ!? お付き合いした人も居ないわ!」
「都合がいいからだ」
「あんたの都合だけじゃない!? ……はあ、昔からそうだけど基本的に優しいのに、そういう自己都合がいい時だけ人の気持ちを考えられないの変わらないわよね。大魔王様でもそんなことはないし、イザールもそうよ。その二人に育てられたのに、タチ悪い嘘つくわよね」
ユースリアが鼻息を荒くしながら俺の頭を掴んでギリギリと力を入れてくる。
しかし、魔族的にはそういうものだと思うのだが?
「そう言われても、使えるものは使うものだろう? メギストスだってそう言っていた」
「そうじゃなくて……ああ、もういいわ。とりあえず、そういうことにしておいてあげるわ。……ファムさんって純真そうだし……一緒に居た方が……」
なにやらぶつぶつ言っているユースリアが正座した俺を掴んだまま移動し、ファムたちの部屋へ戻る。
「あ、おかえりなさい。……なんでザガムさんは吊られているんですか?」
「ユースリアに聞いてくれ」
「ちょっとお話をね? とりあえず事情は分かったわ。領地問題があるから常駐はできないけど、たまに顔を見に来るわね」
「おい――」
「異論は認めません。大丈夫、あんた達の邪魔はしないから」
「は、はい、よろしくお願いします!」
「お願いしますー! ねえ、さっきの話だけど――」
「それで、勇者は見つかったの?」
ルーンベルががっくりと床に手をついて落ち込んでいるのをよそに、そう言えばと俺はファムのところへ行き、ユースリアの前に出して言う。
「こいつが勇者だ」
「あ、えへへ……」
「なんと……!?」
はにかみながら頭をかくファムと、俺を交互に見るユースリアとイザール。
しばらく目を丸くした後に驚愕の声を上げた。
「「勇者が嫁候補ーー!?」」
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